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海外運輸 2003年8・9月
トピックス
平成14年度海外コンサルティング業務等受注実績調査
1. 調査の概要
(1)目的
 本調査は、主に建設関係のインフラストラクチャーに従事するコンサルティング企業等の海外における受注実績を内容別、国別等に調査することにより、これらコンサルティング企業の海外活動の現況を把握し、今後の海外活動ならびに国際協力の推進に資するための基礎資料を得ることを目的とする。
(2)受注期間
 平成14年4月1日〜平成15年3月31日
(3)調査実施体制
 本調査は、(社)国際建設技術協会が行ったものであるが、(社)海外運輸協力協会、(社)海外農業開発コンサルタンツ協会、ならびに(社)海外コンサルティング企業協会の協力を得て、(社)国際建設技術協会が中心に取りまとめたものである。
(4)調査対象企業
 本調査は、上記4団体に属する企業会員のうち建設コンサルタント73社を対象に行った。うち、受注企業数は59、非受注企業数は14社である。
2. 調査結果(概要)
 平成14年度の海外コンサルティング業務等の受注実績は、受注額ベースで599.4億円、受注件数ベースで753件であった。平成13年度と比較すると、昨年度実績(706.4億円、779件)から受注額で107.0億円(15.1%)減、件数で26件(3.3%)減となった。これは過去10年間で2番目に低い受注実績(平成5年度 516.2億円)となっている。
 わが国コンサルタントの海外業務受注の内容は、ODA関連が92.3%、ODA関連以外が7.7%となっており14年度においても、依然としてJICA、JBIC、無償資金協力といったわが国ODA等に依存する傾向が大きかった。しかしながら、14年度のODA関連分野の受注が金額ベースで昨年比93.9億円、14.5%の減となっており、なかでも無償資金協力(38.9億円、44.3%減)とJBIC(44.4億円、14.0%減)が全体受注額減の主な要因となっている。
 以下、平成14年度受注実績の特徴について、前年度との対比等により概観する。
 
(1)資金出所別受注について
(1)ODA関連
 資金出所別受注について概観すると、ODA関連(JICA、無償資金、JBIC、国際機関等)の受注額は553.5億円であり、全受注額に占める割合は92.3%であった。しかし、前年度に比べ、受注額では93.9億円減(14.5%減)、受注件数では56件減(8.1%減)であった。
 
●JICA案件の受注額は203.1億円で対前年度4.0%減であり、全受注額に占める比率では33.9%(前年度29.9%)と前年度より上昇したが、受注件数では、前年度の379件から333件の大幅な減となっている。
●無償資金協力案件の受注額は48.9億円で、前年度に比べ38.9億円、41.3%の大幅減となり、全受注額に占める割合も8.2%(前年度12.4%)と若干低くなった。
●JBIC案件の受注額は273.6億円(対前年度44.4億円、14.0%減)で大幅な減少となった。全受注額に占める割合は45.6%(前年度45.0%)で依然として大きな割合を示している。14年度のJBICのコンサルタント契約総額に占める本調査対象企業受注額の割合は71.7%で昨年(65.5%)と比べると上昇した。平成14年度のJBIC案件のコンサルタント契約総額の内訳は、融資案件が248.7億円、JBICが直接発注するSAF(有償資金協力促進調査)が23.1億円であった(JBIC提供資料)。なお、JBICのコンサルタント部分契約額の推移、調査対象企業のJBIC案件受注額の推移およびその受注比率の年度別推移は図((1)資金出所別受注額の推移(平成5年度〜平成14年度))の通りである。
●国際機関案件の受注額は16.4億円(対前年度4.5億円、37.8%増)、受注件数は36件(対前年度19件、111.8%増)で、受注金額及び受注件数のいずれにおいても大幅な増となった。全受注額に占める割合は2.7%(前年度1.7%)となった。その他わが国政府機関の受注額は11.5億円(対前年度6.7億円、36.8%減)であった。
(2)ODA以外
 ODA以外(外国政府、民間等)の受注額は45.9億円(対前年度13.1億円、22.2%減)となり、全受注額に占める割合は7.7%であった。その中で、外国政府機関案件の受注額は17.1億円(対前年度14.4億円、45.7%減)となり、全受注額に占める割合は2.9%である。また、民間からの受注額は19.1億円(対前年度1.5億円、7.3%減)となり、全受注額に占める割合は3.2%であった。その内訳は、非日系企業からの受注額が12.9億円、日系企業からの受注額が6.2億円であった。
 
(2)技術サービス別受注について
 設計施工(詳細設計+施工監理)と計画調査の受注額がそれぞれ157.1億円、157.5億円で最も大きく(1件当たりそれぞれ1.73億円及び0.73億円)、次いで施工監理121.7億円、詳細設計33.5億円、基本設計27.3億円の順となり、平成13年度の実績と比べて、特に設計施工と詳細設計が受注額及びその比率ともに下がり、一方その他が大きく上がった。
 
 技術サービスの「その他」は、件数では246件で最も多い。これにはプロジェクト形成調査、事前調査、フォローアップ調査等JICAの役務提供契約、JBICのSAF等が含まれ、比較的小口(1件当たり約2,500万円)のものが多いのがその特徴である。
 
(3)業務分野別受注
●運輸・交通分野(198.3億円:対前年度44.6億円、18.4%減)が最も多く、全体の33.1%を占め、次いで農林水産分野(98.8億円、全体の16.5%: 対前年度24.6億円、33.2%増)、水資源分野(76.8億円、全体の12.8%: 対前年度72.5億円、48.6%減)の順となっている。
●建築・住宅、農林水産、環境の分野は大きな伸びを示している。
●運輸・交通分野のなかでは道路・橋梁が97.4億円(90件)で最も大きい。農林水産分野では農業水利が60.8億円(28件)で最も大きく、水資源分野では上水道が36.3億円(52件)で最も大きい。
●その他の分野は39.5億円(対前年度1.7億円、4.1%減)であり、教育の7.8億円(20件)、保健・医療の4.5億円(7件)が比較的大きい。
 
(4)地域別・国別受注
 地域別受注額については、例年通り、アジア地域がトップであり、398.4億円で全受注額の66・5%を占めている。次いで、アフリカ地域66.9億円、中南米地域58.5億円、中東地域32.8億円と続いているが、ほとんど全地域において受注額ベースで、昨年度比減額となっている。
 国別受注額上位10ヵ国は、7位のルーマニアを除いて、インドネシア、ベトナム、フィリピン、中国、スリランカ、アフガニスタン、カンボジア、タイ、ミャンマーの順で上位9ヵ国をアジア地域が占め、この9ヵ国で全受注額の59.5%を占めている。昨年度80位のルーマニアが今年度7位になった要因は、ルーマニア鉄道近代化に係る案件の受注が大きい。
 
3. 調査結果詳細
(1)業務別受注額および受注件数
業務 受注額(億円) 比率(%) 受注件数
コンサルティング業務 576.2
(680.5, -15.3%)
96.2
(96.3)
719
(739, -2.7%)
測量業務 19.4
(15.0, 29.3%)
3.2
(2.1)
16
(17, -5.9%)
地質調査業務 3.8
(10.9, -65.1%)
0.6
(1.5)
18
(23, -21.7%)
合計 599.4
(706.4, -15.1%)
100
(100)
753
(779, -3.3%)
上段:平成14年度実績 下段:( )内は平成13年度実績および増減率
(百万円以下四捨五入、以下同様)
 
(2)資金出所別受注額および受注件数
資金出所 受注額(億円) 比率(%) 受注件数
ODA関連 553.5
(647.4, -14.5%)
92.3
(91.6)
633
(689, -8.1%)
JICA 203.1
(211.5, -4.0%)
33.9
(29.9)
333
(379, -12.1%)
無償資金 48.9
(87.8, -44.3%)
8.2
(12.4)
68
(98, -30.6%)
JBIC 273.6
(318.0, -14.0%)
45.6
(45.0)
148
(150, -1.3%)
国際機関(注) 16.4
(11.9, 37.8%)
2.7
(1.7)
36
(17, 111.8%)
その他 11.5
(18.2, -36.8%)
1.9
(2.6)
48
(45, 6.7%)
ODA以外 45.9
(59.0, -22.2%)
7.7
(8.4)
120
(90, 33.3%)
外国政府 17.1
(31.5, -45.7%)
2.9
(4.5)
39
(39, 0.0%)
民間 19.1
(20.6, -7.3%)
3.2
(2.9)
74
(41, 80.5%)
その他 9.7
(6.9, 40.6%)
1.6
(1.0)
7
(10, -30.0%)
合計 599.4
(706.4, -15.1%)
100
(100)
753
(779, -3.3%)
上段:平成14年度実績 下段:( )内は平成13年度実績および増減率
(注)アジア開発銀行:10.2億円(19件)、世界銀行:2.1億円(6件)、その他:4.1億円(11件)
 
(3)円借款の全コンサルタント契約額と調査対象企業受注額の推移
  平成
4年度
平成
5年度
平成
6年度
平成
7年度
平成
8年度
平成
9年度
平成
10年度
平成
11年度
平成
12年度
平成
13年度
平成
14年度
コンサルタント契約総額 312 385 324 328 521 568 378 411 447 485 379
調査対象企業受注額 236 202 233 197 263 254 239 302 333 318 273
 
(4)コンサルティング業務の技術サービス別受注額および受注件数
技術サービス 受注額(億円) 比率(%) 受注件数
計画調査
(M/P, F/S)
157.5
(179.3, -12.2%)
27.3
(26.3)
215
(228, -5.7%)
基本設計 27.3
(27.8, -1.8%)
4.8
(4.1)
75
(64, 17.2%)
詳細設計 33.5
(45.4, -26.2%)
5.8
(6.7)
36
(39, -7.7%)
設計施工(注) 157.1
(241.9, -35.1%)
27.3
(35.5)
91
(97, -6.2%)
施工監理 121.7
(131.3, -7.3%)
21.1
(19.3)
52
(88, -40.9%)
PM/CM 2.3
(0.2, 1050.0%)
0.4
(0.03)
4
(2, 100.0%)
その他(事前調査、案件形成調査、評価調査等) 76.8
(54.6, 40.7%)
13.3
(8.0)
246
(221, 11.3%)
合計 576.2
(680.5, -15.3%)
100
(100)
719
(739, -2.7%)
上段:平成14年度実績 下段:( )内は平成13年度実績および増減率
(注)詳細設計+施工監理
 
(5)業務分野別受注額および受注件数
業務分野 受注額(億円) 比率(%) 受注件数
地域総合・都市 34.7
(37.9, -8.4%)
5.8
(5.4)
29
(37, -21.6%)
水資源開発 76.8
(149.3, -48.6%)
12.8
(21.1)
119
(131, -9.2%)
運輸・交通 198.3
(242.9, -18.4%)
33.1
(34.4)
198
(180, 10.0%)
設計施工(注) 26.4
(19.6, 34.7%)
4.4
(2.8)
40
(30, 33.3%)
建築・住宅 98.8
(74.2, 33.2%)
16.5
(10.5)
94
(111, -15.3%)
農林水産 59.7
(103.7, -42.4%)
9.9
(14.7)
119
(136, -12, 5%)
産業開発 65.2
(37.6, 73.4%)
10.9
(5.3)
76
(74, 2.7%)
環境 39.5
(41.2, -4.1%)
6.6
(5.8)
78
(80, -2.5%)
合計 599.4
(706.4, -15.1%)
100
(100)
753
(779, -3.3%)
上段:平成14年度実績 下段:( )内は平成13年度実績および増減率
 
(6)地域別受注額および受注件数
地域 受注額(億円) 比率(%) 受注件数
アジア地域 398.4
(442.3, -9.9%)
66.5
(62.6)
467
(469, -0.4%)
アフリカ地域 66.9
(103.6, -35.4%)
11.2
(14.7)
116
(123, -5.7%)
中南米地域 58.5
(93.8, -37.6%)
9.7
(13.3)
62
(97, -36.1%)
中東地域 32.8
(38.2, -14.1%)
5.5
(5.4)
53
(33, 60.6%)
オセアニア地域 3.3
(8.1, -59.3%)
0.6
(1.1)
13
(18, -27.8%)
ヨーロッパ地域 29.3
(6.2, 372.6%)
4.9
(0.9)
22
(17, 29.4%)
NIS諸国 9.8
(12.2, -19.7%)
1.6
(1.7)
15
(11, 36.4%)
北米地域 0.2
(0.1, 100.0%)
0.03
(0.01)
3
(1, 200.0%)
その他(注) 0.2
(1.9, -89.5%)
0.03
(0.3)
2
(10, -80.0%)
合計 599.4
(706.4, -15.1%)
100
(100)
753
(779, -3.3%)
上段:平成14年度実績 下段:( )内は平成13年度実績および増減率
(注)特定の国を対象としないプロジェクト
 
(7)国別受注額および受注件数(受注額上位10ヵ国)
順位 国名 受注額(億円) 比率(%) 受注件数
1 インドネシア(2) 91.7
(81.9, 12.0%)
15.3
(11.6)
71
(88, -19.3%)
2 べトナム(3) 91.7
(68.2, 34.5%)
15.3
(9.7)
46
(48, -4.2%)
3 フィリピン(1) 76.1
(95.6, -20.4%)
12.7
(13.5)
68
(64, 6.3%)
4 中国(4) 22.6
(33.1, -31.7%)
3.8
(4.7)
43
(36, 19.4%)
5 スリランカ(8) 19.2
(22.5, -14.7%)
3.2
(3.2)
17
(19, -10.5%)
6 アフガニスタン(116) 16.0
(0.03, 53233.0%)
2.7
(0.004)
18
(1, 1700.0%)
7 ルーマニア(80) 15.5
(0.8, 1837.5%)
2.6
(0.1)
2
(1, 100.0%)
8 カンボジア(7) 15.3
(23.1, -33.8%)
2.6
(3.3)
20
(27, -25.9%)
9 タイ(9) 11.8
(20.8, -43.3%)
2.0
(2.9)
26
(30, -13.3%)
10 ミャンマー(13) 11.5
(11.0, 4.5%)
1.9
(1.6)
21
(17, 23.5%)
上段:平成14年度実績 下段:( )内は平成13年度実績および増減率
国名横の( )内は平成13年度順位







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