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5・4 測定器と測定法
5・4・1 指示電気計器
 電流や電圧等の電気のエネルギーで指針などを動かして電気の量を指示するのが指示電気計器(メータ)である。
 メータを駆使する原理により種類が分類される。表5・5にメータの種類と主な用途を示す。代表的な電圧と電流の測定範囲も示した。
 メータの表面は図5・2に示す記号が書かれている。記号にはJIS規格,製造者,測定法の原理,階級(誤差)等が書いてあるので目的に応じてメータを選ぶことができる。
 
表5・5 メータの種類と用途
種類 略号 使用回路 電流〔A〕 電圧〔V〕 計器の用途
可動コイル形 M 直流 5×10-6〜102 10-2〜6×102 電圧計、電流計
抵抗計、回転計
温度計、照度計
磁束計
可動鉄片形 S 交流 10-2〜3×102 10〜103 電圧計、電流計
抵抗計、回転計
電流力計形 D 交直流 10-2〜20 1〜103 電圧計、電流計
電力計、周波計
整流形 R 交流 5×10-4〜10-1 3〜103 電圧計、電流計
抵抗計、周波計
熱電形 T 交直流 10-3〜5 0.5〜150 電圧計、電流計
電力計
静電形 E 交直流   1〜5×105 電圧計、抵抗計
誘導形 I 交流 10-1〜102 1〜103 電圧計、電流計
電力計、回転計
可動コイル比率計形 XM 直流     抵抗計、温度計
振動片形 V 交流     周波数計、回転計
可動鉄片比率計形 XS 交流     力率計、周波数計、同期検定器
電流力計比率計形 XD 交直流     周波数計、磁束計、同期検定器
電量計
 
図5・2 メータの表示
 
(a)規格記号 (e)周波数 (i)製造年月日
(b)製造者名 (f)階級 (j)その他の必要事項
(c)計器番号 (g)動作原理  
(d)測定量の単位 (h)回路の種類  
 
 機械的に駆動する指針に変わって発光ダイオード,液晶,CRT等を用いた電子メータが使用されている。デジタル表示やグラフィク画面表示ができるなど新しい表示器として注目されている。図5・3(a)に透過型液晶LCDを用いた電子メータの断面図を示す。後からハロゲンランプで光を投影してLCD上にメータ表示をする。(b)に電子メータのブロック図と表示を示す。
 電子メータは可動部分がないので堅牢で指針のゼロ調整が不要である。表示画面には指針型と類似,デジタル数字あるいは棒グラフ等自由な画面が表示できる。新しい指示計器として電子メータの普及が広がると考えられる。
 
図5・3 電子メータ
 
 電流・電圧・抵抗等主な電気の量をまとめて測定できるのがテスターである。図5・4にテスターの外観図と測定回路を分離して示した。各回路の動作は後で説明する。交流電流は整流器で直流に交換して直流電流として測定する。メータは可動コイル型直流電流計でアナログ表示をするかデジタル電圧としてデジタル表示をする。図5・4はアナログ型のテスターを示す。電気の種類と測定範囲(レンジ)はスイッチで切り替える。
 
図5・4 テスターと回路図
 
 図5・5に可動コイル型直流電流計の構造を示す。永久磁石NとS極の間に回転できる可動コイルを入れ,コイルに電流を流すと磁界と電流との相互作用(フレミングの左手の法則と呼ぶ)によりコイルが回転する。コイルに取り付けた指針も回転する。回転角度が電流の大きさに比例することから電流値が表示できる。可動コイル型電流計は精度がよく安定した直流電流が測定できるので標準計器とされている。
 
図5・5 可動コイル型電流計
 
図5・6 電流の分流器
 
 図5・6は電流計の測定レンジを拡大する分流器回路を示す。定格値(フルスケール)がig,(A),内部抵抗g(Ω)の電流計の定格値をm倍に拡大する場合に(a)普通分流器では電流計に並列に分流抵抗Sを挿入するとき外部から流し込める電流Iとigの間には
 
 
Iを定格値igのm倍とするため
 
mig=I (5・15)
 
として(5・14)式を書きなおすと
 
 
となるので電流計内部抵抗gの(m-1)分の1の分流抵抗Sを電流計に並列に加えると測定レンジがm倍となる。
 
 
となるのでSを切り替えると測定レンジを替えられる。しかし,Sを切り替えるとメータの応答性が変化して指針の動き速度が変化する欠点がある。これを解決したのが(b)の万能分流器である。Sの値は変えないで,Sの途中から電流端子を接続する。端子の位置をSの左からS/n,右から(S-S/n)の位置とすると
 
I=(nm)ig (5・19)
 
となり,m倍から更にnm倍にレンジが拡大される。Sを一定として端子の位置nを切り替えることから指針の速度が変わらないでレンジ切り替えができる。







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