日本財団 図書館


3 生活ホーム・グループホームについて
(1)制度
 千葉県内の生活ホーム、グループホームの運営主体は、生活ホームが社会福祉法人、NPO法人、任意団体、個人と多様化しているのに対して、グループホームは社会福祉法人とNPO法人となっている。これは両者の設置基準の差異によってもたらされている。グループホームの運営主体は法人(社会福祉法人、財団法人、社団法人等)とされ、支援体制の確保(知的障害者援護施設等との連携その他の適切な支援体制の確保)、入居者定員4人以上といった基準を設けているのに対して、生活ホームの運営主体は知的障害者育成会(手をつなぐ親の会)か同会の推薦を受けた者について認め、4人未満の定員でも開設が可能で、支援体制の整備の規定はない。
 このように千葉県には、グループホームと類似した設置基準の異なる生活ホーム制度が併存しており、知的障害者の生活の場の拡大、普及・定着に貢献している。
 
問題点・課題
○千葉県には、生活ホームとグループホームの類似した制度が併存している
○制度の併存により、知的障害者の生活の場が拡充されている
 
(2)体制
 世話人は、入居者への生活支援・援助など、生活ホーム・グループホームの体制及び運営に大きく関わっている。
 世話人は40代、50代の人が中心で、主として女性によって担われている。配置については、ほとんどのホームでは1名の配置となっており、1人の世話人が、生活ホームでは平均3〜4人、グループホームでは4〜5人の入居者に対応している。能力・資質については、世話人を社会的に養成する体制がないことから、多くの世話人は、現在の生活ホーム・グループホームのなかで、試行錯誤のなかから経験や専門性を獲得している。このため、運営上の問題点として、「専門知識・技術が不足している」ことを生活ホームでは約5割、グループホームでは約4割の世話人があげている。世話人の業務内容については、食事の提供をはじめ、入居者生活全般に係る支援・援助をしている世話人が多くなっているが、なかには、早朝(午前4〜5時頃)から深夜まで世話人としての業務に関わっている人がみられる。日中は世話人の勤務時間外(自由時間)とされているものの、公私の時間区分は必ずしも十分に図れていない現状がある。特に運営主体の代表が世話人を兼務している場合などは、業務の内容が多岐にわたり、十分な休息や休暇が確保できていない人も多い。
 バックアップ施設等支援体制を確保していない、あるいはバックアップ施設等から十分な支援を受けていない生活ホーム・グループホームでは、世話人の代替職員を確保することが困難なため、土日の運営や世話人の定期休暇、長期休暇の取得を困難にしている。
 また、生活ホーム、グループホームの運営は、原則として公的補助等で賄われ、人件費等の職員に関わる経費はそのなかで手当てすることになるため、世話人の給与については、定期昇給や経験・能力に応じた支給加算が困難な状況にある。福利厚生面では、社会福祉法人以外の運営者が設置した生活ホーム、グループホームでは、世話人等の職員は社会福祉施設職員等退職手当共済へ加入できないなど、社会保険等の福利厚生が十分に用意されていない生活ホーム、グループホームも存在している。
 
問題点・課題
○経験や専門性の確保について、多くの世話人が運営上の問題点と考えている
○世話人の業務は、時間の拘束性が強く、特に運営者が世話人を兼務しているところでは、世話人の業務上の身体的・精神的な負担は大きい
○バックアップ施設をもたないところでは、世話人の代替職員の確保が困難で、世話人の定期休暇・長期休暇の取得を困難にしている
○生活ホーム・グループホームの財務会計規模が小さく、収入は限定的であるため、世話人の給与、福利厚生の確保に支障が生じている
 
(3)運営
 生活ホーム・グループホームでは、入居者の家庭への帰省などから、毎土日の業務を休業しているところが全体の2割程度を占めている。また、隔週で休業しているところは約4%を占めている。
 居室については、グループホームの個室率が97%とほぼ完全個室が達成された状態にあるのに対して、生活ホームでは67%にとどまっている。個室が確保されない理由としては、個人の住宅を開放したホームでは、同じ間取りの居室が確保しづらいこと、男女同居型のホームでは便宜的に2人部屋を設置することがあること、入居者の属性や生活自立度によって、個室よりも2人部屋のほうが適切な場合があること、などがあった。
 また、日常生活の規則や施設設備等の利用については、グループホームでは可能な限り管理性を排除することが求められ、生活ホームでは生活に必要な一定の指導性が認められている。日常生活の規則(外出、外泊、外食、来客等)、設備利用の規則、個人家財の持ち込みや利用の規則等については、生活ホームとグループホーム間では、大きな違いは認められないが、入居者の日常生活等を規則等で厳しく管理している生活ホーム、グループホームも少ないながらも存在している。
 
問題点・課題
○土日を休業しているホームが全体の2割程度を占め、多くが生活ホームで占められている
○個室の完備率が生活ホームでは67%と低い割合になっている
○入居者に対する規則で、厳しい管理をしている生活ホーム、グループホームが存在している
4 入居者について
(1)属性
 生活ホーム、グループホームの入居者の平均年齢は30代で、なかには60代の高齢者も入居しており、特に生活ホームでは40代以上の入居者が4割以上を占めている。若い10〜30代の入居者については、仕事、結婚など今後の生活意向に積極的な意思を有する人が多いが、中高年の入居者については、生活の安定・充実、老後の問題など、若い年代の入居者と生活意向の違いが大きい。
 また、生活ホーム入居者の14%、グループホーム入居者の16%が家族不在で、ホーム以外に身寄りのない状態にある。生活ホーム、グループホームのなかには土曜・日曜は入居者を家族のもとに帰省させているホームが存在しているが、こうした身寄りのない入居者の土曜・日曜の生活の場の確保が問題となっている。
 障害の程度(療育手帳の障害程度区分)の状況は、(A)からB2まであらゆる区分の人が入居しており、重度の知的障害者の生活の場として、生活ホーム、グループホームがすでに機能している現状がある。障害の程度によって、世話人等は多様な対応を求められる現状にあり、対応上、専門知識が必要となる場合も生じている。また、身体障害等の重複的な障害を有する人も入居しており、施設・設備の仕様によっては、生活上の支障が生じている入居者や生活習慣病等に罹患し、医療管理、服薬が必要な入居者もいる。
 
問題点・課題
○入居者の年齢は多年代化しており、生活意識、意向が異なる
○入居者の1割強が、身寄りのない(家族がいない)状態にある
○障害の程度もさまざまで、重複障害をもつ人や生活習慣病に罹患している人がいる
 
(2)生活自立度
 入居者の障害程度(療育手帳の障害区分程度)をみると、重度の人も入居しているが、在宅者や施設入所者と比較して、入居者の生活自立度は高い状況にあり、一次活動に限らず、二次活動、三次活動も人の介助なしに自立して行える項目が多くなっている。
 生活ホーム、グループホームの業務では、食事の提供は行われることになっているが、その他の生活支援については、必ずしも明確となっていない。しかし、入居者の生活活動のうち、食事の支度(調理等)、金銭・物品管理、健康管理など、生活の自立度が極めて低い項目があり、こうした支援がさらに求められている。
 特に中高年の入居者については、現に生活習慣病等の慢性疾患を罹患し、継続的な医療管理、服薬が必要となっている人もいることから、こうした面での支援は重要な問題となっている。また、一定の生活自立度が確保されると、職場や通所先など生活ホーム、グループホーム以外での活動や他者のかかわりが多くなるが、その場合、金銭管理・物品管理の必要性が高くなる。
 日中の通勤・通所の場が確保されていない入居者も生活ホームの5%、グループホームの3%を占めており、こうした人の通勤・通所先の確保も問題となっているが、生活ホーム、グループホームの世話人が対応することが困難な状況にある。
 
問題点・課題
○入居者の生活自立度は、在宅者や施設入所者よりも確保されている現状にある
○生活活動のうち、食事の支度、健康管理など、知的障害者の自立度が低い生活項目があり、支援が求められる状況にある
○通勤先、通所先が確保されていない入居者がいる
 
(3)その他
 入居者が現在の生活ホーム、グループホームを選択した理由をみると、「自分で決めた」人が約3割程度を占めているが、その他では「施設の職員にすすめられて」が約3割と高くなっている。これに対して「市町村、町役場などの行政職員にすすめられて」は1割未満の水準となっている。
 生活上の満足度は、生活ホーム、グループホームともに「生活しやすい」と回答した人が多く、一定の評価を得ているが、「生活しづらい」と回答した人もみられる。
 居室の評価については、グループホームでは半数近くの人が「広い」と評価しているが、生活ホームでは3割程度の人しか「広い」と評価しておらず、個室率の完備状況からみると、居室を2人以上で利用している利用者は、個室の満足度が低いことが考えられる。
 
問題点・課題
○生活ホームの選択理由としては、施設職員の果たす役割が大きいが、行政の役割は比較的低い
○生活に満足している人の割合は、生活ホーム、グループホームともに高いが、居室の広さについては評価が一致しない
5 地域環境について
 知的障害者の居住場所をみると、市部に約1万8,000人、町村部に約4,000人が生活しており、なかでも千葉市、船橋市、市川市といった大都市部に集中している。都市部では、知的障害者の自立に必要な社会的資源が豊富である一方、近隣関係や定住意向の希薄な地域も多く、地域社会における連帯や相互支援を十分に期待できない地域もある。また、不動産価格が高く、入所施設や入居施設の調達には高コストとなる傾向がみられる。一方、町村部では、知的障害者数が少なく、管内の知的障害者が100人未満のところも少なくないため、社会的需要が小さく、知的障害者に対する社会的支援の成立を困難にしている。
 市町村の知的障害者支援の状況をみると、在宅サービスの3本柱であるホームヘルプ、デイサービス、ショートステイといった基本サービスが整備されていないところも多くなっている。
 生活ホーム、グループホームの整備状況についても、市部を中心に整備が行われているが、生活ホーム、グループホームが1箇所も整備されていない市町村も少なくない。
 
問題点・課題
○知的障害者の多くは、千葉市、船橋市、市川市などの大都市部に居住している
○市町村の知的障害者支援サービスは十分に整備されていないところがある
○生活ホーム、グループホームが未設置の市町村がみられる







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION