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1・2 材料及び加工方法
1・2・1 材料
 機器に使用する材料は日本工業規格によるものを使用し,この規格にない材料を使用する場合は,十分に検討し長期の使用に耐えるものを選定しなければならない。
(1)材料の使用に対する注意事項
(a)振動及び衝撃に対し支障の恐れある材料は構造材料として使用することをなるべく避ける。
(b)成形樹脂材料,磁器,ガラスはなるべく使用を避け,やむを得ず使用する場合は補強の方法を講ずること。
(c)木材,その他燃えやすい材料はなるべく使用を避ける。
(d)吸湿性の材料はできる限り使用を避け,やむを得ず使用する場合は防湿処理を施すこと。
(e)かびの培養になる材料はできる限り使用を避け,やむを得ず使用する場合は防かび処理を施す。
(f)回転機のバランスウェイトには鉛又はホワイトメタルを使用しないこと。
(2)構造材料
 構造材料の選定にあたっては,次の考慮を払うこと。
(a)軽金属
 海水など塩分の被害をうけるおそれのある場所に装備する機器の構造用軽合金材料は日本工業規格による耐食アルミ合金を使用し,表面処理及び塗装に特に注意すること。
(b)特殊鋳鉄
 構造材料に鋳鉄を使用する場合は特殊鋳鉄又は鋼板を使用することが望ましい。
(3)導電材料
(a)導電材料は特に指定のない限り銅系材料を使用すること。
(b)銅材はJISC3001(電気用銅材の導電率)による導電率のよいものを使用する。
(c)巻線用電線は油性エナメル絶縁電線,紙巻線及び綿巻線は使用しないこと。
(4)配線材料
(a)機器の内部配線角電線は次による。
(i)JCS3296-77 660V船用制御機器配線用ビニル絶縁電線(SYP)
 JISC3410-99 0.6/lkV制御機器配線用ビニル絶縁電線(0.6/lkV SYP)
(ii)JCS3378-81 660V船用配電盤用単心可とう難燃架橋ポリエチレン絶縁電線(SCP)
 JISC3410-99 0.6/lkV配電盤用可とう難燃架橋ポリエチレン絶縁電線(0.6/lkV SCP)
(b)機器の正常な使用状態で導体の最高温度が,上記(i)に示す絶縁電線では75(℃),上記(ii)に示す絶縁電線では85(℃)を超えないよう使用すること。
(c)抵抗体,電球ソケットなどの付近で,温度の高い場所で使用する内部配線は,これに適したものを使用すること。
(5)絶縁材料
 電気機器の絶縁については,JISC4003-1998(電気絶縁の耐熱クラス及び耐熱性評価)で電気絶縁の耐熱クラス(Y, A, E, B, F, H, 200, 220, 250)に対応する温度の数値で呼称する。即ち,適切な絶縁材料及び絶縁システム(電気製品において,導体と組み合わせている絶縁材料の組合せのこと。)を選択し,耐熱クラスを指定し,使用場所に応じた十分な機械的強度,電気的特性及び耐熱,耐湿性でなるべく不燃性又は自己消火性のものを使用すること。
(1)防食処理
 耐食金属以外の金属材料には防食めっき,防食塗装又は陽極酸化被膜を施すこと。
 耐食金属とは銅,黄銅,青銅などをいう。
(a)防食めっき
 防食めっきはニッケルめっき,ニッケルクロームめっき,銀めっき,亜鉛めっき,あるいは溶融めっき又は金属吹付法による耐食金属被覆とする。
(b)防食塗装
(i)下地処理
 軽合金以外の金属にはウォッシュプライマ塗布又はりん酸塩処理の何れかとし,軽合金に対してはウォッシュプライマ塗布,クロム酸塩処理又はりん酸塩処理のいずれかを行う。
(ii)塗装
 下地処理を行った後,良質の難燃性塗料を塗装する。なお,ベント形鉛蓄電池を収納する電池室に取付けられる機器は耐酸塗料で塗装する。
(c)陽極酸化被膜
 防食塗装が不適当な軽合金にはJISH8601-92(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化被膜)による陽極酸化被膜を施す。
(2)金属間接触部の防食
 軽合金の合せ面,軽合金と銅合金又は鋼材等の接触部には防食のためジンクロメートを含んだペースト又はそれに浸したテープをはさむこと。
 軽合金に接する銅合金又は鋼製のボルト,ナット類は亜鉛めっきを施し更にクロム酸処理又は重クロム酸処理を施す。
(3)導電部の接続
 導電部の接続は電気的に確実であり,振動,衝撃に耐えなければならない。
 内部配線の接続方法は,目的により銀ろう付,はんだ付,かしめ,小ねじ又はボルト締め,あるいは圧着による。
(4)ボルト,ナット及び小ねじの止め方
(a)小ねじ及びボルト,ナット類は振動,衝撃によってゆるまないよう有効な回り止めを施すこと。
(b)タップ穴にはいるボルトの有効ねじ部は0.8D以上であること。ただし,薄板にタップ立てした場合は有効ねじは2山(アルミ合金の場合は3山)以上とする。
(c)ボルト長さはナットの頭から1.5山以上つき出す長さとする。
(d)アルミニウム合金,合成樹脂などの材料はなるべく直接ねじを切るのを避けること。
(5)合成樹脂材料の加工
(a)合成樹脂材料は十分からしたものを使用する。
(b)フェノール樹脂材料は機械加工の作業が終ったら乾燥し,加工面に絶縁ワニス処理を行うこと。
(6)配線方法
(a)配線は適当な間隔で固定すること。
(b)配線は局部的な高温の発熱体から遠ざけること。
(c)配線は許容電流範囲内でたばねて縛るか,又は絶縁テープで巻くこと。
 
(1)小ねじはなるべく,丸頭小ねじを使用しないこと。また,小ねじの先端で電線を締付ける場合は平先のものを使用すること。
(2)ボルト,ナットは等級並3以上のものを使用すること。
 部品はできる限り日本工業規格のものを使用すること。
(1)電気計器
(a)階級の適用は次を参考とすること。
 
用途 階級
配電盤等で常に電源の監視制御を行うもの 1.5級
上記以外のもの 2.5級
 
(b)最大目盛
 電流計では回路の定格電流の約130〔%〕,電圧系では定格電圧の約120〔%〕まで読めるものを使用すること。
(c)電気計器には必要に応じ負荷の定格値に相当する目盛に緑線を,又,過負荷に相当する目盛に朱線を付けること。
 
(1)一般寸法差
 機器及び部品の加工寸法差はJIS B0405-91(普通公差)及びJIS B0408-91(金属プレス加工品の普通寸法公差)による。
(2)互換性寸法差
 JIS B0405-91による中級及びJIS B0408-91による精密級とする。
 機器のハンドル,表示灯の色分けは次を参考とすること。
 
色分け  乳白 黄赤(橙)
表示の内容 スイッチ - - -
回転 - - 後進 前進 停止
命令又は応答  - - - 進行 停止
- - - 操作 中止
保安 - 安全 危険 - 注意
- 正常 異常 - -
- 不可 - -
電源 生き - - - -
 
(1)端子などの配列
 機器の外線導入端子の極性の配列は機器の正面から見とおして左から右に,上から下に手前から先方にP(正極),O(中性),N(負極)あるいはR,S,T又はU,V,Wの順序とする。
(2)端子の表示
 端子の表示は次による。
 
回路別 相又は極性 IEC JEM
三相交流回路     R相(又はU相) 規定なし
S相(〃V相) 規定なし
T相(〃W相) 規定なし
絶縁中性線 薄青
接地線 黄又は緑
直流回路    P極
N極
中性線
接地線
 
(3)内部配線の色分け
 主要な配電盤内の主母線が銅帯の場合には上表による色分けを行う。色分けはテーピング又はコーティングによるが,ボルト締付部には行わない。
 携帯用機器は指定の高さ(一般用手提灯は0.5〔m〕,防爆形携帯灯は1.5〔m〕の高さ)から,厚さ6〔mm〕の鋼板上に3回落しても使用に支障のある破損を生じないこと。
 布設電線のような外線を導入する機器には外線接続端子を設けること。ただし,特に小型の機器では内部の部品付属の端子に外線を接続することもできる。
 機器の異極裸導体相互間及び裸導体と大地間のすきま並びに沿面距離等の絶縁距離については,船舶設備規程第178条の規定による。
 
 
第178条 電気機械及び電気器具(その露出充電部が密閉され,かつ,その火花による危険のないものを除く。)の露出充電部相互間又は露出充電部と大地の間の空げき(火花間げき及び絶縁物のある空げきを除く。)及び沿面距離は,次表に定めるところにより保たなければならない。
 ただし,管海官庁が承認したものについては,この限りでない。
 
(1)機器内部配線用電線の許容電流は,その電線の規格に定められた値以下で適用すること。
(2)機器内部の温度が電線の規格に規定する周囲温度を超える場合又は多数の電線をたばねる場合は許容電流値を低減して計画すること。
注:機器内部の温度は特殊の場合を除き機器外部の温度より10〔℃〕高いことを普通目安としている。
 開口の大きさが四角穴及び丸穴では一辺又は直径が12.7mm,隙間では幅が9.5mmを超えない構造とすること。
 機器内部の点検,手入,調整などのためのふたは次による。
(1)機器の装備場所が狭い所,又は他の機器が隣接する場所でのふたは取外し式とする。ただし,小形のふたは次の(2)による。
(2)上記以外の場合のふたは丁番式とする。
(3)ヒューズの取換えなどのため開く機会の多いふたは特別の用具を使用しないで開閉できること。
 ただし,防水のふたはこの限りでない。
 プラグなどの保持の強さは,次に示す力で引抜き方向に1分間引張っても異常のないこと。
 
名称 引張力〔kgf〕
非防水プラグ 3
 
(1)安全電圧をこえる電圧の機器は機器外部に導電部分を露出しない構造とすること。
 安全電圧(人体に危険のない電圧)は,94年IEC92-101では次のように定められている。
(1)直流では,導体間又は導体とアース間の電圧が50Vを超えないとき。
(2)交流(実効値)では,導体間又は導体とアース間が50Vを超えないとき。
(2)安全電圧を超える電圧の機器は,外被を接地すること。ただし,二重絶縁された外被はこの限りではない。
(3)主電源スイッチ又は断路器を“切”にしたときは機器へ給電されるすべての電源は“断”となること。
(4)電力用コンデンサを使用している電気機器は電源を“断”としたとき蓄電により人体に危害を及ぼすおそれのある場合には適当な危険防止の考慮を払うこと。
(5)配電盤は次による。
(a)供給電圧が50ボルトを超える配電盤は,デッドフロント型のものでなければならない。(船舶設備規程(第214条)
(b)配電盤の前後の床面には絶縁性敷物又は木製格子を設け,かつ,その前面には手すりを設けなければならない。ただし,管海官庁が承認した場合は,この限りではない。(船舶設備規程(第212条)
(6)プラグ及びレセプタクルの組合せは,それぞれ他の電圧のものには使用できない構造とすること。例えば,24〔V〕と100〔V〕,24〔V〕と440〔V〕,100〔V〕と440〔V〕等は組合せできないこと。
(1)機器はその金属性の外被又は台が有効に接地できるように考慮すること。この場合特に接地線を設ける必要はない。
(2)絶縁性支持物(例えば,防振ゴム)を介して取付ける機器又は木壁等に取付ける機器はその金属外被の適当な部分に接地端子を設けること。
(3)携帯用機器は接地端子を設けプラグ・レセプタクルの部分で接地するようにすること。ただし,安全電圧を超えないものはこの限りでない。
注:接地端子は普通機器の主回路の定格電流の1/2に相当する大きさとしている。







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