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図2.2.3−11 パワータービン第1段動翼及びロータディスク
 
図2.2.3−12 パワータービン第2段動翼及びロータディスク
 
2.3 小型高効率熱交換器の研究
(1)技術課題
 SMGTは、燃費改善のため、再生熱交換器を搭載している。この熱交換器には、高効率で、したがって伝熱面積が大きく、かつ小型であることが要求されており、ガスタービン用としては国内最大級となる高温コンパクト型熱交換器を、その製作方法及び搭載方法を含めて開発する必要がある。本研究では、この国内最大級の熱交換器の設計・製作及びその妥当性を陸上試験によって確認することを課題として取組んだ。
(2)要素試験
a)入口流れ試験
 パワータービンと熱交換器をつなぐイグゾーストディフューザの形状及び熱交換器入口におけるガスの流速分布並びに熱交換器の効率について、それらの相関関係を調査し、イグゾーストディフューザの形状を最適化した。
b)部分段性能試験
 熱交換器本体の製作技術を確立し、熱交換器単体での性能を確認するため、陸上試験用熱交換器(実機)と同じ基本構造の熱交換器を試作し、試験した。
 なお、基本構造は、小型高効率化が可能な上、製作性・耐久性にも優れているプレートフィン型である。また、実機は、図2.3−1に示すように、空気側フィンとガス側フィンの積層数134ペアという高積層構造であるが、要素試験には、積層数8ペアの熱交換器を使用した。
 試験の結果、大平面のプレートフィン型熱交換器の製作技術を確立することができ、目標性能を満足することが確認できた。
(3)陸上試験用熱交換器供試体
 要素試験結果や組立・搭載時の作業性等考慮して陸上試験用熱交換器の詳細設計を行った。特に、熱交換器を支持するケースについては、小型・軽量化及び熱膨張差の吸収に配慮した。図2.3−2に熱交換器モジュール全体の外形を示す。
 熱交換器本体の製作手順は、空気側フィンとガス側フィンの積層数22ペアのブロックを4つと23ペアのブロックを2つ製作し、それらを連結するというもので、6つのブロックの連結により、134ペアという高積層化を実現することができた。図2.3−3に、空気入口・出口ヘッダ管接合後の熱交換器本体を示す。
 この熱交換器本体をケースに収納後、ケース外側に保温材を貼り付け、陸上試験装置に搭載した。図2.3−4に熱交換器本体収納後のケースを、図2.3−5に保温施工後陸上試験装置に搭載された熱交換器を示す。図2.3−5では、上下に並んだ空気入口・出口ヘッダ管に、まだ蓋が取り付けられた状態であるが、この後、これらの蓋を取外し、エンジン本体と接続した。
(4)陸上試験
 表2.3−1に、陸上試験と要素試験における定格点性能をまとめて示す。また、図2.3−6に、陸上試験における温度効率の、試験回数に対する推移を○印で示す。図中の破線は設計値を、縦軸上の□印は要素試験結果を表している。表及び図より、圧力損失は、空気側及びガス側共に設計値を満足したが、陸上試験時の温度効率は、設計値を下回っており、要素試験で確認した熱交換器単体の値よりも低い値で推移していたことが判る。これは調整運転における潤滑油の漏洩等で熱交換器に付着したススの影響と考えられる。図2.3−6で温度効率が最も低くなった試験の直前に、熱交換器を取下ろして点検を行なった際、ガス出口部には、図2.3−7(a)に示すようにススが全面に付着していた。
 熱交換器に付着したススを除去する方法の一つに、熱交換器に入る空気をバイパスさせて熱交換器全体をガス温度近くまで上昇させる、いわゆる空焚きという方法がある。今回、この空焚きを2回試行し、図2.3−6のように温度効率を改善することができた。また、これに対応して空焚き後には、図2.3−7(b)に示すように、ガス出口部のススの付着範囲が狭まっていた。ただし、ススは完全には除去し切れておらず、空焚き後も、本熱交換器の設計本来の性能は発揮できていない。
 陸上試験終了後、熱交換器を搬出して分解点検を行ったところ、ガス入口部において空気の微量の漏れが認められた。この漏れは、積層方向(エンジン軸方向)両端部で発生しており、次のような発生メカニズムによると考えられる。図2.3−8に示すように、本熱交換器の伝熱コア部は薄板積層構造であるのに対して、積層方向両端部は構造強度を確保するために比較的厚い板で構成されており、両者の熱容量の違いのために、ガス温度が急激に変化すると、熱応力が発生する。設計では、この点に特に注意して材質や板厚、形状を決定しており、通常の想定しうる起動・停止、加速・減速運転に対しては、十分な寿命を確保している。しかし、実際の陸上試験では、止むを得ず危急停止したときなど、設計時の想定を大きく超える急激なガス温度の変化が何度か発生しており、そのような特殊な運転状況下で両端部に隣接するフィンまたはプレートに過大な応力が集中し、亀裂を発生して空気の漏れにつながった可能性がある。
 以上のように、国内最大級のガスタービン用コンパクト型熱交換器を実機に搭載し、陸上試験を行った結果、ほぼ目標レベルの性能の達成を確認することができた。また、陸上試験期間中あるいは陸上試験終了後の点検において、ススの付着及び空気の微量な漏れが認められたものの、その他には特に異状は認められず、構造的にも、その妥当性を確認することができた。
 
表2.3−1 熱交換器の定格点性能のまとめ
  温度効率 空気側圧力損失 ガス側圧力損失
設計値 83.0%以上 3.0%以下 4.0%以下
陸上試験結果 79.1% 1.8% 3.8%
要素試験結果 83.2% 2.2% 3.6%
 
図2.3−1 熱交換器本体の基本構造
 
図2.3−2 熱交換器モジュール全体の外形
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