1999/01/28 朝日新聞朝刊
続 武器・弾薬輸送 後方地域、変化(ガイドライン法案Q&A)
Q 昨日に続いて武器・弾薬輸送について聞きたい。政府は多国籍軍に対しては「武力行使と一体化するかどうかの観点から判断し、いかなる後方支援をするかは慎重に判断する」という見解だけど、米軍に対してはどうなの。
A いま国会で審議されているガイドライン関連法案のポイントのひとつだよ。米軍に対する「人員及び物品の輸送」ができると法案に書かれていて、「武器・弾薬」とは明示していないけど、米軍の武器・弾薬を含んでいると解釈されている。
Q この場合は「慎重に判断する」ということじゃないの。
A もちろんどこでもできるというわけじゃあない。日本周辺の地域で武力紛争などが起きた時に、自衛隊が後方地域で輸送することになっている。
Q 「後方地域」? また新しい言葉だね。
A 耳慣れないのも無理はないね。新指針や法案をつくる過程で考えられた言葉なんだ。新指針まで政府は「戦闘地域と一線を画された地域」と言っていたんだけど、法案ではこう言い換えたんだ。
Q 具体的にはどんなところを指すの?
A 日本の領域と、自衛隊が活動している期間は戦闘行為が行われないという条件を満たす領域の周辺の公海や上空となっている。
Q 難しいなあ。
A 要は、戦闘がなさそうな場所だよ。その範囲内であれば武力行使と一体化せず、日本周辺の公海上にいる米軍の艦艇に対してでも、武器や弾薬を輸送できるとしているんだ。
Q どうやって、その範囲を決めるの?
A まず基本計画をつくって米軍を支援する地理的な範囲を閣議で決める。例えば「日本海中部」とかね。その枠内で、防衛庁長官が戦闘の状況を判断して、具体的な実施区域を自衛隊に指示するんだ。
Q その中でずっと活動するわけ?
A 近くで戦闘になったり、戦闘が予測されたりするような危険な状況になれば、輸送を中断したり、実施区域を変更したりする。
Q 固定できないということだね。
A どんどん事態が変わって戦闘地域が変われば、それに応じて活動を中止し、実施区域を変える。防衛庁に聞くと「敵の攻撃能力を考えたうえで実施区域を設定し、レーダーで敵がいないことも確認する」と説明する。だけど、実際は難しい判断を迫られる場面もあるかもしれないね。
Q そこに武器・弾薬を運ぶのか……。
A 一九九〇年の湾岸危機のころから、米軍の武器・弾薬の輸送は激しい議論を呼んできた。ただ、公海上の米艦艇に物資を運ぶときは、食料や燃料なども一緒に運ぶことになる。武器・弾薬を対象外にすれば、米軍が自分で輸送しなくてはならず「支援の意味が薄まる」というんだ。
Q 武器や弾薬を運んだら、敵の攻撃対象にならないかな。
A 紛争に巻き込まれるおそれは以前から指摘されている。二十六日の衆院予算委員会で高村正彦外相も「攻撃を受けない保証はない」と答えていた。
Q それに、後方地域での支援は、本当に武力行使との一体化にならないんだろうか。
A 議論が分かれるところだ。戦闘地域の近くであろうが遠くであろうが、安全な場所であろうがなかろうが、武器・弾薬は結局は敵を殺傷するんだし、戦闘行為には不可欠なものだからね。その内容からみて「武力行使と一体化している」という批判が出るのは当然だろう。
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