5・4・8 電力測定
電力の測定法には,電流・電圧計法,抵抗・電流計法,電流力計形法,サーミスタ/バレッタ法,カロリーメータ法等がある。ここでは電圧・電流計法と抵抗・電流計法について説明する。図5・11に負荷抵抗Rで消費する電力測定回路を示す。
図5・11 電圧・電流計による電力測定
(a)は負荷と並列に電圧計Vがある場合,(b)は負荷と直列に入れた電流計Aに電圧計を接続した場合である。電圧計の内部抵抗RVと電流計の内部抵抗RAが無視できないとき(a)と(b)では誤差が異なる。負荷抵抗Rで消費される電力Pは
(a)の接続では,P=EI-E2/RV (5・33)
(b)の接続では,P=EI-RAI2 (5・34)
となる。EとIは電圧計と電流計のそれぞれの指示値である。電圧計の内部抵抗RVが大きく,電流計の内部抵抗RAが小さい場合は(a),(b)ともに内部抵抗を無視できて
P≒EI (5・35)
と近似できるので,電圧計と電流計の指示値の積が電力を示す。
負荷抵抗Rが既知の場合にはオームの法則から
を(5・35)式に代入して
又は
から電流計又は電圧計と負荷抵抗Rの組合せで電力が測定できる。
(A)アナログオシログラフ
ブラウンが発明した陰極線管(ブラウン管)の蛍光面に測定信号波形を表示して,波形,周期,周波数等を観測する測定器で,パルス波やビデオ等正弦波でない信号の測定に適している。図5・12にオシログラフの構造を示す。
図5・12 オシログラフ
ブラウン管はテレビにも使用されている。電子銃から飛び出した電子ビームが水平と垂直偏向板の間を通過するとき電子ビームの軌道が曲げられ,更に進行して蛍光面に衝突して発光する。水平偏向板にのこぎり波を加えると電子ビームが水平方向(時間軸という。)に等速度で移動する。測定する電圧を垂直偏向板に加えると電圧に比例して電子ビームが垂直(上下方向)に動くので波形の観測ができる。(b)図のようにブラウン管蛍光面が表面となる。
テレビは水平と垂直偏向板にのこぎり波を加え,ビデオ信号で電子ビームを変調して蛍光面上の輝度を変化させてテレビ画面を表示する。
図5・13 オシログラフの回路系統図
図5・13に回路系統を示す。水平軸へ加えるのこぎり波の周期と垂直軸に加える信号波の周期が整数比のときだけ波形が静止して表示される。このため垂直軸から信号波を取出して時間軸発振器に入力し,周期信号を発生させ水平軸のこぎり波の周期を制御して信号波形を静止させる。また,外部から任意の信号を時間軸発振器に加えて外部信号で同期をとることもできる。同期をとることをトリガと呼ぶ。
水平軸端子から外部信号を水平軸用増幅器を通して水平偏向板に加えることから周波数測定等波形観測以外の応用が可能となる。
一般にはオシログラフといえばアナログ信号波形を表示する機器をいう。デジタルオシログラフはアナログ信号をデジタル変換して,メモリや演算処理をしてから再びアナログ信号に戻してブラウン管上に表示する測定器で,従来のオシログラフでは不可能な新しい機能を持っている。コンピュータと組合わせたオシログラフである。表5・6にアナログ式とデジタル式オシログラフの機能の相違を比較して示した。
表5・6 アナログとデジタルオシログラフ比較表
機能 |
方式の違い |
アナログ方式 |
デジタル方式 |
単発現象 観測 |
基本的に不可(蓄積管を使えば可能) |
可能 |
プリトリガ |
数10〔ns〕が限度 |
長時間可能 |
演算 |
+, −などの単純な演算のみ |
高度の演算処理が可能 |
自動判定 |
不可 |
可能 |
波形保存 |
不可 |
長時間可能 |
データ出力 |
不可 |
可能 プリンタ, GP-IB, RS-232Cなど |
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デジタルオシログラフの優れた機能は
1. 単発現象の観測が可能;1回しか表れない波形をアナログ式で観測するには波形の立ち上がり時間と同期して水平軸のこぎり波をスタートさせることができない。デジタル式では信号をメモリーできるので任意の時間からの波形を取り出して表示できるので電源起動時の波形や単発ノイズ等を取り出して観測できる。
2. プリトリガ;アナログ式では信号のあるレベルを同期トリガとするのでそれ以後の波形しか観測できない。デジタル式では同期トリガ以前の波形がメモリされているので呼び出して表示できる。
3. 演算処理;デジタル式にはコンピュータが組み込まれているので入力信号を演算処理してから表示できる。処理には,平均値演算,フーリェ変換,相関関数等があり,リアルタイムで演算された波形が表示できる。
その他表5・6に示した特色を持っている。図5・14にデジタルオシログラフの構成と外観を示す。
図5・14 デジタルオシログラフの構成と外観
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