1・2・2 電流と磁界
アンペールは電線に電流を流すと電流を取り巻いて磁力線が発生し, 図1・19に示すように磁力線の向きと電流の向きとの関係は右ネジを回す向きとネジが進む向きに対応することを発見してこの関係をアンペアの右ネジの法則と呼んだ。すなわちネジを右に回す向きに磁力線をあわせるとネジが進む方向が電流の向きとなる。
図1・19 アンペアの右ネジの法則
コイルと等価磁石:
図1・20にコイルに電流を流したときに発生する磁界と磁石から発生する磁界とを対応して示した。2つの磁界が同じ形状の分布をしていることからコイルが等価磁石と呼ばれる。コイルを巻いたモーターが回転するのはコイルから発生する磁界の力を利用するからである。
図1・20 コイルと等価磁石
コイルに電流を流すと電流を押さえる抵抗(リアクタンスX L)が作用する。1・1・5 項で述べたように
XL=j2πfL (オーム, Ω) (1・26)
となる。ここで, jは虚数単位で , πは円周率, 約3.14, fは周波数(Hz), Lはコイルのインダクタンスと呼ぶ定数で単位はヘンリー, (H)で表す。
コイルに電圧e(V)を加えるとき流れる電流i(A)は
となる。(-j)により電流iは電圧の変化に対して90度位相が遅れて流れる。コイルに抵抗分Rが含まれているとリアクタンスXLはインピーダンスZLとなり
ZL=R+XL=R+j2πfL (Ω) (1・28)
となり, 電流の大きさは
となり, 電流の位相は電圧の変化に対して電気角として
だけ遅れて変化する。
2つのコイルを近づけて磁界で結合すると変圧器ができる。一次側と二次側のコイルの巻き線数の比により電圧や電流の変換ができる。図1・21に変圧器の回路を示す。
図1・21 変圧器の回路
一次コイルAと二次コイルBの巻き線比をnA:nBとする。変圧器の損失がないとすると入力の一次側電圧と出力の二次側電圧が巻き線数の比となるので
eA:nA=eB:nB (1・31)
より
変圧器の電力損失がないとすると, 一次側と二次側の電力が等しいので電流をiAとiBとすると
eA×iA=eB×iB (1・33)
(1・32)式と(1・33)式より
巻き線をnB>nAとすると二次側Bの電圧は一次側より大きくなるが電流は逆に小さくなることが分かる。トランスは電圧及び電流の変換のほかにも, インピーダンス変換にも利用される。
一次側のインピーダンス(抵抗とリアクタンス)をZA, 二次側をZBとすると
ZA:ZB=nA2:nB2 (1・35)
の関係があるので
となるのでインピーダンスの異なる回路間をトランスで結合する(これをインピーダンス整合と呼ぶ)ことができる。アンテナと受信機のインピーダンスを整合させるのに適当な巻き数比を持つ高周波トランスが使用されている。
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