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平成14年度地区別講習会実施報告
 今年も結核予防技術者地区別講習会が全国7ブロックで開催されました。本講習会は、各都道府県の特対事業の実績報告、相互検討及び専門家による講義の場を設けることにより、結核地域格差の解消と一層の結核対策の推進を図ることを目的としています。各ブロックの担当県の方に、実施模様の報告をしていただきます。
 
北海道地区
 
北海道保健福祉部
保健予防課企画調整・感染症グループ主任
佐藤 ふみ子
 
 平成14年度の結核予防技術者北海道地区講習会は、7月9日、10日の2日間にわたり、札幌市内で開催いたしました。北海道は毎年単独ブロックで開催していますが、本年度も保健所をはじめ各市町村や健診機関、医療機関から約190名の参加があり、結核に対する意識の高さが伺われました。
 今回の合同講義は「結核対策の包括的見直しに関する提言」の解説がテーマで、結核研究所の星野医学科長からは医学的な解説を、厚生労働省結核感染症課の佐野専門官からはこれからの結核対策の方向性について、それぞれ講義をいただきました。今後の結核対策を推進する上で重要な内容であるため、受講者の方々も真剣に受講されていました。
 職種別講義では、結核研究所から和田疫学研究部長、中野放射線学科長、小林保健看護学科長をお迎えし、それぞれ最新の知識・情報を盛り込んだ講義をいただきました。熱のこもった講義を受けて活発な質疑も行われましたが、とても時間内では足りずに、終了後もロビーで先生を囲み質疑が始まったり、先生が用意された参考資料を手に取りながら意見交換する受講者の姿が見られました。
 2日目の講義終了後に開催した結核担当者会議では、道及び各市の特対事業の取り組み事例を発表するとともに、事前に提出していただいた結核対策における質疑について意見交換を行いました。また、講義に引き続き参加していただいた中野先生、星野先生からの専門的な助言は、大変参考になり、今後の結核対策の取り組みに役立つことと思われます。最後になりましたが、講義いただいた先生方、受講されました皆様方、そして担当者会議の開催にあたり御協力いただきました各市の結核対策行政担当者の方々に対し深く感謝申し上げます。
 
東北地区
宮城県保健福祉部
健康対策課結核感染症班技術主査
菊田 久弓
 
 東北地区講習会は、宮城県が担当し、7月24日、25日に仙台市において開催しました。県内外の医療機関、保健所、市町村等から約200名の参加がありました。
 「結核対策の包括的見直しに関する提言」が出されたこの時期に、多くの関係者に「結核の現状と対策がどのように変わろうとしているのか」を周知でき、また、医療機関から77名の参加があり、医療機関と行政機関との連携を深める機会にもなり、有意義な講習会であったと思います。
 本講習会のメインは、結核予防会島尾顧問の講義「日本の結核とその対策の問題点」であり、結核の歴史から今後の方向まで一貫した内容は、関係者にとって大変貴重なものでした。
 職種別の講習は、結核予防会渋谷診療所高瀬名誉所長、結核研究所小林保健看護学科長、同星野放射線学科科長代理を講師に迎え、各講義とも時間を超えての活発な質疑が出され、実務者にとって大いに役立つものでした。
 2日目の「結核対策特別促進事業の報告・評価」は、(1)結核対策ネットワーク事業(秋田県)、(2)結核治療中断者等早期把握支援事業(岩手県)、(3)結核看護連携事業(山形県)、(4)結核患者服薬治療支援事業(仙台市)、(5)高齢者の結核予防対策事業(福島県)の4県・1市に絞って報告していただきました。これは、近隣の県・市の取り組みを知り、今後の対策の参考となる絶好の場でしたが、意見交換や助言に十分に時間がとれなかったのが少々残念でした。
 講習会にあわせて開催した結核担当者会議では、(1)結核診査協議会の設置状況・人選について、(2)リスク集団の把握方法について、(3)寝たきり等の結核健診未受診対策について、(4)DOTS事業の実施状況について等の意見交換と助言がありました。
 この2日間は、最新の知識・情報の習得のみならず、各自治体の結核対策の状況把握、関係機関相互の情報交換の場となり、地域特性をふまえた対策を推進する上でも、ブロック別の開催は意義あることと強く感じたところです。
 最後に本講習会開催にあたり、講師の諸先生、資料等ご協力いただきました各県・市担当者及び参加者の方々、結核研究所事務局の方に、この場をお借りしてお礼申し上げます。
 
関東甲信越地区
栃木県健康福祉部
健康増進課主任
幸田 好弘
 
 平成14年度関東甲信越結核予防技術者地区別講習会は、栃木県が担当県となり、7月4日・5日の2日間、字都宮市において県内外の結核担当者や医療機関、健診関係者等約150名の参加を得て開催されました。
 合同講義においては、結核予防会第一健康相談所増山診療部長及び厚生労働省結核感染症課井内専門官より「結核対策の包括的見直しに関する提言」の解説と題して、2日間にわたり厚生科学審議会感染症分科会結核部会より報告されている内容について御講義いただきました。
 次に、医師対象講義として結核予防会複十字病院尾形第一診療部長から「結核診査会の強化と結核標準医療の普及」、保健師・看護師対象講義として結核研究所小林保健看護学科長から「治療に向けた保健指導」、放射線技師対象講義として結核研究所中野放射線学科長から「胸部写真の精度管理・防護関連の法令改正」について、それぞれ専門的分野での御講義がありました。
 2日目に行われた特対事業の報告・評価及び結核担当者会議においては、各自治体より資料を提出していただき、注目すべき自治体(東京都・群馬県・千葉県)により発表していただきました。また、担当者会議では、各自治体が抱えている課題((1)特対事業の計画立案、(2)寝たきり老人等に対する胸部撮影、(3)住所不定者対象の健診等)について時間の枠を超えた意見交換及び増山先生・小林先生・中野先生からのアドバイスを受けた活発な討議がなされました。それ以外に合同講義での講演内容について、各自治体担当者から増山先生に多くの質問事項があり、丁寧な御教示をいただき非常に有意義なものでした。
 最後になりますが、当講習会に参加されました皆様と、講師の諸先生方に、この場をお借りして深く感謝申し上げます。
 
東海北陸地区
岐阜県健康福祉環境部
保健医療課感染症対策係主事
田口 賢治
 
 東海北陸地区の今年度の地区別講習会は、岐阜県が担当県となり、6月6日、7日の2日間、岐阜市内において、各県、市町村、医療機関等から多数の方々の参加を得て開催いたしました。
 講師には、結核研究所対策支援部から宍戸副部長、伊藤医学科長、小林保健看護学科長を、また厚生労働省健康局結核感染症課から佐野国際感染症情報専門官をお招きし、合同講義及び分科講義として、それぞれ専門的な立場から、豊富な経験に基づいた貴重なご講義をいただきました。わが国の結核対策の第一線で活躍されている方々から、最新の知識と情報を得られる数少ない機会とあって、受講者の方々は大変熱心に聴き入っていらっしゃいました。また、結核対策の転換期を間近に控えた今年度は、例年にも増して受講者の関心も高く、会場からは数多くの質問が寄せられ、各講義とも終了予定時間をオーバーする程の活発なものとなりました。
 特対事業の報告・評価では、三重県から「結核モデル診査協議会公開研修会」について、豊田市から「コホート検討会」など治療成功率向上のための対策について、岐阜市から近年の特対事業について、それぞれ報告をしていただき、岐阜県からも東濃地域の特対事業について報告を行いました。各自治体の特対事業への取り組みを詳しく知ることができ、今後の結核対策を考える上で大変参考になるものでした。また、講師の先生方にも助言者として同席していただき、専門的な立場から的確なアドバイスをいただくなど、非常に有意義な場となりました。
 講習会終了後に開催した担当者会議では、事前に各自治体より寄せられた質疑、事例について検討し、活発な議論がなされましたが、多くの質疑を一度に取り上げたことで内容がやや散漫になってしまったようで、もう少し議題を絞って行うべきだったかと感じております。
 最後になりましたが、参加していただいた各自治体、医療機関の方々、2日間にわたり講義、助言をいただいた先生方にこの場をお借りして感謝申し上げます。
 
講習会の様子(滋賀県)
 
近畿地区
滋賀県健康福祉部
健康対策課副主幹
古池 孝之
 
 本年度の近畿地区の講習会は、滋賀県を当番県として、10月1日、2日の2日間大津市内で開催しました。開催が、「小・中学校におけるツベルクリン反応検査・BCG再接種の廃止」が提言された後であったため、各府県・政令市からの参加者延べ320名と、関心の高さが伺えました。
 今回の講師は、厚生労働省結核感染症課神ノ田課長補佐、結核研究所の石川副所長、結核予防会本部の山下事業部長及び複十字病院の中嶋副院長にお願いし、「結核対策の包括的見直しに関する提言」の解説を中心に、患者管理と保健指導など最新情報を盛り込んだ講義が行われました。
 2日目の特別対策事業報告では、今後の結核対策で柱となるDOTS事業と患者管理指導に焦点を絞り、1本目の柱として、近畿地区でのDOTS事業の先駆的取り組みをしている大阪市の報告を皮切りに、昨年度から取り組みを始めた神戸市及び東大阪市に報告いただきました。
 また、2つ目の柱である患者管理指導については、保健所と医療機関の連携に加え、福祉関係部局及び介護保険関係部局との連携の重要性について、京都府と本県が報告を行いました。
 そして、近畿地区では、講習会と同時に担当者会議を実施していないことから、各府県における最近の取り組みとして、「結核診査協議会」に着眼点をおき、和歌山県、兵庫県、京都市及び奈良県の順で報告いただきました。その後、大阪府より野宿者健診についての話題提供を行っていただきました。
 今回の講習会では、全国的な動き及び各府県市での取り組みを参加者に伝えることで、今後の各地域における特色のある結核対策実施に向けた情報を提供させていただきました。
 最後になりましたが、本年度の講習会の開催にあたり、本県の都合により当初の日程を変更しましたことで、講師、受講者及び関係機関の方々にご迷惑をお掛けしましたことをお詫び申し上げます。
 
中四国地区
香川県健康福祉部
薬務感染症対策課副主幹
三村 千代栄
 
 今年度は、3月21日付の『BCG再接種廃止』『X線検診も節目のみ』という結核予防対策の根幹をゆるがす新聞記事で始まりました。私自身も新聞で初めて知り、厚生労働省へ問い合わせましたが、具体的なことはまだ決定していないという回答しかもらえず、関係者からの照会の対応に本当に困っておりました。
 そのような状況の中、平成14年度の中四国結核予防地区別講習会が、6月13・14日の両日、高松市で開催されました。
 当日は、結核研究所から森所長、宍戸対策支援部副部長、小林保健看護学科長、星野放射線学科科長代理、また厚生労働省から井内予防接種専門官を講師として迎え、結核対策について、それぞれ豊富なご経験と専門的な視野から貴重なご講義をいただきました。
 合同講義では、森所長に「結核対策の包括的見直しに関する提言」についてお話しいただきましたが、受講者の知りたいことの核心に触れるタイムリーな内容であり、結核制圧への新しい歩みを始めるにあたり、大変有意義な研修会となりました。
 職種別の講義では、第一線でご活躍中の講師の先生方から直接、ご指導いただける貴重な機会であり、受講者からも積極的な質疑が出され、予定時間をオーバーしましたが、講師の先生方には休憩時間まで熱心にご指導・ご教示いただきました。
 また、各自治体からの特対事業報告では、(1)結核医療適正化事業(高知県)、(2)結核対策協議会(岡山県)、(3)幼児のBCG接種時期及び針痕数調査事業(呉市)、(4)結核対策システム再構築事業(広島県)についてご報告いただき、参加者からの質疑とあわせて、助言者の先生方に専門的な視点から的確なアドバイスをいただき、今後の結核対策の実施にあたり大変参考になったと思います。
 最後に、誌面をお借りして、ご指導いただいた先生方、参加されました皆さん、そして、ご多忙中にもかかわらず特対事業報告をお引き受けいただいた自治体の方々に対し深く感謝申し上げます。
 
九州地区
佐賀県厚生部
健康増進課感染症対策係主査
橋本 好弘
 
 平成14年度の九州地区の地区別講習会は、佐賀県が担当県となり、7月18日、19日に佐賀市内のはがくれ荘で約190名の参加を得て開催されました。
 合同講義では、結核予防会青木会長から「結核対策の包括的見直しに関する提言」の解説と題して、結核及び結核対策を取り巻く状況の変化と今後の結核対策がどういう方向で動こうとしているのかをお話していただきました。結核対策の見直しと具体的な提案というテーマであり、参加者の関心も高く、結核対策を再認識するよい機会となりました。
 1日目午後の職種別分科会では、医師を対象として、結核予防会第一健康相談所杉田所長から「結核診査協議会の強化と結核標準医療の普及」というテーマで講義していただきました。また、保健師・看護師を対象として、山下事業部長から「治療成功に向けた保健指導」というテーマで講義がなされ、日本でのDOTSの実例等を紹介していただきました。各講義とも参加者から多くの質疑が出されて、活発な意見交換が行われました。
 2日目の特対事業の報告・評価では、独自の取り組みを行っている保健所から発表(長崎県の「在宅慢性肺機能障害者の在宅支援」、沖縄県の「定期外健康診断データベース作成による精度管理事業」)をしていただきました。その後、結核予防会の青木会長、山下事業部長、厚生労働省結核感染症課の佐野専門官から助言をいただきました。特に、沖縄県の「定期外健康診断データベース作成による精度管理事業」は、会場から「マニュアル化して、全国の保健所に普及させて欲しい」との意見が出され、非常に興味深い報告となりました。
 講習会に引き続き、九州各県・政令市からの特対事業の報告、情報交換を目的に九州各県・政令市結核担当者会議を行いました。各自治体から特対事業1事業を紹介し、結核予防会の先生方から今後の取り組みにつなげていけるよう、助言をいただきました。
 2日間の各講義には、結核対策の最新情報が詰め込まれており、参加者にとって大変有意義な講習会になったと思います。
 最後に、講師の先生方、講習会に参加していただいた方々にこの誌面をお借りして深く感謝申し上げます。
 
結核予防会の本
『結核の統計2002』
厚生労働省健康局結核感染症課監修
A4判・124頁 定価2,940円(本体2,800円)
 
結核・呼吸器疾患の1年分資料の集大成
 
 保健衛生行政関係者はもとより、一般の医師・研究者・学生の方にもご活用いただけます。病院はじめ看護・保健師学校、医学系大学にはぜひ備えておきたい一冊です。
 
目次
■グラビア20頁 ■資料編13頁 ■平成13年結核発生動向調査年報集計結果 89頁 付1 全国保健所別にみた指標値の分布 付2 結核管理図 付3 都道府県別管理図の指標・偏差値
 
2002年9月発行
 
問合せ先:財団法人結核予防会 出版調査課
〒204−8533 東京都清瀬市松山3−1−24 結核研究所1階 TEL0424−93−6783(直) FAX 0424−93−6832(直) E-mail book@jatahq.org  URL http://www.jatahq.org







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