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船舶バラスト水及び沈殿物の管制及び管理のための国際条約
 
 
 1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)第196条が、“いずれの国も、自国の管轄又は管理の下における技術の利用に起因する海洋環境の汚染及び海洋環境の特定の部分に重大かつ有害な変化をもたらすおそれのある外来種又は新種の当該部分への導入(意図的であるか否を問わない。)を防止し、軽減し及び規制するために必要なすべての措置をとる。”と規定していることを想起し、
 
 生物多様性に関する条約(CBD)の目的並びに船舶バラスト水経由の有害水生生物及び病原体の移動及び侵入が生物多様性の保存及び持続可能な利用に脅威となっていることに加えて、海洋及び沿岸生態系の保存及び持続可能な利用に関する1998年CBD締約国会議(COP4)の決定IV/5、また、侵入種に関する指針を含む、生態系、生息地又は種に脅威となる異国種に関する2002年CBD締約国会議(COP6)の決定VI/23を銘記し、
 
 1992年国連環境開発会議(UNCED)が、国際海事機関(機関)に対し、バラスト水排出に関する適切な規則採択の審議を要求したことを銘記し、
 
 環境及び開発に係るリオ宣言第15原則に述べられていて、1995年9月15日に機関の海洋環境保護委員会MEPCで採択の決議MEPC67/(37)で引用されている予防的措置に留意し、
 
 2002年の持続可能な開発に関する世界サミットが、その実施計画第34(b)項において、バラスト水内の侵略異国種を取り扱う方策の開発を加速するため、あらゆるレベルでの措置を求めていることに留意し、
 
 船舶からのバラスト水及び沈殿物の無制御排出が、有害水生生物及び病原体の移動をもたらし、環境、公衆衛生、財産又は資源への、危害又は損傷の原因となっていることを意識し、
 
 機関が、有害水生生物及び病原体の移動問題を取り扱うことを目的として採択した1993年のA.774(18)及び1997年のA.868(20)両総会決議を通じて、この問題に重要性を置いていることを認識し、
 
 いくつかの国々において、船舶の入港に伴う有害水生生物及び病原体侵入の危険性の防止、最小化及び最終的除去の観点から、片務的措置がとられていること、また、世界的関心事となっているこの問題が、規則の効果的履行と統一的解釈のためのガイドラインを伴った、地球規模で適用される規則に基づいた措置を要求していることを認識し、
 
 有害水生生物及び病原体移動の継続的な防止及び最小化並びに最終的除去となる、より安全かつ効果的バラスト水管理選択肢開発の継続を強く望み、
 
 船舶バラスト水及び沈殿物の管制及び管理を通じて、有害水生生物及び病原体移動により発生する環境、人間の健康、財産及び資源への危険性について、防止、最小化及び最終的除去することに加え、当該制御による好ましくない側面影響を回避し、関連知識及び技術の開発について奨励することを決意して、
 
 これらの目的が、船舶バラスト水及び沈殿物の管制及び管理のための国際条約の締結により、最良に達成されることを考慮して、
 
 下記のとおり協定した。
 
 
 条約の適用上、別段の明白な規定がない限り、以下のように定義する。
 
1 “主管庁”とは、その権限の下で船舶が運航している国の政府をいう。いずれかの国を旗国とする船舶に関しては、主管庁は、その国の政府とする。沿岸国が天然資源の探査及び開発を目的とした主権的権利を行使する当該沿岸国の海岸に接続する海底及びその下層土の探査及び開発に従事中の浮いているプラットフォームに関しては、浮いている貯蔵設備(FSUs)及び揚荷設備(FPSOs)を含め、主管庁は当該沿岸国の政府とする。
 
2 “バラスト水”とは、船舶の、トリム、傾斜、喫水、安定性又は強度を制御するために、浮遊物質と共に取り入れられた水をいう。
 
3 “バラスト水管理”とは、バラスト水及び沈殿物内の有害水生生物及び病原体の、殺滅、除去、無害化あるいは取り入れ又は排出回避のための、機械的、物理的、化学的及び生物学的プロセスの、単独又は組み合わせのことをいう。
 
4 “証書”とは、国際バラスト水管理証書をいう。
 
5 “委員会”とは、機関の海洋環境保護委員会をいう。
 
6 “条約”とは、船舶バラスト水及び沈殿物の管制及び管理のための国際条約をいう。
 
7 “総トン数”とは、1969年の船舶のトン数の測度に関する国際条約の附属書I又はいかなる後継の条約に記載のトン数測度に従って計算された総トン数をいう。
 
8 “有害水生生物及び病原体”とは、河口を含む海域又は清水路に侵入した場合、環境、人間の健康、財産又は資源に障害となり、生物の多様性を阻害し、あるいは当該区域の有効な利用を妨げる可能性のある水生生物又は病原体をいう。
 
9 “機関”とは、国際海事機関(IMO)をいう。
 
10 “事務局長”とは、機関の事務局長をいう。
 
11 “沈殿物”とは、船舶内のバラスト水から沈殿したものをいう。
 
12 “船舶”とは、潜水艦、floating craft、浮いているプラットフォーム、FSUs及びFPSOsを含む、海洋環境で運航されているあらゆるタイプのものをいう。
 
 
1 船舶バラスト水及び沈殿物の管制及び管理を通じ、有害水生生物及び病原体の移動を防止、最小化及び最終的除去するため、条約締約国は、条約及び関連附属書の規定に十分かつ完全な効力を与える義務を負う。
 
2 附属書は、条約に不可欠な部分を形成している。他に別段の明白な規定がない限り、条約の引用には、附属書の引用も含まれる。
 
3 条約においては、締約国が、国際法に矛盾せず、他の締約国と単独又は共同で、船舶バラスト水及び沈殿物の規制及び管理を通じ、有害水生生物及び病原体の移動を防止、減少又は除去することについて、より厳しい方策をとることを妨げるものと解釈すべきものは何もない。
 
4 締約国は、条約の効果的な履行、遵守及び施行のための協力に努力しなければならない。
 
5 締約国は、船舶バラスト水及び沈殿物の規制及び管理を通じ、有害水生生物及び病原体の移動を防止、減少及び最終的除去するための、バラスト水管理及び基準の作成の続行を促進する義務を負う。
 
6 条約に措置を講ずる締約国は、自国又は他の国々の、環境、人間の健康、財産又は資源に対し、阻害又は傷害とならないよう努力しなければならない。
 
7 締約国は、この条約への応諾のために用いられるバラスト水管理の手法については、自国又は他の国々の、環境、人間の健康、財産又は資源に対する防止よりも大きな危害とならないことを確保しなければならない。
 
8 締約国は、自国旗を掲げる権利を有し、かつ、条約が適用される船舶に対し、実行可能な限り、機関により策定された勧告の適切な実施促進を含め、潜在的に有害な、水生生物及び病原体並びに当該生物を包含する沈殿物を伴ったバラスト水の取入れを回避するよう奨励しなければならない。
 
9 締約国は、機関の後援の下に、バラスト水管理に関する国家管轄限界を越えた区域における、敏感、脆弱又は危険の迫っている海洋生態系及び生物多様性への脅威及び危険への対処のために努力しなければならない。







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