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瀬戸内海海洋環境体験学習
2002年度報告
 
1 セミナーの趣旨と全体計画
 
■ 海の環境問題は身近な環境問題?
 
 酸性雨や気候の温暖化など地球規模での環境問題が進行するなか、身の回りでも様々な環境問題が生じています。環境問題の多くは私たちの日常生活に起因するもので、大量生産、大量消費、大量廃棄を前提とした社会における、日常生活の結果生じたものであるといっても過言ではありません。国や企業ではこれまでの生産と消費のパターンを見直し、持続可能な社会を実現するため循環型社会の構築に向けた「循環型社会形成促進基本法」などの政策、取り組みが行われつつあります。また、河川法、海岸法、港湾法などの国土を保全するための法律にも環境の観点が加わるなど、施策や事業にも環境への配慮が組み込まれるようになってきています。
 しかしながら、瀬戸内海や大阪湾などの閉鎖性が強い内湾に目を向けると、私たちの日常生活や産業活動に起因する過大な負荷が環境の悪化を招き、依然として赤潮の発生や、青潮・ニガ潮と呼ばれる貧酸素水塊の発生が起きています。貧酸素の影響で海の生物が生息できないような場所が広がっているのが現状です。このような閉鎖性が強い内湾域の環境問題は20世紀の大量生産・大量消費文明の「負の遺産」といえます。
 
■ 海の環境問題を知り、そして行動するために
 
 環境問題の解決にあたっては専門家や行政担当者だけでなく、子供を含めたより多くの市民が問題について学習し、気づき、理解し、環境問題に対して考え、そして実際に行動することが必要であることは言うまでもありません。しかしながら、海の環境問題については未だその深刻さ、重大さが十分に認識されているとは言いがたいのが現状です。その原因には、海の中の様子が分かりにくいこと、海の生物にふれる機会が限られており馴染みが薄いこと、海の環境との直接的な係わりが少ないこと、さらに、海の環境問題に関する研究成果が社会に十分に還元されていないことなどが挙げられます。
 海の環境問題に関する取り組みを進めるためには、政策の立案や技術開発の他に、海に接し、海の環境を知るための体験不足や環境情報の不足を解消することが重要です。そこで、海の環境問題の解決に向けた取り組みを進めるため、講演と実際の海での体験学習、シンポジウムから成るセミナーを企画しました。
 セミナーは財団法人国際エメックスセンターが日本財団の助成を受けるとともに、生態系工学研究会の協力を得て開催・運営しました。ここでは平成13年度から15年度にかけて継続的にセミナーを実施することを前提に、セミナーの趣旨を次のように設定して取り組みを進めています。
 
★市民が海の生態系や環境に関する問題とその構造を理解し、各々が自主的に問題解決に取り組める素養を身につける機会を提供する。
★市民、行政担当者、漁業者、専門家の間で情報を共有化する。
★2002年度から教育現場で取り入れられる総合学習の参考資料として貸し出し可能な読本やビデオを最終年度に作成する。また、そのPRを兼ねて、最終年度の報告会には教育関係者などに告知し、その成果を広く知っていただく。
 
 また、セミナーを実施するに当たっては、次のような点に留意しました。
 
☆瀬戸内海などの閉鎖性が強い内湾の中で、良好な環境が保たれている海域と悪化が著しい海域、歴史・風土性を感じることのできる海域、希少な生物の保護活動、環境保全活動の先進地を実際に訪ね、現地で体験学習を行う。
☆体験学習の中では講演の他に、水質の測定手法、生物観察方法、生態系の評価方法などそれぞれの水域環境に適した環境を評価する考え方を講師と参加者がいっしょに学ぶ。
☆環境問題に関心のある人にとって、海の環境問題の現状を知るとともにより良い状態にするための取り組み方が平易に理解できるような内容構成に努める。
 
 2年目となる平成14年度には、以下のようなセミナーを開催しました。
 これらのセミナーの概要・結果を次頁以降に示します。
 
第5回 日時 2002年6月23日(日)9:30〜16:20
場所 兵庫県洲本市由良生石の自然海岸
神戸大学内海域機能教育研究センター
テーマ 淡路島で海の中の森(藻場:もば)を見て、海藻のしおりを作ろう
コーディネーター 川井浩史 生態系工学研究会会員
神戸大学内海域機能教育研究センター
第6回 日時 2002年8月8日(木)8:45〜17:00
場所 大阪湾東海岸(大阪府側)
テーマ 残された海の自然と悪化した環境を体験し、ライフスタイルを見直す 『大阪湾海辺の探検隊−君は大阪湾を知っているかい?−』
コーディネーター 中西敬 生態系工学研究会会員
総合科学(株)海域環境部
第7回 日時 2002年8月19日(月)9:30〜17:30
場所 岡山県立水産試験場、牛窓港 前島
テーマ 牛窓のアマモ場を眺め、離れ島で潮干狩りを楽しもう!
コーディネーター 辻本剛三 生態系工学研究会会員
神戸市立高等専門学校 都市工学科
第8回 日時 2002年8月24日(土)9:30〜16:00
場所 大阪湾沖合、大阪南港野鳥園
テーマ 干潟ってどんなところ?いろんな生物の集まる浅場の秘密を知ろう!
コーディネーター 重松 孝昌 生態系工学研究会会員
大阪市立大学 大学院工学研究科 都市系専攻
第9回 日時 2002年10月12日(土)9:00〜18:00
場所 岡山県笠岡市立カブトガニ博物館
岡山県笠岡湾(浄化船)
テーマ 生きている化石カブトガニの観察と海水浄化船の見学!
コーディネーター 上月康則 生態系工学研究会会員
徳島大学大学院工学研究科エコシステム工学専攻
第10回 日時 2002年12月21日(土)9:30〜15:00
場所 神戸市立須磨海浜水族園
テーマ 水族館の秘密を知ろう!II 水族館の管理技術を学び、海の環境について考える体験学習
コーディネーター 大塚耕司 生態系工学研究会会員
大阪府立大学 大学院工学研究科 海洋システム工学専攻
 
瀬戸内海海洋環境体験学習
 
2 第5回セミナー
淡路島で海の中の森(藻場:もば)を見て、海藻のしおりを作ろう
 
2.1 はじめに
 
 「瀬戸内海海洋環境体験学習事業」は、(財)国際エメックスセンターが主催し、生態系工学研究会の特別協力のもと、日本財団から助成を受けて、2001年度よりスタートした。本事業は、市民(特に青少年)を対象とし、瀬戸内海等の閉鎖性海域の中で、環境質の高い水域と劣化の著しい水域、歴史・風土性を感じることのできる水域、希少な生物の保護活動、環境保全運動の先進地、等を実際に訪ね、当地で体験学習を行うことを目的としている。また、2002年から教育現場で取り入れられる“総合的な学習の時間”のモデルとして、見学会や報告会をもとに最終年度(2003年度)作成する資料やビデオを貸し出すことも視野に入れている。
 
 2002年度の第5回セミナーは、「淡路島で海の中の森(藻場もば)を見て、海藻のしおりを作ろう!−藻場を観察し、海の環境を考える体験学習−」というテーマで、洲本市由良町由良生石(おいし)の海岸、神戸大学内海域機能教育研究センター(津名郡淡路町岩屋)で行った。ここでは、海における藻場を観察し、実際海藻を採取し、しおり作りという遊びを取り入れながら藻の果たす役割について考えることを目的とした。
 
2.2 セミナー概要
(1)プログラム
■日時:2002年6月23日(土)9:30〜16:20
 
■場所:洲本市由良町由良生石(おいし)の海岸
     神戸大学内海域機能教育研究センター(津名郡淡路町岩屋)
 
■テーマ:淡路島で海の中の森(藻場:もば)を見て、海藻のしおりを作ろう
 
■参加者数:31名(内小学生11名)
 
■当日スケジュール:
 
9:00
 
JR舞子駅に集合
貸切バスで洲本市由良町由良生石(おいし)の海岸へ移動
11:00〜12:00
 
藻場(もば)の観察、海藻類の採集、観察
12:00〜12:30
 
昼食
12:30〜13:40
 
貸切バスで神戸大学内海域機能教育研究センターへ移動
13:40〜14:10
 
講義「海の環境と海藻」
 
 
 講師:川井浩史 氏(神戸大学内海域機能教育研究センター長)
14:10〜15:30
 
採集した海藻で、押し葉(さく葉標本)作り
15:40〜16:20
 
バスにてJR舞子駅へ移動
16:20
 
解散
 
(2)講師・スタッフ名簿
 
No. 名前 所属 役割
1 川井 浩史* 神戸大学内海域機能教育研究センター長 講師、総合進行
2 大塚 耕司* 大阪府立大学 進行補佐
3 重松 孝昌* 大阪府立大学 進行補佐
4 上月 康則* 徳島大学 進行補佐
5 中西 敬* 総合科学株式会社 進行補佐
6 新瀬 幾恵 総合科学株式会社 進行補佐
7 大西 晶 総合科学株式会社 進行補佐
8 宮地 由紀 総合科学株式会社 進行補佐
9 森脇 昭二 総合科学株式会社 進行補佐
10 下埜 敬紀 神戸大学大学院自然科学研究所 運営補助
11 内田 博子 神戸大学大学院自然科学研究所 運営補助
12 田中 厚子 神戸大学大学院 運営補助
13 神谷 充伸 神戸大学 運営補助
14 牛原 康博 神戸大学 運営補助
15 中野 有 神戸大学 運営補助
16 横山 あおい (有)エイライン 撮影・記録
17 石原 英治 (財)国際エメックスセンター企画調査課課長補佐 受付
18 石川 潤一郎 (財)国際エメックスセンター企画調査課課長 受付・撮影
19 大辻 清治 (財)国際エメックスセンター企画調査課課長補佐 受付
20 内藤 豊 (財)国際エメックスセンター企画調査課主任 受付・撮影
*生態系工学研究会員
 
(3)参加者名簿
 
No. 名前 年齢 性別 No. 名前 年齢 性別
1 S.O 10才 16 T.H 4才
2 T.O 37才 17 A.H 10才
3 T.O 8才 18 K.H 36才
4 K.O 11才 19 N.H 6才
5 R.K 10才 20 T.H 40才
6 J.S 66才 21 K.M 11才
7 A.S 40才 22 M.M 36才
8 Y.S 10才 23 M.M 10才
9 S.S 9才 24 M.M 22才
10 K.S 7才 25 T.M 36才
11 M.S 23才 26 T.M 43才
12 J.N 46才 27 M.M 10才
13 T.N 8才 28 Y.M 8才
14 M.H 37才 29 K.M 8才
15 K.H 8才 30 R.M 6才







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