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2000/11/22 産経新聞朝刊
【豊中の教育】(5)元校長の嘆き 市教委自らが組合と妥協
 
 平成七年春。大阪府豊中市のある小学校で、入学式での「国旗・国歌」の実施をめぐって校長と組合員が激しく交渉している最中、組合員がどこかに電話をかけた。数分後、当時部長職だった現在の市教委最高幹部から電話が入り、校長に「前校長なみで」と注意した。「前校長なみ」とは、教員の妨害の中で国旗を揚げる“努力”をし、実際には揚がっていないのに「掲揚した」と市教委に報告することだった。
 この校長は「実際にあったこと」と認めたうえで、「組合員に話した言葉がそのまま市教委に伝わっていた」と話す。
 教職員組合の「学校の民主化」運動で、校長権限が形がい化されてきた豊中の市立学校。「組合の力が強いという理由だけでは、校長権限が骨抜きにされることはないでしょう」と元校長の一人は言う。
 「市教委の指示事項を実施しようとして、組合員の反対にあう。それでもやろうとすると、市教委が『そこまでしなくても』。校長からすれば『はしごを外された』状態だ」
 今年二月、別の小学校で国旗を降ろした男性教員が停職一カ月、栗原有史・教育長ら市教委幹部が「問題解決を遅らせた」として処分を受けた。
 この教員は、平成十年春の卒業式と入学式当日、校庭に掲揚されていた国旗を無断で降ろしたうえ、校長印のない通知表を担任学級の児童らに配布した。このため、校長が全児童宅を回って印鑑を押す事態になった。
 市教委は校長ら学校側の報告をもとに教員を事情聴取しようとしたが、教員が加盟する大阪教育合同労働組合の組合員ら数十人が押しかけたため、当時の市教委幹部は組合側と「本日の聴取はペンディングにする」などとする覚書を交わし、市教委はその後、調査を打ち切った。
 ちょうど同校の新年度PTA役員を決める時期で、学校側はこの教員を「書記」とすることを決めたが、府教委の調べなどによると、教員は、国旗問題以外にも平成九年から十年にかけ、男児のしりをかんだり、児童に再三体罰を加えたりしており、不信感を募らせていた保護者側は教員の役員就任を再三、拒否。にもかかわらず、翌十一年三月、教員は「学校代表」という肩書で学校と保護者の窓口になった。
 学校関係者は「迅速に処分してくれたら男性教員がPTAの役職につくことはなかった。覚書は知らなかったが、校長はこの教員を抑えることができなかったようだ」と話している。


 
 
 
 
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