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1999/03/23 産経新聞朝刊
【主張】学校現場 校長の指導力強化が急務
 
 卒業式での国旗掲揚・国歌斉唱問題を苦に校長が自殺した広島県の教育委員会は、高校管理規則を改め、職員会議を校長の補助機関として明確に位置づける規定を設けた。これにより、学校現場で校長が十分な指導力を発揮し、教職員組合などに支配されていた「広島の教育」が正常化に向かうことを願うものである。
 広島県では昨年、職員会議を最高議決機関とする校務運営規定(内規)が多くの学校に存在し、校長の権限を奪っている実態が明らかになった。その後、文部省の指導などで内規は改められ、問題は解決したかにみえた。
 しかし、先月末、卒業式を前に自殺した県立世羅高校の校長は、生前、連日連夜の職員会議や教職員組合との交渉に追われていたという。職員会議が事実上の学校運営権を握る“悪慣行”が続いている以上、今回の管理規則改正は当然の措置といえる。
 学校教育法は「校長は校務をつかさどり、所属職員を監督する」「教頭は校長を助け、校務を整理し…」と定めているが、職員会議については何も規定していない。職員会議は本来、校長が学校を円滑に運営するために招集する補助機関、あるいは諮問機関にすぎない。校長は職員会議での意見を参考にしながらも、最終判断は自分で下すべきなのである。
 職員会議に対する校長の対応として参考になるのは、埼玉県立所沢高校のケースだ。同校では学習指導要領に沿って国旗掲揚・国歌斉唱を伴う卒業・入学式を行おうとする校長側と、これに反対する生徒会・PTA・教職員組合の“三者共闘”が対立している。
 校長は職員会議や生徒総会などで、反対グループと話し合いを続けたが、今年も歩み寄りは見られず、指導要領にのっとった卒業式を実施した。その結果、昨年は二・五%しか出席しなかった卒業式に、今年は三割が出席した。校長の粘り強い指導が着実に効果をあげているといえる。
 校長の中には、日教組など左翼系組合の活動家だった人もいよう。だが、校長になった以上、そうした過去の行きがかりを捨て、児童・生徒の将来を考えた指導に専念してほしい。
 職員会議や生徒会の常識を逸脱した圧力が校長の判断をくつがえす−というような図式は、社会では通用しない。そんな教育を受け、社会に出て困るのは子供たちなのだ。
 校長の指導力が問われるのは「国旗・国歌」に限らない。日本の教育現場は、いじめや不登校、校内暴力、学級崩壊など多くの問題を抱えている。校長次第で学校は変わるのである。


 
 
 
 
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