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月報 Captain 平成15年2月・3月合併号
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表紙写真
<アカプルコ>:メキシコ南部太平洋岸の世界的観光・保養都市、貿易港。太平洋のリビエラと呼ばれ、美しい海水浴場がある。スペイン治下の250年間フィリピン貿易の基地で、伊達政宗の使者支倉常長がローマに行くときに上陸。
[武馬猛氏撮影]
 
船長 母校へ帰る
第20回 兵庫県神戸市立魚崎小学校
阪神水先区水先人 黒羽 芳輔
 
 当協会創立50周年記念事業の一つとして企画された“船長、母校へ帰る”が始まってすぐ、当時の協会神戸常務理事であった山西氏より是非出身小学校で講演をやってほしいと依頼を受けました。もちろん子供達の前で講演などしたことはなく、子供達の見本になるような船乗りとしての半生でもなかった小生としては、引き受けるのはちょっと二の足を踏んでいました。その後山西氏より資料とともにすでに講演をされた諸先輩の話の内容などを送られ、かついまのところ港町神戸の小学校の予定がないなど、澤山専務理事(当時)からも強く依頼されました。
 
 神戸出身の小生としては、長い間神戸港を自分の母港として親しんで来たものであり、あの震災以来神戸港の衰退が著しく、神戸自身に港離れ、船離れが進んでいることに非常に残念な思いを強くしていたので、母校のためと言うよりは母港のために少しでも役立つことがあればと、卒業以来ほとんど初めて母校である神戸市立魚崎小学校へ出かけてみました。ところが行って見てびっくりしました。昔の面影はまったく無く、運動場であったところにプレハブの校舎が所狭しと立ち並び、震災被害のあと校舎立て替えのための大工事が行われていました。職員室を捜し当て佐野教頭先生(当時)に面会し当協会の資料をお見せして、企画“船長、母校へ帰る”の趣旨説明したところ、非常に興味をしめされましたが、校舎が現在こんな状態で通常の授業にも難渋しており、とても講演などを企画できる状況になく、来春(平成14年4月)に新校舎完成予定なのでその後再度お話をということになりました。
 その後協会からも強く実現を依頼されていましたので、時々学校の前を通って工事の進み具合を眺めておりました。そして本年4月を迎え新校舎が完成したのを確認して、学校へ電話したところ、先にお話をした佐野教頭先生は明石の小学校に転勤になってしまわれ、新しい国宝教頭先生とお話して、学校を訪問しあらためてご説明のアポイントをとり、当協会神戸常務理事早川氏ともども学校を訪れました。学校は昔の面影を随所に残しながら、見違えるようにモダンな新校舎に生まれ変わっていました。中島校長先生および国宝教頭先生とお会いして趣旨説明をすると是非やって下さいと大いに乗り気で、講演などに利用する新しい多目的教室もみせてもらい、最初に訪れたプレハブの時の子供達や先生の様子からはとても想像出来ないほど、新しい校舎やプレハブのなくなった運動場ではつらつと明るく走り回っている子供達を見て、恥ずかしがりやの小生でとてもうまくはできないが、がんばってこの講演を引き受けてみようと思った次第であります。最終的に6年生5クラス165名を対象にして、画家の柳原良平先生もご同席いただいて平成14年11月22日に3、4の2時限を利用して行うことになりました。
 
 11月に入ったころ講演の内容をワープロにして学校に事前にお渡しし、ビデオや世界地図などの手配をして当日に備えました。日が近づくに従い小生の8才の孫と妻に聞かせながら子供達にどのように話せばよいかと練習を繰り返しましたが、なかなかうまくいかず、少し不安を抱えたまま当日を迎えてしまいました。
 当日、しまいこんでいたなつかしい昔の制服、制帽を引っ張りだして身につけ学校を訪れ、校長、教頭及び6年生の石井主任先生にお会いして打ち合わせのあと、予定時刻に講演の場所である多目的教室に入ると子供達の歓迎の拍手とどよめきが聞かれて、来てよかったなと感じました。
 
講演中の黒羽船長
 
 講演は子供達が議事進行する形で進められ、澤山会長の話、柳原先生の絵、協会のビデオなどをおりまぜて、大きくなったら船長になってもらいたいとまでは思いませんが、子供達に海や船に興味を持ってもらい、この日本の豊かさは海や船によって保たれていることを少しでも分かってもらえたらと、自己紹介から始めて小生の経験に基づいて海や船そして貨物や貿易のことを合計で約1時間半にわたって話をしました。ついつい話したいことがたくさんあってあれもこれもと話すうちに時間がなくなってしまい、なにか話がまとまらず、少し不完全燃焼かなと感じましたが、子供達が真剣な眼差しで熱心に聞いてくれ、質問の手が次々と挙がって、興味を持ってくれたんだなと少し安心した次第です。話の途中で神戸の小学生といえども子供達の親戚や知り合いの人に船に乗っている人がいないことや、すぐそばに商船大学があることをしらないことなどが分かりびっくりしましたが、講演のあと当協会に多数の感想文や質問が寄せられているとのことで、子供達の気持ちや知識のなかに船や海そして船乗りのことが少しでも残り、将来きっとなんらかの形で役立つことがあるのではと微力ながらお手伝いができてうれしくおもいました。このような機会を与えてくれた協会関係者の方々と校長先生を初め母校の先生方に感謝申し上げます。
 
 戦後の日本の復興そして経済大国への発展にあたって、貿易そして海運と共に我々日本人外航船員が果たした役割は大きなものであったと思います。しかし時代が大きく変わり残念ながら日本人船員は少なく、立場や役割は小さくなり、3Kといわれる職業である船長をふくめた船員の道を目指そうと言う子供達はいなくなりました。東京、神戸の両商船大学も他大学と合併される時代となりさびしい限りですが、当協会員の一人として、いろいろな機会を利用して、海と船の大切さを学校の授業と違った形で子供達につたえていくことができればと思います。
 
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