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ISO/TC 8/SC 11/WG on Security
国際標準化機構/船舶及び海洋技術専門委員会/
海陸間インターフェイス分科委員会/保安作業委員会
マルメ会議出席報告
 
財団法人 日本船舶標準協会
 
 ISO/TC 8/SC 11/WG on Securityの会議が、2003年12月10日〜12日に、スウェーデンマルメ市の国際海事大学において開催された。
 同会議では、先般パナマで開催されたISO/TC 8において審議され、その後新たな議題として承認されたAWI 20858(海事保安計画の策定等)について審議が行われた。この規格案については、早期のPAS作成を目的とすることも併せて承認されている。
 そこで、この国際規格案に日本の意見をできるだけ反映させるべく、海上技術安全研究所 太田進氏及び日本造船研究協会 小磯康氏に同会議に御出席いただき、また日本船舶標準協会からも嘉納和之が参加したので、ここにその結果を報告する。
 
平成15年12月10日(水)から12月12日(金)
World Maritime University(国際海事大学)
201 24 Malmö, Sweden
 
 本件についてはこれまでにSCが開催されていないため、WG議長は決定していない。そのため、Project LeaderであるMr.Steven O'Malley(米国)が議事を進行した。出席者からに国際海事大学に会議施設の提供等への感謝の意が述べられた。
 
 出席者の確認がなされた。出席者は添付資料2のとおりである。出席者の略歴は以下の通り。なお、今後の便を考慮し、First Name(着席順)で記載する。
● Steven(SAIC.Project Leader):USCG出身。港湾のSecurity評価の経験あり。
● Sam(SAIC):US空軍出身。化学関係のSecurity評価の経験あり。
● MAX(WMU):フィリピン海軍&Coast Guard出身。WMUでもSecurityに関する事項について、講義等を実施している。
● Joe(USCG):カリフォルニア等で港湾のSecurity Planを作成。
● Lars(MAERSK SEALAND)
● Jenifer(WMU): USCG出身
● Thomas(JPMorgan):貨物情報システム(SST)の担当者
● Jack(グラマン):貨物の情報システム等を実施。
● Janet:System Planning Corporation。コンテナ評価に係わったことがある。
● 小磯、太田、嘉納:略
 
 議題はAWI 20848に限られているため、審議を要しなかった。
 
 今回はWG会議であり正式な決議は作成しないため、ドラフト・コミッティーは設置しなかった。
 
5.1 作成しようとする規格の性格
 今次会合では、作成使用とする規格(PAS)の目的について、議論があった。米国は、ISPS Codeの実施における各国間のばらつきを少なくするため、「(1)脆弱性評価方法」、「(2)保安計画の作成」、「(3)保安計画の作成等に従事する人の資質」の三点について、ISO規格を策定したいと考えている。これに対して我が国はSecurity Assessmentの参考書に相当するものを作ってはどうかとの意見を述べた。プロジェクトリーダーは、ISPS Codeの統一解釈に相当する規格を作成したいとの考えを述べたが、我が国は、ISPS Codeの統一解釈を策定するのであれば、IMOで審議すべきであるとの考えを強調した。
 貨物のサプライチェーン全体を扱うか否かについても議論があった。結果として、ISPS Codeのスコープを勘案し、貨物のサプライチェーン全体は扱わないことで合意した。このため、貨物のサプライチェーンに主たる興味があるメンバー(Thomas, Jack等)については、今後の積極的な貢献は期待し難いと考えられる。
 今次会合では、主として港湾施設の脆弱性評価の方法について審議したが、その際我が国は、締約国政府の責務である港湾施設保安計画策定の詳細手順を論ずる意味については、検討を要する旨を指摘した。その結果、可能な限り、各国が受け入れ可能な水準の設定を目指すことになった。
 一方、会議の外でUSCGのメンバーと話をしたところ、杜撰な港湾施設保安計画を策定しそうな国に圧力をかけるためのツールとしてこの規格を利用したいとの意向であった。
 なお、スケジュールに関して、Project LeaderはPASを6月末までに作成することで合意されている旨を述べたが、これに対して我が国は、「PASを早期に作成することを目標として作業を進めることは合意されているが、6月末までに策定することは合意されていない」との理解を述べた。次回会合については、本報告書の6節を参照のこと。
 
5.2 主な審議内容(添付資料3参照
 今次会合では主として、港湾保安計画の基礎となる脆弱性評価のためのSecurityに関するチェックリストについて審議した。その際、何度かProject Leaderより、ISPS Codeの統一解釈を検討しているかのような発言があったため、我が国は、統一解釈を審議しているのではないことを何回か指摘した。なお、チェックリストの中には、「港湾による手荷物検査の実施」といった、実際には殆どの港湾で実施不可能な項目も含まれている点に留意されたい。
 評価方法としては、「想定すべき危険性」について、最低限検討すべきシナリオを規格に含めることで合意し、シナリオの案について、簡単に審議した。この点については、今後改めて審議し直すことになると考えられる。
 現時点では、規格の全体構成が見えていない。具体的には、脆弱性を定量化する方法について審議しているのであるが、そのための全体の流れが示されていない。このことが、審議に支障を来している原因と感じられたため、我が国は、規格の詳細に先立って、全体構成について審議すべき旨を指摘した。しかし、現時点では、Project Leaderも規格(脆弱性評価方法)の全体を示すには至らないようであったため、この点に関する議論は途中で切り上げた。
 Risk Assessment手法に倣って脆弱性評価を行うといった考え方もあるため、参考として、Risk Assessment手法に関する基本的な考え方等も紹介したが、具体的な議論はできなかった。
 さらに言えば、Project Leaderは、例えばVulnerabilityという用語を複数の意味で用いるなど、定量的評価には不可欠な用語の定義等に無頓着な面もあり、一方で、港湾施設のSecurityに関するチェックリストについて審議を進めたがることから、脆弱性評価にかこつけて統一解釈を作ろうとして、混乱しているように感じられた。今後は、チェックリストが一人歩きしないよう、規格の中で、その位置付けを明記するよう、対処する必要がある。(この節の文責:太田)
 なお、船舶については、現在スペインが案を検討中であり、今後審議される予定である。
 
 次回のWG会議は、来年1月末から2月初旬を目処に、ロッテルダム(他に候補地としては、サンディエゴが挙げられた。)で開催することが予定された。なお、今後規格案はWEBで閲覧できるようにし、また、コメントもWEBまたはE-mailベースでやりとりすることになったので、以下のURLに適宜アクセスし、最新情報を把握する必要がある。
 
 各種便宜を図っていただいた国際海事大学に、出席者各位から謝辞が述べられた。
 
 今回会議では、決議は出されなかった。
 
 Project LeaderのMr.Steven O'Malleyにより閉会の宣言があり12月12日15時頃閉会となった。
 
以上
 
ISO/TC 8/SC 11/WG on Security
マルメ会議資料目録
添付資料番号 資料名称 備考
1.   - ISO/TC8/SC11 Resolution 224 NWIP on Maritime Security ISO/TC 8 Working Group meetings in Malmo, Sweden 10-12th December, 2003 PDFファイル
2.  - 出席者リスト WORDファイル
3.  - ISO 原案 (AWI 20858) PDFファイル
4.  - 修正 ISO 原案 (Revised AWI 20858) PDFファイル
5.  - Report on the AWI 20858 meeting PDFファイル
備考:資料名称にポインターを当ててクリックすると、当該資料が開きます。







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