2.2 荒川通航船社へのヒアリング
(1)ヒアリング先とヒアリングの内容について
ヒアリングは、対象河川を実際に航行している企業3社を対象として、表−2.2.1に示す内容について行った。
表−2.2.1 ヒアリングの内容について
質問要旨 |
質問内容 |
1. 小冊子の内容について |
・記載している情報の過不足について |
・ランドマークの適正さについて |
・障害物の適正さについて |
・浅瀬について |
・船舶運航において、浅瀬以外の留意点の有無及び内容 |
2. 指示及び緊急時の対応について |
・船舶運航者に対する指示事項 |
・緊急時の対応方法等の有無及び内容 (管理者用マニュアル的なもの) |
・河川を航海する際に、荷主側からの指示事項の有無及び内容 |
・震災時・緊急時の対応(体制・連絡方法・指揮官等)地震の際、(救援船として)船を出す予定の有無 |
3. モーダルシフトについて |
・実際の運航ルート(出発地→目的地) |
・輸送コスト(1航海当たり) |
・主要な貨物品目及び1航海当たりの量 |
・船舶利用のメリット |
・船舶利用のデメリット(又は今後の課題) |
・水上輸送と陸上輸送の比較を「コスト」、「時間」等の視点で行ったことの有無 |
4. その他 |
・河川を航行する際に考慮する事項(潮汐、大雨等の影響)及び情報収集手段 |
・海上航行と河川航行における所管・法体系の違いにより、経営面・船舶運航面で不都合となっている事項の有無及び内容 |
・危険物積載船の安全航行に関する事例、社内安全対策等の内容 |
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(2)ヒアリング結果
ヒアリング結果の概要は、表−2.2.2に示すとおりである。各社ごとの詳細については表−2.2.3に示すとおりである。
ヒアリングの結果より、本事業で作成した小冊子をさらに有効な資料とするためには、荒川、隅田川と接続する他の河川についても整理することが必要であるとの意見を得た。特に、船舶が通航している中川、新河岸川、大場川や、水深は浅いが舟運にとって大きな可能性を秘めている江戸川について、今後の調査研究対象とすることが望ましい。
船舶の運航管理者から船舶への指示事項等については、時間調整の指示や天候による運航の可否の指示が特に重要である。また、船同士や船上から陸上への連絡は、携帯電話が活用されている。
表−2.2.2 ヒアリング結果の概要
質問要旨 |
質問内容 |
回答の概要 |
1. 小冊子の内容について |
記載している情報の過不足について |
・荒川、隅田川においては非常に有効な資料である。 ・対象エリアを広げた方がさらに有効な資料となる。 |
ランドマークの適正さについて |
・特になし |
障害物の適正さについて |
・特になし |
浅瀬について |
・特になし ・C社独自に整理している通航方法がある |
船舶運航において、浅瀬以外の留意点の有無及び内容 |
・大雨による水流の影響を充分考慮する必要がある。 ・荒川→新岩淵水門→新河岸川へのアクセスは非常に難しい。 |
2. 指示及び緊急時の対応について |
船舶運航者に対する指示事項 |
・水深が変化するので運航時間に配慮する。 ・夜間航行はしない。 ・海上と河川では風の影響が全く異なることに留意する。 ・C社では毎月船員の教育を行っている。 |
緊急時の対応方法等の有無及び内容 (管理者用マニュアル的なもの) |
・異常があった場合はすぐに連絡をする。 ・連絡は携帯電話で行う。 |
河川を航海する際に、荷主側からの指示事項の有無及び内容 |
・特になし |
震災時・緊急時の対応(体制・連絡方法・指揮官等)地震の際、(救援船として)船を出す予定の有無 |
・緊急時は携帯電話で連絡をとる。 ・救援船として船を出す協定は締結してないので、震災時において船は出せない。 |
3. モーダルシフトについて |
実際の運航ルート(出発地→目的地) |
・君津港→東京湾→荒川→新河岸川→目的地(36海里) ・川崎→東京湾→荒川→岩淵水門→新河岸川→目的地 ・川崎→東京湾→荒川→中川→目的地 |
輸送コスト(1航海当たり) |
・具体的には算出していない |
主要な貨物品目及び1航海当たりの量 |
・1航海に220〜320tの輸送が可能である。 ・主要な品目は、ガソリン、灯油、丸鋼である |
船舶利用のメリット |
・時間に正確である。 ・輸送能力が高く、一度に大量の貨物を輸送できる。 |
船舶利用のデメリット(又は今後の課題) |
・気象や海象の影響を受けやすい。 ・ドアツードアにはならず、積み替えをする必要がある。 |
水上輸送と陸上輸送の比較を「コスト」、「時間」等の視点で行ったことの有無 |
・行ったことはない。 |
4. その他 |
河川を航行する際に考慮する事項(潮汐、大雨等の影響)及び情報収集手段 |
・潮汐は常に船上から目視にて調査する。 ・大雨の際は、水門の閉鎖状況を事前に確認する必要がある。 |
海上航行と河川航行における所管・法体系の違いにより、経営面・船舶運航面で不都合となっている事項の有無及び内容 |
・東京都が指令を出さなければ、隅田川を管轄している臨港消防署が発動できない。 ・臨港消防署の船舶に災害時に必要な資材がある。 |
危険物積載船の安全航行に関する事例、社内安全対策等の内容 |
・河川通航方法及び留意事項、取り決めに関する社内資料を入手し、内容については小冊子に反映した。 |
その他、河川を航行する際に気づいたこと |
・リバーステーションを有効に活用することが今後の課題である。 ・河川は船舶の交通管制をする箇所がない。 ・夜間照明がなく、夜間航行は危険である。 ・ブイが少なく、浅瀬がわかりにくく、経験者でないと航行するのは難しい。 |
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表−2.2.3 A社及びB社のヒアリング結果詳細(1/3)
1/3 |
ヒアリング先 |
A社、B社 |
ヒアリング実施日時 |
平成15年12月8日午後1時〜2時30分 |
ヒアリング項目及びヒアリング結果 |
1. 小冊子の内容について |
(1)記載している情報の過不足について
・荒川で最も低い橋を表示してもらいたい。(常磐線鉄橋AP+5.90m) ・岩淵水門は警戒水位のAP+4.00mで閉鎖することを記載していただきたい。 (過去に2回閉鎖したことがあり、閉鎖する際にアナウンスはかからない。荒川水門のホームページに記載されているようだが、船舶からわからないため、船舶運航者が携帯電話等で、岩淵水門に直接確認をとっている状況である。連絡先:03-3901-4240) ・新河岸川も検討の範囲に入れて欲しい。目的地が新河岸川流域にあるため、必ず新河岸川は通航する。新河岸川の方が水深が浅い、可航幅が狭い等、航行が難しい箇所が多い。 |
(2)ランドマークの適正さについて
・特になし。 |
(3)障害物の適正さについて
・特になし |
(4)浅瀬について
・特になし |
(5)船舶運航において、浅瀬以外の留意点の有無及び内容
(1)橋桁の高さ ・橋桁の塗装工事等を行う場合に足場が組まれており、通常よりも1mくらい低くなる。 ・千住大橋は橋桁より低いガーターがあり、斜めに橋をくぐらないと危険である。 ・新河岸川で最も低い橋梁は「中の橋」AP+4.93m (2)河川工事について ・新河岸川では、浚渫が頻繁に行われていることから、土砂が堆積しやすいことがわかる。その工事の影響で可航幅が狭くなる時が多い。 (3)水流 ・大雨による水流の影響で運航不可となることがある。ただし、運航不可と判断する基準は特になく、経験による判断のみである。1〜1.5日ほど雨が降ると水かさが増し、2〜3日は航行に支障をきたす。 (4)プレジャーボートについて ・荒川の中流〜下流は夏季にプレジャーボートや水上スキーの利用が増え、注意が必要である。 |
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表−2.2.3 A社及びB社のヒアリング結果詳細(2/3)
2/3 |
ヒアリング先 |
A社、B社 |
ヒアリング項目及びヒアリング結果 |
2. 指示事項について |
(1)船舶運航者に対する指示事項
(1)運航時間の調整について
・新河岸川往航時は船舶の喫水と河川の水深の関係からAP+1.3m以上の上げ潮で運航するように、運航時間を調整している。特に岩淵水門を1.3m以上で通過することに配慮している。
(2)運航時間の指示
・河川航行は薄暮までとし、夜間航行はしない。概ね16時〜16時30分までとしている。
(3)風速に係わる注意事項
・海上では台船は風速10m以上、自航船は風速12m以上で航行させないようにしている。 |
(2)緊急時の対応方法等の有無及び内容(管理者マニュアル的なもの)
・携帯電話及びVHF(無線)を利用し、異常があった場合はすぐに連絡を入れるように指示している。
・君津港出港約30分後に、現在の地点、目的地の予想到着時間を連絡することとなっている。
・どこかのポイントごとに連絡を入れるような体制は取っていない。 |
(3)河川を航行する際に、荷主側(運航者)からの指示事項の有無及び内容
・運航者からの指示事項は特にない。
・運航前に、積荷の点検、出港時間、航海の途中における気象の変化やトラブル等がないかを確認している。また、入港着岸予定時間等の連絡を入れている。 |
(4)震災時・緊急時の対応(体制、連絡方法、指揮官等)
・災害・事故(油流出を含む)発生時の緊急連絡図があり、それに沿って連絡を取り合うようにしている。 |
(5)震災の際(救援船として)船を出す予定の有無
・こちらから震災時に船舶を運航することは、東京まで遠いこともあり、厳しいと思われる。 |
3. モーダルシフトについて |
(1)実際の運航ルート(出発地→目的地)について
・別紙の河川図に示すとおりである。
・運航ルートは君津港→東京湾→荒川→新河岸川→東京製造所までで約36海里。 |
(2)それに関わるコストを教えて下さい |
(3)主要な貨物物品
・主要貨物は鋼材(丸鋼)である。
・1航海当たりの輸送可能量は、220t、240t、320tと大別して3種類がある。 |
(4)船舶を使うメリットは何ですか?
・輸送能力が高く、一度に大量の貨物を輸送できる。
・輸送コストを安くできる。 |
(5)船舶を使うデメリットは何ですか?
・気象・海象の影響を受けやすい。 |
(6)水上輸送と陸上輸送の比較を「コスト」・「時間」等の視点で行ったことがありますか?
・特になし |
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表−2.2.3 A社及びB社のヒアリング結果詳細(3/3)
3/3 |
ヒアリング先 |
A社、B社 |
ヒアリング項目及びヒアリング結果 |
4. その他 |
(1)河川を航行する際に考慮する事項(潮汐、大雨等の影響)及び情報収集手段 ・潮汐は、常に船上から目視にて調査をしている。 ・荒川は、水深について問題ないが、新河岸川は浅いところがあり、特に注意が必要となる。そのため、新河岸川で特に浅いと考えられる箇所については、独自に水深を調査した。 ・過去に大雨によって2回岩淵水門が閉鎖したことがあった。閉鎖されてもアナウンスがないため、大雨の時には、常にこちらから電話連絡で水門の状況を確認している。 |
(2)海上航行と河川航行における所管・法体系の違いにより、経営面・船舶運航面で不都合となっている事項の有無及び内容 ・海上航行:強風による運航中止を風速12m/s、波高1mとしている。 ・河川航行:東京湾が強風でも、河川は運航中止になることがない。河川は風の影響を受けにくい。しかし、河川は大雨の影響を受けやすい。上流から雨水が流入するため、増水し、川の流れが早くなることから、河川航行にとって危険な状況となる。 ・以上より、気象の理由により、航海回転率が減少し、経営面に影響を与える。 |
(3)その他、河川を航行する際に気づいたこと ・河川に関しては、船舶の交通管制をする箇所がない。 ・河川を通航する際に特に届け出は必要ない。 ・ブイが少なく、浅瀬が非常にわかりにくい。経験者でないと航行するのは厳しい状況と思われる。 ・設置するなら、ブイより灯標が良い。 ・夜間照明がないため、夜間航行は非常に難しく、危険である。 |
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表−2.2.3 C社のヒアリング結果詳細(1/3)
1/3 |
ヒアリング先 |
C社 |
ヒアリング実施日時 |
平成15年12月9日午後1時20分〜3時30分 |
ヒアリング項目及びヒアリング結果 |
1. 小冊子の内容について |
(1)記載している情報の過不足について ・荒川、隅田川については、小冊子の情報が非常に有効と思われる。 ・中川、新河岸川も通航するので、エリアの範囲を広げていただきたい。 ・江戸川は川幅も十分にあり、舟運で活用できれば非常に有効であるが、浅い箇所が多いことから、舟運には向いていないと思われる。 |
(2)ランドマークの適正さについて ・特になし。 |
(3)障害物の適正さについて ・特になし。 |
(4)浅瀬について ・特になし |
(5)船舶運航において、浅瀬以外の留意点の有無及び内容 ・荒川、隅田川よりも中川と新河岸川の方が航行するのが難しく、問題点も多い。 ・中川は汐留橋まで、新河岸川は志村橋まで航行している。 ・主な問題点は以下のとおりである。 [中川及び新河岸川] 水深が浅い箇所がある。桁下高さが低い橋梁がある。 [中川のみ] カーブが急な箇所がある。 ・中川では、中川橋の桁下高さが低く、通航に支障をきたしていたが、現在、架け替え工事をしている。 ・新河岸川では、荒川から岩淵水門を通り、新河岸川へアクセスする際の急カーブが非常に難しい。当社の船舶にはバウスラスタがあるため、比較的容易に操船できるが、一般の船舶や航行経験がない場合は、非常に難しいポイントである。 ・当社で使用している船舶の満載喫水については、余裕を考慮しても水深が3.0mあれば良い。 ・荒川、隅田川、新河岸川、中川について、当社が航行するルートに関する航行の際に気を付けるべき点を文章にて整理して保管している。 |
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表−2.2.3 C社のヒアリング結果詳細(2/3)
2/3 |
ヒアリング先 |
C社 |
ヒアリング項目及びヒアリング結果 |
2. 指示事項について |
(1)船舶運航者に対する指示事項
・船舶運航者に対しては、安全に対する認識を高めるために毎月1回(25日頃)、運航者全員を集めて教育を実施している。(安全管理システム) |
(2)緊急時の対応方法等の有無及び内容(管理者マニュアル的なもの)
・緊急時の連絡は携帯電話で取り合うようにしている。 |
(3)河川を航行する際に、荷主側(運航者)からの指示事項の有無及び内容
・特になし。 |
(4)震災時・緊急時の対応(体制、連絡方法、指揮官等)
・緊急時の連絡は携帯電話で取り合うようにしている。 |
(5)震災の際(救援船として)船を出す予定の有無
・全国内航タンカー海運組合と地方自治体では、協定がないため、緊急時に船舶を出すことは現状では厳しい。 |
3. モーダルシフトについて |
(1)実際の運航ルート(出発地→目的地)について
・川崎→東京湾→荒川→岩淵水門→住商浮間 ・川崎→東京湾→荒川→中川→三愛石油 |
(2)それに関わるコストを教えて下さい |
(3)主要な貨物物品
・ガソリン、灯油。 |
(4)船舶を使うメリットは何ですか?
・一度に大量輸送をすることが可能である。
・陸送の場合は、渋滞等の要因で日によって所要時間が異なるが、船舶の場合は所要時間が異なることが非常に少ない。 |
(5)船舶を使うデメリットは何ですか?
・天候の影響を受けやすい。
・陸送の場合は、ドアツードアとなるため、荷物の積み替えがないが、水上輸送の場合は積み替える必要がある。 |
(6)水上輸送と陸上輸送の比較を「コスト」・「時間」等の視点で行ったことがありますか?
・当社においては、特にコストの比較を行ったことはない。
・時間に関しては、水上輸送の方が常に定時的な輸送が可能であり、時間に正確である。 |
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表−2.2.3 C社のヒアリング結果詳細(3/3)
3/3 |
ヒアリング先 |
C社 |
ヒアリング項目及びヒアリング結果 |
4. その他 |
(1)河川を航行する際に考慮する事項(潮汐、大雨等の影響)及び情報収集手段 ・大雨の際は、電話にて連絡をし、航行する前に状況を確認している。 ・緊急時は、荒川下流河川事務所、荒川上流河川事務所、中川下流出張所(江戸川河川事務所)、東京都に連絡を入れる。 |
(2)海上航行と河川航行における所管・法体系の違いにより、経営面・船舶運航面で不都合となっている事項の有無及び内容 ・東京都の指令により臨港消防署が現場で動く体制を取っており、緊急事態が発生した際には、臨港消防署と連携をとることとしている。 ・東京都が指令を出さないと、臨港消防署が発動できない。 ・臨港消防署が岩淵までを管轄しており、災害時に必要な資材等が臨港消防署の船舶に積んである。 |
(3)危険物積載船の安全航行に関する事例、社内安全対策等の内容 ・河川通航方法及び留意事項、取り決めに関する社内資料を入手し、内容については小冊子に反映した。 |
(4)その他、河川を航行する際に気づいたこと ・リバーステーションを有効に活用することが今後の課題と考えられる。 |
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