(1)全体構造
a)試験機の設計
SMGT2試験機のパワーセクション部断面図を図1.4−1に示す。ガスジェネレータ部はSMGTのV型と基本的に同じ構造であるが、燃焼器ケーシングの空気取り入れ孔が熱交空気配管との取り合いの影響で15°程度上向きに傾いた。パワータービンモジュールはガスジェネとの取り合い及び出力軸カップリングとの取り合いは同じにして新規に設計を行った。
図1.4−2にSMGT2エンジン外観装備図を示す。パワーセクション部及び熱交換器のサポート方式はSMGTと同じである。ガスジェネと熱交換器間の空気配管もSMGTと同じシステムであるが、SMGTで後から追加した熱交へ流れる空気をバイパスする配管系統を最初から設けており、熱交空焚き等の作業効率化を配慮している。パワータービン出口から熱交入口のダクトについてもSMGTでの成果をもとにSMGT2に合わせて新設計を行った。
b)試験機の製作
ガスジェネモジュール、パワータービンモジュールを合わせてパワーセクションを組立て、運転試験設備へ搬入、据付を行った。 図1.4−3、 図1.4−4にパワーセクション組立外観写真を、 図1.4−5に試験装置への据え付け写真を示す。
(2)制御システムの設計
a)負荷変動制御のシミュレーション検証
舶用主機では操船にともなう負荷変動が頻繁に行われるため、それに対する制御応答性は十分な操船性能を確保する上で重要であるばかりでなく、負荷変動に対する制御応答性については船級規則においても規定されており、これをクリアできることが必須である。そこで、実機エンジンでの負荷変動試験に先立ち、シミュレーションにより上記のような制御応答性の実現可能性について検証した。
シミュレーション検討では、SMGTで得られたエンジン特性をもとにしたシミュレーションモデル( 図1.4−6)を用い、実船で想定される負荷変動のうち代表的な以下のパターンについて、制御応答性を検証した。
(1)港内操船:港内での離着桟時の操船パターンのうち、もっとも負荷変動が激しいパターンを想定
(2)レーシング:荒天時の航行中に、波浪により船体が海面から浮き、推進器(プロペラ)が空転した場合の負荷変動を想定
(3)クラッシュアスターン:船舶が緊急停止する際の推進力逆転操作を想定した負荷変動パターン
(4)発電機トリップ:発電機が不測の事態によりトリップした際の、瞬時全負荷遮断を想定したもの
1例として、クラッシュアスターンのシミュレーション結果を 図1.4−7に示す。
以上のシミュレーション検討を経て、負荷変動制御の各種パラメータ調整、および必要に応じて制御方式の改良を行い、それぞれの負荷変動パターンに対して船級規則に適合できる制御応答性の実現可能性について見通しを得た。
b)船級対応制御システムの基本設計
ガスタービン船の場合には、制御システムの故障を想定すると、仮に手動操作でのバックアップを設けていても、ガスタービンの起動・操作は手動では困難である。そのため、制御機能の主要な部分に関しては2重化によるバックアップを考慮しておく必要がある。これに基づいて、実船搭載用制御システムにおけるシステム構成を検討し、万一の故障の際にも主要制御機能に関する部分の機能が損なわれないような構成について基本設計を行った。
c)まとめ
実船搭載に向けた船舶対応制御システムの検討を実施し、負荷変動に対する制御応答性については、操船性・船級規則に適合できる制御性能の実現可能性について、シミュレーションによる見通しを得た。また、舶用対応の制御システムについても、基本設計を実施しシステム構成をまとめた。
図1. 4−1 SMGT2断面図
図1. 4−2 SMGT2エンジン外観装備図
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