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6・2・1 レーダー(Radar)の原理
 レーダーの原理は, アンテナから発信されたレーダー電波(パルス)が物標に当たって帰ってきた電波を受信した時, そのアンテナの方向から物標の方位(θ)を知り, 送信パルスを発信してから反射パルスを受信するまでの時間から物標の距離(r)を知ることにある。
 レーダー(Radar)の語源は, Radio Detection and Rangingであるといわれ, 上記の原理をEcho Principleといっている。
 物標の方位を1度以内の精度で測定するには, 電波を細くしてアンテナから発射する必要があり, その細さの程度はビーム幅(6・3・4項参照)で表される。初期の船用レーダーではビーム幅が1度とか2度であったが, 最近のレーダーでは0.5度とか0.2度のものが用いられている。
 物標の距離を高い精度で測定するには, 非常に短い時間を測定する技術が必要で, 例えば10mの精度で測定するには, 電波の空気中の伝搬速度は3×108m/sとみなされるから, 0.033×10-6秒(0.033マイクロ秒)の精度で時間を測定する必要がある。
 以上の精度を実現するためには, 非常に短い波長の電波を使用しなければならず, マイクロ波(SHF; 3〜30GHz)又はミリ波(EHF; 30〜300GHz)という電波が利用される。
 船用レーダーの実用化は, このマイクロ波の発信と受信の技術開発並びにマイクロ秒という極めて短い時間の測定技術の開発が進んだことから始まったということができる。
 
 初期の船用レーダーでは, 反射物標の距離すなわち反射波が帰ってくるまでの時間を測定するには, Aスコープという表示方法が用いられた。Aスコープとは図6・1のような表示で, 縦軸に反射波の強さをとり横軸に時間をとった表し方であるが, 左端に発信パルスが表れ右に伸びる線上に反射パルスが表示される。また, その中間には可変の距離測定パルスあるいは固定の距離測定パルス(これらはそれぞれ可変距離目盛あるいは固定距離目盛と呼ばれる。)があって, 可変の距離測定パルスにあってはこれを反射パルスに重ねて目盛を読み, 固定の距離測定パルスにあっては反射パルスの位置を補間法によって読み取って測定する。一方, 物標の方位は, 反射パルスが表れたときのアンテナ方向を読み取って測定する。
 その後船用レーダーでは, 長残光性の螢光面を持ったブフウン管を利用して, 図6・2のように自船を中心とした平面図のように物標を表示するPPI(Plan Position Indicator)という表示方法がとられるようになった。この画面は, アンテナをモータで回転させこれに同期して中心から周辺に向かって電子線を走らせ(これをスイープという。), 反射波があったらその強さに応じて明るく光らせる方式で, 海岸線があればPPI画面に海図のような陸地を描き, 船があればその方向と距離に応じて輝点が表れるものである。長残光性の螢光面を持ったブラウン管を利用しているので, アンテナが数回転以上する間輝点として光っている。それでスイープが移っても映像が残り, 円形の平面図として表示されるのである。
 可変距離目盛は設定した距離を半径とした円となり, 固定距離目盛は一定の距離毎の同心円となる。物標の距離rと, 反射波が帰ってくる時間tとは, (6・1)式の関係がある。
 ただし, cは電波の空気中の伝搬速度で一般的に3×108m/sとして計算する。
 (最近の測定によれば近似的に2.998×108m/sであるといわれている。)
 
 
 自船からの距離が1海里である他船の反射波は, 何秒後に帰ってくるかを計算してみれば, (6・1)式のrに1852mを, cに3×108m/sを入れて,
 
 
 約12.35μsを得る。従って, 2海里の距離の他船からの反射波は24.7μs後に, 5海里の距離の他船からの反射波は61.75μs後に帰ってくることになる。また, 2海里ごとの固定距離目盛は24.7μsごとのパルス発生器で得られ, 5海里ごとの固定距離目盛は61.75μsごとのパルス発生器で得られることとなり, それぞれ約40.5KHz及び16.2KHzの周波数のパルス発生器である。







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