【調査の概要】
1. 調査の背景
アンゴラは、1975年の独立直後から四半世紀以上にわたり内戦状態が続いていた。しかし、2002年、反政府勢力の指導者の戦死により和平機運が高まり、同年の停戦合意によって、75万人の死傷者と400万人の難民を生んだ内戦が実質的に終結した。その後、武装解除、国民和解も進み、急速に治安が回復されつつあるが内戦で疲弊した国家の再建をめざす中で、内陸部で数百万個の地雷が残存し、干ばつの影響も受け、経済復興には多くの課題を抱えている。
アンゴラの港湾位置図
この様に現在は厳しい経済環境にはあるが、南北約1,300km、東西約1,100kmある国土は、面積が124万6700km2で、日本の3.3倍の広さを持ち、その肥沃な土壌でかつてはポルトガルの植民地時代に大規模な商業的農業が行われていた。また、日産100万バーレルの石油、埋蔵量数億カラットのダイヤモンドなどの天然資源を有し、水力発電のポテンシャルと豊かな海洋資源にも恵まれており、高い潜在的生産力を有している。
日本からの援助は、続く内戦のため・国際機関を通じた緊急・人道的援助や、草の根無償資金協力、研修生受け入れに限られていた。1995年からは、基礎的生活分野および、基礎インフラ分野の無償資金協力を実施し、2002年度までの累積無償資金協力は240億円、2001年度までの累計技術協力経費は19億円である。
2. 調査の概要
本調査は、アンゴラにおける上記の背景を踏まえつつ、ルアンダ港、ロビト港、ナミベ港及びカビンダ港を現地調査し同国の港湾がおかれている現状と課題を把握するとともに、今後の同国における港湾のあるべき姿について関係機関の要人と意見交操を行い、わが国が関与できる港湾分野の技術協力等の方向を提案するために情報収集を行ったものである。各港の調査概要は以下のとおり。
1)ルアンダ港
アンゴラでの海上貨物の70%、270万トン(2002年:石油を除く)を取り扱っている。現在、港湾施設は七区域に分けられ、貨物が取り扱われている。ルアンダ港は、来年初めまでに、それらを三区域に再編成し、その運営に関し二社の民間会社とコンセッション契約をまとめたいとしている。契約の条件として、老朽化している施設のリハビリをルアンダ港側で行うことになっているが、資金難や人材不足のため実施が進んでおらず、これらの問題解決が喫緊の課題となっている。将来的には首都圏の生活物資と経済発展を支えるアンゴラの中枢港湾として特にコンテナ施設を中心とした港湾施設の拡張が必要と考えられる。
2)ロビト港
ザイールを通過し、インド洋側のダレスサラームまでアフリカ大陸を横断するベンゲラ鉄道のターミナル駅として有名である。ロビト港の広大な背後地には、アンゴラ第三の都市、ウアンボや、内戦難民が数多く住む中央高地が含まれる。ロビト港は1928年に建造され、1948年より順次設置された28基の岸壁クレーンが現在も稼働しているが、1980年より新たに更新されていない。1973年に300万トンあった貨物量は、現在、1/5の60万トンとなっている。背後地への輸送を担う港湾機能を維持するための緊急的なリハビリ、及び背後地への貨物需要に対応する将来の拡張が望まれている。
3)ナミベ港
商業ターミナルと鉱石ターミナルが、入り江を夾んで両側にある。商業ターミナルは、20万トンの貨物を取り扱っているが、岸壁ブロックの損傷もしくは、裏込め材の吸い出しが原因と思われるエプロンの沈下により岸壁クレーンの走行障害が発生しており、一方で倉庫の沈下も見られた。商業ターミナルは、1958年に建設され、1969年を最後にメンテナンスが行われず、現在の状態が放置されている。鉱石ターミナルは、1962年に、背後の内陸部から鉄道輸送される鉄鉱石の輸出のために建設された。内戦のために、採掘が中止された後は、石油を扱う岸壁として利用されている。しかし、1987年以降メンテナンスは行われていない。安全な港湾作業を確保するために、適切かつ緊急なリハビリが必要である。背後圏は鉱物資源や農産物のポテンシャルが極めて高く、交通大臣はナミベ港の将来的な役割に大きな期待を寄せている。
4)カビンダ港
飛び地のカビンダ州の輸送基地として重要な港である。延長約120mのL型桟橋があり、生活物資や社会基盤整備の物資をトラッククレーンで荷揚げしている。桟橋は、1940年代に建設され、1980年代にリハビリされた以降、損傷した木材デッキを部分的に取り替える以外、抜本的な補修などは行われていない。また、カビンダ市内から約50km離れたところに、木材輸出用の桟橋があるが、輸出が中断されてからは、朽ちた木材デッキの状態で放置されている。カビンダ州の経済発展や、潜在的資源である農林業の活性化のために、短期的にこれらの桟橋を維持すること、長期的にはカビンダの需要に見合う適切な機能拡張が必要となる。
3. 今後の見通し
上述のような調査の結果を踏まえると、アンゴラ全国の港湾マスタープラン策定がまず必要であり、JICAの開発調査として取り上げるのは時期的にもきわめて適切なタイミングと思われる。一方で緊急な施設リハビリの必要性はアンゴラ政府関係者が強く訴えているところでもあり、開発調査の一部に港湾施設の緊急対策の策定を盛り込んだ内容にするのが望ましいと考える。さらに各地の港湾を訪れた際、日本における港湾職員の研修と日本人専門家の派遣を強く望んでいた。これまで長期にわたる内戦の影響で港湾に限らず各種機関の組織体制は十分な状況になく、職員の研修、訓練といった人材づくりは重要なテーマである。
このような要請にこたえ、マスタープランの策定、緊急対策の策定、職員研修を含む開発調査の早急な実施と、これとは別スキームではあるが専門家の派遣を加えた総合的な技術協力スキームの検討を進めることが望ましいと考えている。アンゴラの対外債務の状況を見れば今すぐ円借款プロジェクトにつながる環境ではなく、かなりの助走期間が必要である。そのタイミングから見ても、現段階でマスタープランの策定に取り掛かることは極めてタイムリーな状況にある。
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