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1996/07/20 毎日新聞朝刊
[特集]学校はどう変わるか・中教審答申(その2) 受験戦争の緩和、それとも・・・
 
◇「中高一貫教育」「飛び級」など例外措置
 今回の答申後に中教審が引き続き審議する公立校の中高一貫教育、入試改革、さらに数学など特定分野で優秀な子供の才能を伸ばすための「教育上の例外措置」に目を向けよう。受験競争の緩和を図る意味で、学校週5日制完全実施の成否のかぎを握っている。
 
◇「差つける」発想、根強い抵抗も
 ★中高一貫教育
 学制改革については、71年の中教審答申が小・中・高の接続の見直しを一部の学校で「試行」するよう提言した。教育現場などの抵抗が強く、その後、87年の臨時教育審議会(臨教審)答申が「6年制中等学校」を提言したが、受験競争を低年齢化させるとの批判があるうえ、「6・3・3制」の見直しを伴うために事実上とん挫。宮崎県立の1校だけが現在の学制の枠内で設置されただけだ。しかし、高校受験のストレスが強く、いじめも多発している中学校現場と、進学面で実績を上げている私学の中高一貫教育などを考え、制度化への積極論もある。
 ★入試改革
 「少子化が進んでも、本当に今のような受験競争が続くだろうか。その点から検討したい」と有馬朗人・中教審会長は語るが、完全5日制の実施を支える最大のポイントだろう。また、有馬会長は「欧米にも一部にし烈な競争は存在する。優秀な科学者を養成するうえで必要な面もあり、幅広い観点で問題点を整理したい」として、ヨーロッパやアジアに調査団を派遣する方針だ。
 ★習熟度別システム
 具体的には、大学入学年齢の制限緩和による「飛び級」の是非についての議論が注目される。
 従来の教育は日本人の知的レベルの平均水準を上げることに力を注いできたが、経済の失速により、人材確保の観点から経済界などから「独創性に欠ける」という声が高まっている。こうした背景もあり、有馬会長は「勉強がずぬけてできる子には退屈しないような仕組みを。また、理解力がゆっくりな子にはゆっくり教えた方が伸びる」として、習熟度別に学ぶシステムを検討課題に挙げる。
 しかし、日本の風土では「差をつける」という発想に根強い抵抗もある。
 その点を指摘したうえで、有馬会長は「形式的平等性から少し離れたことに社会がどう反応するか。真剣に議論したい」と話す。能力、個性の重視との絡みで国民的議論を呼びそうだ。


 
 
 
 
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