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第3条 適用
 
1 条約において他に別段の明白な規定がない限り、条約は、以下のいずれの船舶にも適用される。
 
(a)締約国旗を掲げる権利を有する船舶
 
(b)締約国旗を掲げる権利はないが、締約国の権限の下に運航される船舶
 
2 条約は、以下のいずれの場合にも適用されない。
 
(a)バラスト水を運搬するように設計又は建造されていない船舶
 
(b)一締約国管轄下水域内を運航する当該締約国の船舶。
 ただし、当該締約国が、当該船舶からのバラスト水排出について、自国、隣接国又は他の国々の環境、人間の健康、財産又は資源への阻害又は傷害となると決定する場合を除く。
 
(c)一締約国の当該除外の公認に従って、当該締約国管轄下水域内を運航する他の締約国の船舶。
 ただし、締約国は、そうすることが、自国、隣接又は他の国々の環境、人間の健康、財産又は資源への阻害又は傷害となるのであれば、公認してはならない。当該公認を付与しないいかなる締約国も、関係船舶の主官庁に対し、関係船舶に条約が適用されることを通知しなければならない。
 
(d)副項(c)に従って除外が許可されない船舶を除いて、一締約国管轄下水域内及び公海のみを運航する船舶。
 ただし、当該締約国が、当該船舶からのバラスト水排出について、隣接又は他の国々の環境、人間の健康、財産又は資源に対し、阻害又は傷害となると決定した場合を除く。
 
(e)締約国が所有もしくは運航するいかなる軍艦、補助艦艇、又はさしあたって政府の非営利サービスに従事している他の船舶。
 しかしながら、各締約国は、自国が所有又は運航する当該船舶の運航又は運航能力を阻害しない適切な方策を採用し、当該船舶が、合理的かつ実行可能である限り、この条約に矛盾しない方法で行動することを確保しなければならない。
 
(f)非排出条件下の、船内密封タンク内恒久的バラスト水
 
3 締約国は、条約の非締約国の船舶について、より有利な措置を与えないことを確保する必要があるならば、当該船舶に対し、この条約要件を適用しなければならない。
 
第4条 船舶バラスト水及び沈殿物を通じた有害水生生物及び病原体移動の管制
 
1 各締約国は、この条約が適用され、かつ、締約国の権限の下に同国の国旗を掲げる権利を有する船舶に対し、附属書内の適用基準及び要件を含み、この条約において明確になっている要件の遵守を要求しなければならない。また、これらの船舶によるこれらの要件遵守確保のための効果的方策を講じなければならない。
 
2 各締約国は、締約国特有の状況及び能力に留意して、締約国の管轄下にある港湾及び水域における、この条約の目的に応じこの目的の達成を促進するバラスト水管理のための国家の政策、戦略及び計画を策定しなければならない。
 
第5条 沈殿物受入施設
 
1 各締約国は、バラストタンクの清掃又は修理作業が発生する、当該締約国に指定された港及びターミナル内に、機関により策定されたガイドラインを考慮した、沈殿物受入のための適切な受入施設を持つことを確保する義務を有する。 当該受入施設については、船舶に不当な遅延を生ずることなく運用でき、また、自国又は他の国々の、環境、人間の健康、財産又は資源に対し、阻害又は傷害とならない安全な沈殿物処理を提供するものでなければならない。
 
2 各締約国は、本条第1項の下に提供される受入施設が不適切なものであることが申し立てられたすべての場合について、他の関係締約国への情報伝達のため、機関に通報しなければならない。
 
第6条 科学的かつ技術的な調査及び監視
 
1 締約国は、単独又は共同で、以下について努力しなければならない。
 
(a)バラスト水管理に関する科学的かつ技術的調査の促進及び助長
 
(b)締約国管理下水域におけるバラスト水管理効果の監視
 
 当該調査及び監視には、効果の観察、測定、サンプリング、評価及び分析並びに科学技術又は方法論の悪影響に加え、船舶バラスト水を通じた移送が確認されている生物及び病原体により生じたいかなる悪影響をも含まなければならない。
 
2 各締約国は、この条約の目的促進のため、以下の関連情報を要請する他の締約国に対し、その入手が可能となるように努めなければならない。
 
(a)バラスト水管理に関連して着手されている、科学及び技術プログラム並びに技術方策
 
(b)監視及び評価プログラムから推測されるバラスト水管理の効果
 
第7条 検査及び証明
 
1 各締約国は、当該締約国旗を掲げるか、又は同国権限の下に運航されていて検査及び証明を条件とする当該締約国の船舶については、附属書の規則に従って検査及び証明することを確保しなければならない。
 
2 第2.3条及び附属書C節に従って追加方策を実施する締約国は、その他の締約国に対し、船舶の追加検査及び証明を要求してはならない。また、当該船舶の主官庁についても、その他の締約国が課す追加検査及び証明の義務を負わされることもない。このような追加方策の立証は、当該追加方策を実施する締約国の責任となり、また、船舶に不当な遅延を生じさせてはならない。
 
第8条 違反
 
1 この条約要件へのいかなる違反も禁止されなければならず、また、違反が行われた場所を問わず、当該船舶に関係する主官庁の法の下に処罰できる措置が確立されなければならない。当該主官庁は、このような違反の情報を入手した場合、その件を調査しなければならず、また、摘発違反について、報告締約国に対し追加証拠の提供を要求することができる。当該主官庁が、当該摘発違反について手続きを進めるのに十分な証拠が入手可能と確信する場合、当該主官庁の法に従って、可及的速やかに手続きをとらなければならない。当該主官庁は、とられたいかなる措置についても、速やかに、違反摘発を報告した締約国にはもちろん、機関にも報告しなければならない。当該主官庁は、当該違反情報を受け取った後1年以内にいかなる措置もとらなかった場合、違反摘発を報告した締約国に対し、その旨を通告しなければならない。
 
2 この条約締約国の管轄内においては、いかなる条約要件への違反も禁止されなければならず、また、締約国の法の下に処罰できる措置が確立されなければならない。当該締約国は、違反発生時にはいつでも、以下のいずれかの措置をとらなければならない。
 
(a)自国法に従い、手続きをとること。
 
(b)違反船舶の主官庁に対し、当該締約国が所有する違反発生の情報及び証拠を提供すること。
 
3 本条に従って、一締約国の法により規定された制裁措置については、この条約への違反をどこにおいても思い止まらせるのに十分な、厳しいものでなければならない。
 
第9条 船舶の臨検
 
1 この条約適用船舶は、その他の締約国のいかなる港又は沖合係留施設においても、当該船舶がこの条約を遵守しているかどうかを決定することを目的とした、当該締約国から正式に権限を与えられた職員による臨検に従うものとする。当該臨検については、本条第2項に規定されているものを除き、以下のものに限られる。
 
(a)有効な証書が船内にあることの確認。当該証書が有効な場合、容認されなければならない。及び
 
(b)バラスト水記録簿の点検。及び/又は
 
(c)機関により策定されたガイドラインに従って実施された船舶バラスト水のサンプリング。しかしながら、サンプル分析に必要な時間を、船舶の運航、移動及び出港に不当な遅延を生ずる根拠として用いてはならない。
 
2 船舶が有効な証書を所持していないか、又は以下のいずれかについて信ずるに足る明確な根拠がある場合には、より詳細な臨検を実施することができる。
 
(a)当該船舶及びその設備が、当該証書の明細に実質的に一致していない場合
 
(b)船長又は乗組員が、バラスト水管理船内手順について熟知していないか、又は当該手順を履行しなかった場合
 
3 この条第2項の事情が発生の下では、臨検実施締約国は、当該船舶が、環境、人間の健康、財産又は資源に対し有害となる脅威なしでバラスト水排出が可能となるまで、バラスト水を排出させないことを確保する措置を講じなければならない。
 
第10条 違反発見及び船舶管制
 
1 締約国は、違反の発見及びこの条約も規定の執行に協力しなければならない。
 
2 船舶がこの条約に違反したことが発見された場合、当該船舶が旗国とする締約国、並びに/あるいは、当該船舶が運航している港又は沖合ターミナルの属する締約国は、第8条に記述の処罰又は第9条に記述の措置に加えて、当該船舶について、警告、拘留又はその締め出しの措置をとることができる。しかしながら、船舶が運航している港又は沖合ターミナルの属する締約国は、当該船舶に対し、バラスト水排出あるいは最も近い利用可能な修理場又は受入施設に向かう目的で、港又は沖合ターミナルを離れる許可を与えることができる。ただし、そうすることが、環境、人間の健康、財産又は資源に対する有害な脅威のないことを条件とする。
 
3 第9(1)(c)条に記述のサンプリング結果、あるいはその他の港又は沖合ターミナルから受け取った支援情報が、該当船舶について、環境、人間の健康、財産又は資源に脅威となっていることを示している場合、当該船舶が運航している水域の締約国は、当該脅威が除去されるまで、当該船舶からのバラスト水排出を禁止することができる。
 
4 また、締約国は、いかなる締約国から、船舶がこの条約の規定に違反して運航中又は運航されたという、十分な証拠を伴った調査要請を受けた場合にも、当該船舶の当該締約国管轄下の港又は沖合ターミナル入港時に、当該船舶を臨検することができる。当該調査報告書は、適切な措置がとれるよう、調査要請国及び関係船主官庁の所管当局に送付されなければならない。







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