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第6章 プロッティング機能付レーダー(ARPA)
 自動プロッティング機能付レーダー又は自動衝突予防援助装置は普通ARPAと略称されているが、これはAutomatic Radar Plotting Aidから作られた略語である。一般のレーダーによって船舶相互間の衝突を防止するためには、リフレクションプロッタなどを用いた手動のプロッティングによらなければならない。ARPAは、この代わりにレーダーからの情報を電子回路とマイクロプロセッサで処理をして相手船の動きを常時自動的に監視をし、衝突の危険の度合いを計算して、それらを分かりやすい形で表示するとともに、危険な状態になったらそれを警報し、かつ、その船を避ける操船方法を試行することのできる装置である。
 
 航行中の船舶や障害物との衝突を防ぐためには、予測と回避の二面を考えなければならない。そのためにはレーダーの情報を解析して種々の必要なデータを得なければならないが、レーダーそのものは目標の相対的な位置(方位と距離)を測定する機能しか持っていない。
 
図6・1 プロッティングと相対速度
 
 すなわち、自船に搭載されているレーダーによる目標の測定は、あくまでも目標の相対位置がどのように変化しているかを測定することであり、これをレーダーの画面上でプロットしても、(図6・1のt0〜t3)それは目標の相対運動が分かるだけであって、真運動を現してはいない。この真運動の速度は、相手船の相対速度と自船の速度とのベクトルの和として得られる。これらの、目標の相対速度と真速度は、衝突の予防のためには非常に重要な要素である。
 
 6・1で述べたように衝突の予防のためには、レーダーの情報を解析してプロットしていく必要があるが、このレーダーの映像の表示方法には、次のような種々の方式がある。
 
 運動の表示方式には相対運動を表示するものと、真運動を表示するものとがある。
(1)相対運動=RM(Relative Motion)表示
 自船の位置(スイープの起点)は固定され、固定物標の映像は、自船の移動に伴って自船の針路と反対方向に移動する。したがって、相対運動の表示では、図6・2に示すように自船の動きに対して映像が相対的に移動をする。
 
図6・2 相対運動表示:RM表示
 
(2)真運動=TM(True Motion)表示
 真運動の表示にすると、スコープ上の自船の位置(スイープの起点)は自船の速力と針路に従ってスコープ上を移動する。このため、陸地などの固定物標はスコープ上に固定され、図6・3のように動いている物標のみがスコープ上を実際の動き方に従って移動することになる。一般的なTM表示の動作は次のようなものである。
 
図6・3 真運動表示:TM表示
 
 自船の動きは“TM”に切り替えられた時点で、船首船がブラウン管の中心を通って針路の反対側に約2/3の半径の位置にセットされ、その点から自船の速力と針路に従って移動を開始する。その後、自船の位置が進行方向の半径の2/3の点に達したら自動的にリセットされ、再び船首輝線(SHM)がブラウン管の中心を通り、元の針路と反対方向の約2/3の点にセットされる。この“TM”の動作中に自船の位置をリセットしたい場合(自船の前方を表示しておきたいようなとき)には、“リセットボタン”を押すことによって、手動で“TM”の開始点へのリセットができるようになっている。
 
 方位表示のモードには、ノースアップ、ヘッドアップ、コースアップ、の三つのモードがある。しかし、ARPAでは、ヘッドアップかコースアップのいずれかのモードと、ノースアップモードを持てばよいことになっている。
(1)ノースアップ(North Up)モード
 ノースアップモードでは、図6・4のように画面の真上(固定ダイヤルの0度)が真北であり、真方位表示ともいわれている。この場合の船首輝線は自船の針路方位に表示される。この方式は、沿岸を航行するときなどには海図との対比がやりやすく、物標の真方位(True Bearing)が即座に読み取れる等の利点があり、自船の測位等に適した方位表示モードである。
 
図6・4 ノースアップモード
 
(2)ヘッドアップ(Head Up)モード
 ヘッドアップモードでは、図6・5のように常に画面の真上が自船の船首方向となり、真方位表示とは無関係になる。すなわち、船首輝線は自船の針路方位とは無関係に、常時、固定ダイヤルの0度に表示され、物標方位は自船の進行方向との相対方位(Relative Bearing)として読み取れる。したがって、特に測位が必要でない場合で、大洋の航行や他船の見張り等に適した方位表示モードである。
 
図6・5 ヘッドアップモード
 
(3)コースアップ(Course Up)モード
 コースアップモードに切り替えると、図6・6のようにまず船首輝線が画面の0度に表示され、そのあとでは、自船の針路が変化すると船首輝線が自船の針路の変化分だけ回転をする。このとき、映像の方位は自船が針路を変更しても回転しない固定されたままである。つまり、この表示方法はコースアップモードに切り替えた時点で画面の方位が固定されるため、ノースアップモードと同じように、自船の針路の変化による映像のにじみ等がないので、自船の針路が変化しているときでも物標の方位を正確に計測することができ、かつ、映像面と外界との対比も容易であるという利点がある。
 
図6・6 コースアップモード







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