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2)吸光光度計(UV254,480,630,645,663,665,750)による測定結果
 
 吸光光度計による観測では、漲水時処理による生物に対する殺滅及びダメージ効果が、その後の航海中における生物のバラストタンク底層への沈降を促すことが明らかになった。 つまり、漲水時処理直後では殺滅されなかった生物が、処理時に受けたダメージによって航海中に死滅し沈降すると考えられる。 また処理は、各種UV吸光度が低下する傾向も見られた。 これは、スペシャルパイプで処理することによって、有機物及び植物プランクトンの色素の分解測度が促進されていることが考えられる。
 なお、太平洋上でのバラスト水交換によっても、各種UV吸光度が低下していた。 これは、洋上でのバラスト水交換によって、生物又は生物の死骸等の有機物、特に沈降した生物の死骸等の有機物が減少したことを示している。
 
(漲水時に処理し、排水港で未処理排出ケースも含む)
 
 表II.2.3.4-5及び図II.2.3.4-3に、第1航海のシアトル(漲水時処理)から東京(排水時処理)と第2航海のシアトル(漲水時処理)から名古屋(排水時処理)における各種UV吸光度の変化を示した。 なお、複数回測定(初期、中期、末期等)している場合は、それらの平均値を表示している。
 各種UV吸光度は、すべてのケースで同様な変化を示している。 その変化様式は、(1)水質メーターによる測定結果における濁度の変化と同様に、排水港において高く、処理後には多少低下する傾向であった。 つまり、航海中に沈降した濁り物質には生物及び生物起源(死骸等)が多数存在していることを示している。 UV254の上昇は、排水バラスト水中にこれら有機物が多いことを表し、他のUV吸光度の上昇は、それら有機物の中に色素をもった植物プランクトンも多く存在することを反映した結果である。 なお、名古屋港で観測された処理後の低下(表II.2.3.4-5(2)と図II.2.3.4-3(2))は、スペシャルパイプがこれら有機物及び植物プランクトンの色素を粉砕し、各種UV吸光度を減少させる効果があることを示している。
 
表II.2.3.4-5(1)漲水時と排水時の2回処理したケースのUV吸光度測定結果
(第1航海:シアトル→東京)
実験日
時刻
実験港
対象タンク
2003/12/6
10:20
Seattle
No.2WBT(S)
2003/12/15
9:00
Tokyo
No.2WBT(S)
シアトル原水 シアトル漲水時処理後 東京排水排水時処理前 東京排水時処理後
UV254nm 0.020 0.018 0.023 0.025
480 0.003 0.001 0.003 0.004
630 0.003 0.001 0.001 0.003
645 0.003 0.001 0.001 0.003
663 0.003 0.001 0.002 0.003
665 0.003 0.002 0.002 0.003
750 0.002 0.001 0.002 0.003
注)表中のデータは、3回測定の平均値。
 
図II.2.3.4-3(1)
漲水時と排水時の2回処理したケースのUV吸光度測定結果
(第1航海:シアトル→東京)-1
 
第1航海,シアトル−東京 UV254nmの吸光度
 
 
第1航海,シアトル−東京 UV480nmの吸光度
注)表中のデータは、3回測定の平均値。
 
図II.2.3.4-3(1)
漲水時と排水時の2回処理したケースのUV吸光度測定結果
(第1航海:シアトル→東京)-2
 
第1航海,シアトル−東京 UV630nmの吸光度
 
 
第1航海,シアトル−東京 UV645nmの吸光度
 
 
第1航海,シアトル−東京 UV663nmの吸光度
注)図中のデータは、3回測定の平均値。
 
図II.2.3.4-3(1)
漲水時と排水時の2回処理したケースのUV吸光度測定結果
(第1航海:シアトル→東京)-3
 
第1航海,シアトル−東京 UV665nmの吸光度
 
 
第1航海,シアトル−東京 UV750nmの吸光度
注)図中のデータは、3回測定の平均値。







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