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(3)水生生物に対する処理効果
 
 
 処理効果は、漲水時処理、排水時処理で当然ながら得られている。 さらに、正常な生物の減少は、漲水時の処理で殺滅されなくても、大きなダメージを受けて航海中に死滅及び暗黒環境下で航海中に自然死滅することが判った。 その結果、漲水時処理、排水時処理及び漲・排水時処理のすべてのケースにおいて、生物の死骸を摂食する原生動物が増殖した場合を除けば、80μm以上及び80μm未満10μm以上のサイズ区分ともに90%以上の処理効果が得られた。
 実験を実施した時点における条約の規則D-2基準(日本提案)は、80μm以上の生物の排水時の濃度が100個/m3未満、80μm未満10μm以上の生物の排水時の濃度が100個/ml未満であった。 この基準に対する適合状況は、以下のようにまとめられる。 80μm未満10μm以上の生物への基準適合率が100%であったことに対して、80μm以上の生物への基準適合率が50%〜67%にとどまったのは、その単位が1,000,000倍大きい容量のバラスト水を対象としているため、80μm以上の生物に対する基準は、より厳しいものであると解釈できる。
 
<80μm以上の生物に対する基準適合状況>
漲水時と排水時の2回処理のケース:1回適合/2実験(適合率50%)
漲水時処理(排水時は未処理)のケース:1回適合/2実験(適合率50%)
排水時処理のケース:4回適合/6実験(適合率67%)
 
<80μm未満10μm以上の生物に対する基準適合状況>
漲水時と排水時の2回処理のケース:2回適合/2実験(適合率100%)
漲水時処理(排水時は未処理)のケース:2回適合/2実験(適合率100%)
排水時処理のケース:6回適合/6実験(適合率100%)
 
(漲水時に処理し、排水港で未処理排出ケースも含む)
 
 表II.2.3.4-8及び図2.3.4-7には、第1航海のシアトル(漲水時処理)から東京(排水時処理)と第2航海のシアトル(漲水時処理)から名古屋(排水時処理)における生物サイズ別の実験結果を示した。
 漲水時処理の結果では、80μm以上の生物で約60%〜70%、80μm未満10μm以上の生物で約36%〜75%の殺滅率にとどまっている。 ただし、その後の航海を経て、排水時処理前では、正常な生物が80μm以上サイズ区分で94%以上、80μm未満10μm以上のサイズ区分で約62%〜93%に減少した。 この減少は、暗黒環境であるバラストタンク内で自然に死滅する生物がいたことと、漲水時処理直後では殺滅されなかったが、処理によってダメージを受けた生物が航海中に死滅するためと考えられる。 なお、第1航海の東京排水時処理前の減少率が、80μm未満10μm以上のサイズ区分で62.4%(表II.2.3.4-8(1)と図2.3.4-7(1))と比較的低率であったのは、漲水時処理等によって死滅した生物の死骸を摂食して生活する原生動物が増殖したことが考えられる。 しかし、排水時の再処理によって、正常な生物はさらに減少し、80μm以上のサイズ区分では約98%以上、80μm未満10μm以上のサイズ区分でも78.6%(原生動物の影響有り)であり、2つのサイズ区分の生物の平均死滅率は99.6%と高い減少率を記録している。
 
表II.2.3.4-8(1)漲水時と排水時の2回処理したケースにおけるサイズ別生物数の変化
(第1航海:シアトル→東京)
実験港 Seattle Tokyo
実験日 Dec.6 Dec.15
分析検体数 3 3
サイズ区分(単位)\試料名 シアトル原水 シアトル漲水時処理後 東京排水時処理前 東京排水時処理後
80μm以上(inds/m3 4933 1467 <100 <100
80μm未満−10μm以上
(inds/ml)
0.661 0.154 0.248 0.142
 
図II.2.3.4-7(1)漲水時と排水時の2回処理したケースにおける
サイズ別生物数の変化
(第1航海:シアトル→東京)
 
80μm以上(inds/m3
 
 
80μm未満−10μm以上(inds/ml)
注)図中の数字は、原水に対する減少率
 
 
表II.2.3.4-8(2)漲水時と排水時の2回処理したケースにおけるサイズ別生物数の変化
(第2航海:シアトル→名古屋)
実験港 Seattle Nagoya
実験日 Dec.6 Dec.15
分析検体数 3 3
サイズ区分(単位)\試料名 シアトル原水 シアトル漲水時処理後 名古屋排水時処理前 名古屋排水時処理後
80μm以上(inds/m3 5850 2300 350 100
80μm未満−10μm以上
(inds/ml)
1.433 0.909 0.101 0.006
 
図II.2.3.4-7(2)漲水時と排水時の2回処理したケースにおける
サイズ別生物数の変化
(第2航海:シアトル→名古屋)
 
80μm以上(inds/m3
 
 
80μm未満−10μm以上(inds/ml)
注)図中の数字は、原水に対する減少率







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