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田んぼの生物指標2
■ 田んぼのヤゴを調べよう
 
 最近、トンボが環境の指標としてよく取り上げられるようになってきました。これはいったいなぜでしょう。その秘密を知るにはトンボについてよく知ることが大切です。さて、現在トンボの棲息は止水域に大きく広がっています。止水域では次のような特徴があります。「水温の変化が激しい(一般に高くなる)」「干上がってしまう可能性が高い(水域の不安定性)」です。田んぼで生活するためには、これらの環境に対する適応性が必要ですが、彼らはたくみな生活戦略を持っています。最近水田に多かったシオカラトンボの観察は難しくなってきています。強い農薬が使われたことも大きな原因ですが、冬季に水の残っている水田がなくなったことや用水路が整備されコンクリートになってしまったことも原因と考えられます。アキアカネ、ナツアカネ、ノシメトンボ、ウスバキトンボなどのアカネの仲間も水田で繁殖するトンボです。田んぼは水深が浅く、底が泥質の環境であることがこれらのトンボの棲息に適しています。水田ばかりでなく近くの用水路やため池なども調べてみてください。ヤゴの段階で種レベルの同定を行うのは難しいため、ヤゴの形態から(1)アカトンボ型 (2)シオカラトンボ型 (3)ヤンマ型 (4)イトトンボ型の4タイプに分けて調査してみましょう。
 
田んぼのヤゴ図鑑
■ アカトンボやシオカラトンボ、ヤンマ類など
(不均翅亜目;ふきんしあもく)
 体が太めで、尾鰓(びさい:尾のえらのぶぶん)がありません。水中の酸素は、肛門から水を取り込み、直腸の中にある直腸器官鰓(ちょくちょうきかんえら)から吸収します。泳ぐときは、肛門から吸い込んだ水を一気に噴出すジェット推進です。
 
(1)アカトンボ型
 アカトンボ型のヤゴです。頭が横にとがっていて逆三角形をして、胸より横に飛び出ています。複眼は大きく、横に出っぱっています。
 同定のキーとなるのは、腹部第8節の側棘(そっきょく)の長さです。
 
(2)シオカラトンボ型
 頭は長方形で胸とほぼ同じ幅です。複眼は小さく、目立ちません。シオカラトンボ型のヤゴのほとんどは、シオカラトンボです。ときおりオオシオカラトンボが混ざります。シオカラトンボは背棘(はいきょく:背中の棘)がなく、オオシオカラトンボには背棘がある点から区別できます。
 
(3)ヤンマ型
 細長い体形で大型(40mm)、がっしりしています。
 
■ イトトンボ・モノサシトンボの仲間
(均翅亜目;きんしあもく)
 
(4)イトトンボ型
 体が細長く、腹の先に3つの尾鰓(びさい)をもち、ここから水中の酸素を吸収します。泳ぐときは体をくねらせて泳ぎます。ヤゴの段階での種の同定はむずかしいので成虫になってから確認しましょう。
 
■ ヤゴの分類の参考ホームページ;
ヤゴ救出ネット;
 
日本産トンボリスト
 
ヤゴをしらべる/トンボのなかま
 
*この図版の版権は仙台市科学館岩渕成紀にあります。他に転用、転載する場合は岩渕までご一報ください。







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