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平成15年度 通信講習用 船舶電気装備技術講座(レーダー、機器保守整備編)

 事業名 船舶の電気装備に関する技術指導等
 団体名 日本船舶電装協会 注目度注目度5


4・8 自動電圧調整器
 自動電圧調整器(AVR、Automatic Voltage Regulater)は、船内電源が著しく変動しても常に一定の電圧を保ってレーダーを安定に働かせる。また、船内電源が直流の場合には、レーダーに必要なたくさんの種類の電圧を作りだすため、いったん発振回路で発振させ、それを整流して必要な各部の電圧を作る、いわゆるDC-DCコンバータを備えたAVRが用いられる。その構成を図4・50に示す。
 
図4・50 AVRの構成図
 
(1)フィルタはレーダー装置内で発生する種々の雑音が外部に漏れないようにするためのものである。
(2)定電圧回路は船内電源の電圧変動に対しては一定の電圧を保つためのもので、いろいろな回路があるが、一般にはスイッチング・レギュレータが多く用いられている。
(3)スイッチング・レギュレータは広範囲の電圧変動に対してもよく動作し、能率も比較的良い。
(4)発振回路は自励発振で、電源同期型のレーダーでは、この周波数をパルス繰り返し周波数に用いている。
 
 在来のレーダーのPPI表示は、掃引線が自船の位置を中心にしてCRTの外周に向かって動いている。すなわち、レーダーパルスの送信とともに電子ビームはCRT面上の自船位置からCRT面の輝度が大きくなるように電子ビームの電子量を制御する。レーダーのPPIの画面が1回分は、例えば、空中線の回転が毎分20回(1回転3秒)でパルスの繰り返し数が毎秒1,000回であれば、PPIの映像面は3,000本の放射状の掃引線で構成される。画面に表示される距離範囲は掃引線の掃引速度によって決まることになる。空中線の一回転に3〜5秒を要するので、その間は映像が残っている必要がある。そのため、従来型のレーダーのPPI表示方式では、残光性の蛍光面があるCRTを用いて、その残光によって映像を見るようにしている。しかし、このブラウン管では、電子ビームによって直接発光させるときの映像の明るさは、残光に比べるとはるかに明るいので、輝度が低い残像を一緒に見ることができない。直接発光させるときの発光色は、残光色とは異なるので発光色を色フィルターによって押さえて残光だけが見えるようにしている。
 この残像によるレーダーの映像はかなり暗いので、昼間はフードを掛けなければ見ることができない。一時期には高輝度の残光性を持つブラウン管も開発されてレーダー応用されたこともあったが、取扱いの問題と価格の点から普及するまでには至らなかった。
 映像をメモリに保存しておき表示を早い周期で更新することは、特殊なブラウン管を使用することなく明るく表示できる利点がある。
 ここまでの解説では基本を理解する目的から、従来方式のレーダーの方式を述べきたが、一般に市販されているテレビやパソコンのモニタはレーダーでも有効に利用できる。昼間でもフードをかけなくてよい明るいレーダー表示、カラー表示及び各種のメモリ機能の応用等の新機能の開発が進み、次項に述べるテレビのブラウン管を利用した表示器の方式に変遷した。
 
 コンピュータのモニタや家庭用のテレビと同様のブラウン管を表示器に使用するレーダーでは、反射信号をデジタル化して、その一つ一つを超LSI(LSIは大規模集積回路のこと)による記憶回路(メモリ)に記憶されている。10Mbps以上の速度で変換された信号は、高速で作動できる1次元配列上の1次メモリに記憶され、さらに画面全体を記憶する2次元配列の大容量2次メモリの該当アドレスのところに転送される。記憶させるメモリの位置(2次元配列のアドレス)はアンテナの方位角度と受信されるまでの遅れ時間から瞬時に求められ、反射信号のデータはその位置に記憶される。次にそのデータを高速で順次読み出して、テレビに使用されているものと同じCRTに表示させる処理を行なっている。このような処理を走査変換という。ラスタスキャン型レーダーの表示はテレビの映像と同じように、横方向の掃引線を上下に動かす形で毎秒60回程度も書き直しているので全面が同じ明るさで、昼間でもフードなしで見ることができる。このようなラスタスキャン型レーダーの映像は白黒テレビ用のCRTでも表示できるが、カラーテレビのCRTを使用すればカラー表示にもでき、物標からの反射エコーの強度によって表示色を変えたり、画面上のデータの表示色を変えることもできる。
 ラスタスキャン型レーダーは、一般に図4・51のブロック図のように構成されているが、空中線、送信機、受信機、ビデオ増幅器までの部分は在来のレーダーと同じである。ビデオは増幅器の出力はAD変換器に入れられる。AD(Analogue Digital)とはアナログ・デジタルの略で、アナログ信号をデジタル信号化する変換回路である。例えば、ある設定されたレベル以上の入力信号であれば1、それ以下の入力信号であれば0というようにする。この場合は1ビットの分解能となる。このデジタル化をするときに入力信号の強度を4段階に分け、強い方から11、10、01、00とするのが2ビットのデジタル化、さらに3ビットにすれば、111、110、101、100、011、001、000と8段階の強度の表現ができる。
 
図4・51 ラスタスキャン型レーダーのブロック図
 
 アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器の型式には積分方式と比較方式があるが、一般的な比較方式のA/D変換器の型式を表4・1に掲げる。
 
表4・1 比較方式のA/D変換器の形式
形式  特徴
帰還比較方式
逐次比較方式
追従比較方式
変換精度が高い、低価格、低・中速用
無帰還比較方式
縦続比較方式
並列比較方式
直並列比較方式
変換速度は非常に高速、高価格、
10MPS程度
100MPS程度
200MPS程度
(MPS: Mega-sample Persecond)
 
 レーダーの送信パルスは、近距離で0.07μs、遠距離では0.5μs程度である。そのためビデオ信号のデジタル変換は、送信パルスの幅に対応した速度で変換する必要があり、特に近距離の場合は高速で変換しないと映像がバサバサした短冊模様の映像になってしまう。最低でも10MPS以上の速度での変換が必要なので変換速度が高速な無帰還比較方式の中の並列比較方式が主に使用されている。レーダー信号の強度の変換は表示にあわせて、一般に8段階(3ビット)か16段階(4ビット)で行うものが多い。TRW社の8ビット並列比較方式の超高速A/D変換器の構造図を図4・52に示す。この変換器は8ビットなので255個の高速電圧比較回路(Ccmparator)を配列してある。この回路の動作の概要は、VTRとVRB間に接続された参照電圧を直列接続された抵抗で分圧し、VINにつながれた入力信号と255個の高速電圧比較回路のどれが境になったかをENCODERで比較し8ビットの変換出力を得るものである。LATCHは変換結果を一時的に記憶させるもので、変換指令信号(CONVERT)に同期して作動する。NMINV、NLINVはデジタル変換された2進数のコードを変更する場合のものである。
 
図4・52 並列のA/Dコンバータの構造図(TRW社)
 
 このような処理をした信号は一次メモリに送られるが、この一次メモリには、シフトレジスタと呼ばれるメモリの一種が使われる。シフトレジスタというのは図4・53に示すメモリが横一列に並んでいて、クロック信号というところにパルスが一つ入ると、nのところの内容がn-1のところにというように、右向きにその内容(1又は0)が一枠ずつ移動して、入力からnの枠に新しいデータが一つ入るとともに、1の内容は出力となって出ていくわけである。例えば、クロックパルスの周波数を10MHzとすると、クロックパルスの間隔は0.1μsなので、エコーは自船から15m間隔で、かつ、0と1の形で右から左へ並ぶことになる。2ビットのデジタル化をしたときには、このシフトレジスタを2個並列に使用して、1けた目と2けた目の0と1を別々に処理をする。こうして、1回のパルス送信後の受信エコーの強さは、2ビットのデジタル化の場合は図4・54に示すような形に整理をされる。ここで、S11、S12・・・S1n、S21、S22・・・S2n、はアドレスと呼ばれる。
 
図4・53 nビットのシフトレジスタ
 
図4・54 エコー信号のデジタル化
 
 二次メモリは、レーダーのPPIの映像面のデーターを一画面そっくり記録する2次元配列のメモリであり、その数はデジタル化を何ビットで行うかによって変わるが、1ビット分をCRTの一画面分について縦(Y)方向と横(X)方向に分けた番地(アドレス)を示すと図4・55のようになる。標準型テレビの走査線の数は上下に512本あるので、この二次メモリの番地は大略(260,000×一画素当たりのビット数)が必要となる。
 
図4・55 二次メモリの番地(アドレス)
 
 この二次メモリへの書き込み(記憶)は、図4・56(a)の一次メモリの内容を、レーダー空中線の走査角θが変化するにつれて同図(b)のように行い、空中線の一走査1回転が終わると全メモリの内容が新しいものとなる。このようなメモリの内容は、書き込みを行う一方で(0、0)から(X、0)へ、(0、1)から(X、1)へ、というように水平方向に順次読み出しが行われ、その結果がCRTに表示される。この場合、一画素当たり1ビットの記憶であればその結果は2色又は明暗といった表示しかできないが、2組のメモリを用いた2ビットであれば、エコーの強い順に11、10、01、00となり、これを色分けすれば赤、黄、緑、青(黒)の4色あるいはそれらの色の濃淡を含めた4階調、3ビットのときは8色又は8階調の表示をすることができる。
 
図4・56 一次と二次メモリのアドレス
 
 これらのメモリへのデータの書き込み、読み出し、あるいはCRT表示の制御は、空中線の走査とパルスの送信に同期した制御信号によって行われる。
 
(問1)航海用レーダーにおける、トリガ信号、送信パルス、固定距離マーカー、のタイミングチャートを図示せよ。
(問2)0.5(海里)間隔の固定距離マーカーを作るためには、何(μs)間隔のパルスが必要か、また、そのための発振周波数は約何(kHz)か。
(問3)航海用レーダーにおけるSTC回路及びFTC回路の役目と、その動作を説明せよ。







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