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●海外情報収集事業
調査団名:中近東・アフリカA班
対象国:アンゴラ共和国
調査分野:港湾
調査期間(日数):15.8.31〜9.13(14)
 
【調査の概要】
 
1. 調査の背景
 アンゴラは、1975年の独立直後から四半世紀以上にわたり内戦状態が続いていた。しかし、2002年、反政府勢力の指導者の戦死により和平機運が高まり、同年の停戦合意によって、75万人の死傷者と400万人の難民を生んだ内戦が実質的に終結した。その後、武装解除、国民和解も進み、急速に治安が回復されつつあるが内戦で疲弊した国家の再建をめざす中で、内陸部で数百万個の地雷が残存し、干ばつの影響も受け、経済復興には多くの課題を抱えている。
 
アンゴラの港湾位置図
 
 この様に現在は厳しい経済環境にはあるが、南北約1,300km、東西約1,100kmある国土は、面積が124万6700km2で、日本の3.3倍の広さを持ち、その肥沃な土壌でかつてはポルトガルの植民地時代に大規模な商業的農業が行われていた。また、日産100万バーレルの石油、埋蔵量数億カラットのダイヤモンドなどの天然資源を有し、水力発電のポテンシャルと豊かな海洋資源にも恵まれており、高い潜在的生産力を有している。
 日本からの援助は、続く内戦のため・国際機関を通じた緊急・人道的援助や、草の根無償資金協力、研修生受け入れに限られていた。1995年からは、基礎的生活分野および、基礎インフラ分野の無償資金協力を実施し、2002年度までの累積無償資金協力は240億円、2001年度までの累計技術協力経費は19億円である。
 
2. 調査の概要
 本調査は、アンゴラにおける上記の背景を踏まえつつ、ルアンダ港、ロビト港、ナミベ港及びカビンダ港を現地調査し同国の港湾がおかれている現状と課題を把握するとともに、今後の同国における港湾のあるべき姿について関係機関の要人と意見交操を行い、わが国が関与できる港湾分野の技術協力等の方向を提案するために情報収集を行ったものである。各港の調査概要は以下のとおり。
 
1)ルアンダ港
 アンゴラでの海上貨物の70%、270万トン(2002年:石油を除く)を取り扱っている。現在、港湾施設は七区域に分けられ、貨物が取り扱われている。ルアンダ港は、来年初めまでに、それらを三区域に再編成し、その運営に関し二社の民間会社とコンセッション契約をまとめたいとしている。契約の条件として、老朽化している施設のリハビリをルアンダ港側で行うことになっているが、資金難や人材不足のため実施が進んでおらず、これらの問題解決が喫緊の課題となっている。将来的には首都圏の生活物資と経済発展を支えるアンゴラの中枢港湾として特にコンテナ施設を中心とした港湾施設の拡張が必要と考えられる。
 
2)ロビト港
 ザイールを通過し、インド洋側のダレスサラームまでアフリカ大陸を横断するベンゲラ鉄道のターミナル駅として有名である。ロビト港の広大な背後地には、アンゴラ第三の都市、ウアンボや、内戦難民が数多く住む中央高地が含まれる。ロビト港は1928年に建造され、1948年より順次設置された28基の岸壁クレーンが現在も稼働しているが、1980年より新たに更新されていない。1973年に300万トンあった貨物量は、現在、1/5の60万トンとなっている。背後地への輸送を担う港湾機能を維持するための緊急的なリハビリ、及び背後地への貨物需要に対応する将来の拡張が望まれている。
 
3)ナミベ港
 商業ターミナルと鉱石ターミナルが、入り江を夾んで両側にある。商業ターミナルは、20万トンの貨物を取り扱っているが、岸壁ブロックの損傷もしくは、裏込め材の吸い出しが原因と思われるエプロンの沈下により岸壁クレーンの走行障害が発生しており、一方で倉庫の沈下も見られた。商業ターミナルは、1958年に建設され、1969年を最後にメンテナンスが行われず、現在の状態が放置されている。鉱石ターミナルは、1962年に、背後の内陸部から鉄道輸送される鉄鉱石の輸出のために建設された。内戦のために、採掘が中止された後は、石油を扱う岸壁として利用されている。しかし、1987年以降メンテナンスは行われていない。安全な港湾作業を確保するために、適切かつ緊急なリハビリが必要である。背後圏は鉱物資源や農産物のポテンシャルが極めて高く、交通大臣はナミベ港の将来的な役割に大きな期待を寄せている。
 
4)カビンダ港
 飛び地のカビンダ州の輸送基地として重要な港である。延長約120mのL型桟橋があり、生活物資や社会基盤整備の物資をトラッククレーンで荷揚げしている。桟橋は、1940年代に建設され、1980年代にリハビリされた以降、損傷した木材デッキを部分的に取り替える以外、抜本的な補修などは行われていない。また、カビンダ市内から約50km離れたところに、木材輸出用の桟橋があるが、輸出が中断されてからは、朽ちた木材デッキの状態で放置されている。カビンダ州の経済発展や、潜在的資源である農林業の活性化のために、短期的にこれらの桟橋を維持すること、長期的にはカビンダの需要に見合う適切な機能拡張が必要となる。
 
3. 今後の見通し
 上述のような調査の結果を踏まえると、アンゴラ全国の港湾マスタープラン策定がまず必要であり、JICAの開発調査として取り上げるのは時期的にもきわめて適切なタイミングと思われる。一方で緊急な施設リハビリの必要性はアンゴラ政府関係者が強く訴えているところでもあり、開発調査の一部に港湾施設の緊急対策の策定を盛り込んだ内容にするのが望ましいと考える。さらに各地の港湾を訪れた際、日本における港湾職員の研修と日本人専門家の派遣を強く望んでいた。これまで長期にわたる内戦の影響で港湾に限らず各種機関の組織体制は十分な状況になく、職員の研修、訓練といった人材づくりは重要なテーマである。
 このような要請にこたえ、マスタープランの策定、緊急対策の策定、職員研修を含む開発調査の早急な実施と、これとは別スキームではあるが専門家の派遣を加えた総合的な技術協力スキームの検討を進めることが望ましいと考えている。アンゴラの対外債務の状況を見れば今すぐ円借款プロジェクトにつながる環境ではなく、かなりの助走期間が必要である。そのタイミングから見ても、現段階でマスタープランの策定に取り掛かることは極めてタイムリーな状況にある。
 
○案件形成事業
調査件名:インドネシア国スラバヤ港及びスマラン港 旧港湾施設改修計画
対象国:インドネシア
調査分野:港湾
調査期間(日数):15.8.31〜9.13(14)
 
【調査の概要】
 
 本調査は、本邦円借款により建設された港湾施設(防波堤と雑貨バースが1986完成、コンテナバースが1997完成)が地盤沈下により本来の機能を失いつつあるスマラン港と、オランダが約100年前に建設し、現在では係留・荷捌き施設が手狭となり、かつ老朽化したことから、危険で非効率な荷役作業を余儀なくされているスラバヤ港のカリマスターミナルにおいて、両港の港湾施設を改修し、それらの機能回復と増強を図ることを目的として調査を行った。
スマラン港
 岸壁とその背後地の地盤沈下により、高潮位時(主に大潮の満潮時)には雑貨岸壁背後の荷捌き場が約10cm冠水し、荷役作業が中断される。さらには防波堤の沈下に伴い増大した港内への侵入波浪により、コンテナ、雑貨岸壁における荷役の効率及び安全性の低下と、港内への流入土砂による港内泊地の埋没が生じている。地盤の沈下速度は5〜10cm/年と観測されている。また港湾地区に隣接するIndustrial Processing Zone(IPZ)には本邦企業5社の工場が立地していたが、地盤沈下や浸水の影響により2年前までに4社がスマラン港より約10km離れたIPZに移転し、現在では1社が立地するのみとなっている。
スラバヤ港
 スラバヤ港の東端に流入するカリマス川(幅約40m)の河口部から上流側へ約2kmにわたって建設されたカリマスターミナルは、主に離島を結ぶ内航海運に供する木造船(船長20〜30m)が利用する雑貨ターミナルである。現在では、施設全般の老朽化、岸壁前面の水域と水深不足に加え、隣接する工場、倉庫、道路等、平面的な制約条件による陸上スペース不足のため、荷役作業は騒然としており、非効率で危険な状況にある。
 
2. 今後の見通し
スマラン港
 本件はインドネシア運輸省海運総局港湾浚渫局/Directorate General of sea Communication(DGSC)より、無償資金協力による港湾施設改修プロジェクト実現への協力を依頼されたものである。インドネシア側は、港湾施設の改修は開始時期が遅れるほど必要なコストと技術的な難易度が増すとしてプロジェクトの早期実施を熱望しており、防波堤の一部(旧西防波堤の基部175m)の改修をすでに自己資金により開始している他、毎年の岸壁背後地のかさ上げ等の地盤沈下対策費用に約1,400万円支出している。
 本件の問題は地盤沈下に起因していることから、根本的な問題の解決には多大な時間と資金を要すると予想される。しかしながら、本邦円借款により建設された港湾施設が水没し、現地に進出している本邦企業が工場の移転を余儀なくされている状況においては、緊急性の高い港湾施設(特に防波堤)の改修は優先事業として、JICAリハビリ無償等により早急な問題解決を図る必要があると思われる。
スラバヤ港
 本件はスラバヤ港を管理する第3インドネシア港湾会社(Pelindo III)よりDGSCへ、我が国ODAにより実施して欲しい旨の要請がなされたものである。インドネシア側は、カリマスターミナルの運営は採算性が低く、本邦円借款によるプロジェクトの実施は困難として、無償協力によるプロジェクトの実施を要望している。
 しかしながら、現地の状況(緊急性はそれほど高くなく、本邦進出企業とは無関係であり、Pelindo IIIはカリマスターミナルの一部を将来プレジャーボートの係留や緑地等のレクレーション施設として再開発したいとの意向があるなど)と、貧困・環境対策と本邦企業の受益や投資環境の改善効果を重視する昨今の本邦ODAの動向からは本プロジェクトが無償案件として実施される可能性は低いものと考えられる。
 一方でカリマスターミナルは、インドネシア経済を支える内港海運ネットワーク(離島地区への物資供給等)の中においては重要な役割を果たしており、地域振興の面における当該プロジェクトの必要性は高いものと思われる。このことから、今後のインドネシア側の当該地区の開発方針を確認しつつ、岸壁の改修については狭い場所での急速施工の必要性などを考慮した本邦技術によるSTEP案件としてのプロジェクト形成が現実的と思われる。
 本調査において、インドネシア側のプロジェクト実施に対する要望とそれらの必要性の高いことを確認した。しかしながらインドネシア側は現時点においては、いずれも本邦の無償協力によるプロジェクトの実施を要望していることから、今後はJICAの社会開発調査、JICAのリハビリ無償、JBICのSAF、JBICの円借款などの連携によるプロジェクトの実施を提案し、案件の実現を図る必要がある。
 
スマラン港 雑貨岸壁の冠水状況
 
カリマス川幅いっぱいの係留船







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