1987/02/01 読売新聞朝刊
教員の初任者研修、31都府県が実施の意向 文部省の予定超す/読売新聞社調査
文部省は、臨時教育審議会が昨年四月の第二次答申で最重点テーマとして打ち出した新規採用教員に対する「初任者研修」を、六十四年度の本格実施を前に来年度、三十県市で試行することを決め、全国の都道府県、政令指定都市の参加を募っていたが、読売新聞社の調べで三十一日、三十一の都府県と四政令指定都市で参加を決めたり、その方向を固めていることがわかった。同省は新規採用教師二千百九十人を来年度の研修対象に予定して予算措置をしており、今後、各県の試行計画内容のチェックを行い、今月中旬には実施県市を正式決定する方針。予定を上回る県市の“名乗り”に、同省では人数制限などの調整を行い、できる限り多くの県市で実施したいとしているが、教組の激しい反対運動が起きているところも多く、試行実施までには曲折も予想される。
初任者研修は、新規採用教師にベテラン教師を“専任コーチ”としてつけ、授業方法や教師としての心構えなどを教えようとするもの。経験のないまま教壇に立つ新規採用教師のレベルアップを目指すのが目的で、指導教員は担任をはずれ、一人で一―三人の新規採用教師を受け持つことになっている。指導教員の抜けたクラスや教科は、別の教師や非常勤講師で穴埋めし、そのための人件費二分の一補助などとして同省は、六十二年度予算案に約三十億円を計上している。しかし、日教組は「組合つぶしを狙ったもので、統制強化につながる」と反対しており、どの県市が実施を打ち出すか注目されていた。
三十一日現在、実施を決めたり、その方向を固めている県は別表の通り。このほか、大阪、神戸、北九州、福岡の四政令指定都市で実施の方向を固めている。しかし、県議会の動向などによっては今後、変動する可能性もある。福島県のように、一県当たりで予定している研修対象が、小学校二十五人、中学三十人、高校十五人、特殊教育諸学校三人など、同省のモデル案に従った計七十三人のところが大部分。
しかし、離島を多く抱えていることを理由に七十六人を予定している沖縄、七十九人で予算要求している大阪府などモデル案を超えるところや、六十一人を予定している栃木、小、中だけで四十人程度の研修を検討している新潟など、地域によるばらつきもある。
指導教員の穴埋めとしては、新規採用教師一人配置校では非常勤講師を、また二、三人配置校では正規の教員増でまかなうところが多いが、高校だけを対象として考えている兵庫県では、指導教員全員を教頭など担任以外にする方針。
初任者研修試行に踏み切った理由も、「当分の間五、六百人の新規採用が続くので、無駄ではない」(埼玉)、「テストをしておかないと本番が始まったときに対応できない」(兵庫)などさまざま。首都圏では、東京、千葉、埼玉が、それぞれ七十三人を対象とした研修を予定して予算要求などをしているが、神奈川は独自の研修を研究しているため、来年度の初任者研修試行は見送る構え。
こうした動きに対する反対運動も強く、長野では昨年十一月、試行実施を県教組に通告したが、県教組側から「試行導入に反対する声明」が出され、結局、試行は見送りになった。茨城では研修の内容がまとまった段階でのチェックを組合が県教委に申し入れており、埼玉県教組は二十七日、反対の要望書を提出。山梨では、教育長に対して反対のはがきを送る運動があった。
また、徳島では、研修内容を監視する常設機関の設置を県内の四つの教職員組合が県教委に申し入れるなど、地域によって反対運動のニュアンスに違いをみせている。
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