公園の自然を楽しもう
都市公園における自然観察の展開例
― 林試の森公園/秋 ―
薄葉 重
著者プロフィール
栃木県那須町に生まれ(1931年)、高校時代に昆虫に興味をもち、昆虫愛好会の創立に参加。
東京教育大学理学部生物学科卒業後、東京都内の中学・高校で理科・生物科を担当し、1992年両国高校を定年退職した。その間日本生物教育学会副会長などを務める。1994年より東京環境工科専門学校で環境教育などにあたっている。
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著書 |
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虫こぶのひみつ |
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昆虫と会おう 長谷川 仁(編) |
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1991、誠文堂新光社 |
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虫こぶ入門 |
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1995、八坂書房 |
はじめに:
東京都品川区にある「都立林試の森公園」において、数回自然観察会を行う機会があった。
その際の解説・提示した資料などの、いわば「素材」を秋・樹本を中心として記述する。
実際の展開に当っては参加対象者の年令・興味・知識量・配当時間にあわせ、内容を取捨選択して組み立てている。
林試の森公園の概要:
明治33年(1900年)、当時の農商務省林野整理局の「目黒試験苗圃」としてスタート。その後林業試験場、林野庁所属となった(昭和53年まで)。筑波研究学園都市への移転に伴い、平成4年に都立林試の森公園として完成開園した。
面積120.762m2(1周45分)樹木6700株。
連絡先:林試の森公園管理所
〒142 品川区小山台二丁目6番11号
03(3792)3800
南門 東急目蒲線『武蔵小山駅』下車徒歩10分
東門 東急目蒲線『不動前駅』下車徒歩15分
あかしあ門
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渋谷駅発恵比寿駅経由五反田駅行き
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渋72バス『林試の森入口』
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五反田駅発恵比寿駅経由渋谷駅行き
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渋72バス『林試の森入口』
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解説内容:
1. サルスベリ・・・ポイント(1)
(1)葉序を下から見る→変化が多い。
図鑑で記述例
I 対生または亜対生から互生する。[葉でわかる樹木]
II 対生またはほぼ対生。[牧野]
III 互生またはほぼ対生。[校庭の樹木]
(2)花期が長い→百日紅
(3)樹肌がなめらか→白い部分は“粉”。こすれば落ちる。
2. マツ類・・・ポイント(2)
(1)短枝と長枝→マツの葉は枝(短枝)ごと落ちる。
(2)公園内のマツの“落葉”を拾う。
I 二葉・・・クロマツ アカマツ フランスカイガンショウ(2)
II 三葉・・・ダイオウショウ(22) リギダマツ
III 五葉・・・ヒマラヤゴヨウ(2) ヒメコマツ(21)
IV 短枝上に多数が束生・・・ヒマラヤスギ(22)
3. アオキ・・・ポイント(3)
(1)雌雄異株
(2)アオキミタマバエによる果実の変形(アオキミフシ)
(3)公園内の雌雄異株の樹木をチェックする。( 表1)
4. グミ類・・・ポイント(4)
(1)葉うらの“白い”のは星状毛→セロテープではぎとる。(※1)
(2)シロダモ・クスノキの葉のうらが白いのはワックスによる。→熱するとなくなる(※2)
5. ミズキ・・・ポイント(5)
(1)仮軸分枝
(2)葉うらが白いのは?(※1・※2)
(3)らせん紋道管内の白い糸をみる。→葉・葉柄をちぎる
ハナミズキ・トチュウ[(22)]でもやってみる。
6. イイギリ・・・ポイント(6)
(1)雌雄異株
(2)赤い実は、高いところから鳥に食べられる。
7. イスノキ・・・ポイント(7)・(21)
(1)アブラムシによる虫こぶを探す( 表2)→笛を鳴らす。(ひょんのき)
(2)虫こぶのタンニンの検出→おはぐろ・草木染め
8. ヒノキ・サワラ・・・ポイント(8)
(1)さわって区別
(2)葉うらの気孔線で区別
9. ノグルミ・・・ポイント(9)
(1)果穂を探す。→ほうの間に翼のある堅果
(2)オニグルミ[(5)]と葉にさわって比較。→毛が多く核果
10. イヌブナ・・・ポイント(10)
(1)落葉を拾って、ブナ[(15)→(17)]のそれと比較→側脈の数、長い毛の有無
11. アベマキ・・・ポイント(11)・(12)
(1)樹皮のコルク質発達→コルクガシの代用
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(2)クヌギ・クリとの葉の区別。
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(3)果実・穀斗を拾う。→
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ハナガガシ[(13)]
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アメリカガシワ[(23)]
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シラカシ、アカガシ、スダジイなど
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12. ナツヅタ・・・ポイント(12)
(1)1枚でも複葉(単身複葉)←ア 長枝には小葉が3枚・2枚・1枚つく。短枝は1小葉のみ
←イ 小葉基部と葉柄基部との2段階で落葉。
(2)紅葉のしくみ→他の葉の影になった部分は紅葉しにくい。
13. シラカンバ・・・ポイント(13)
(1)日かげになって弱っている。→陽樹
14. タラヨウ・・・ポイント(14)
(1)雌雄異株
(2)死環現象→経文を書く
I 生葉・・・AとBとが接触しない→緑色
II 適温で加熱あるいは押圧・・・AとBとが接触→黒色
III 高温すぎるとBがこわれる。→緑色のまま
15. ケヤキ・・・ポイント(15)
(3)落葉を拾う。形・大きさなどをくらべる→変化が多い
16. ヤドリギ・・・ポイント(16)
(1)鳥によって種子が運ばれる。
(2)種子が地面に落ちてもダメ。→半寄生
17. オリーブ・・・ポイント(17)
(1)硬葉樹(※3)→地中海性気候(※3コルクガシ、ユーカリ)
(2)オリーブ油→果汁を皮膚につけてみる。
18. プラタナス類3種・・・ポイント(18)
(1)カエデバ(モミジバ)スズカケノキはアメリカスズカケノキとスズカケノキ(小アジア産)との雑種。
19. マルバチシャノキ・・・ポイント(19)
(1)黄色の果実
(2)ざらつく葉→衣服につけてみる。
20. ナンキンハゼ・・・ポイント(20)
(1)紅葉
(2)種子から“ろう”を採る。→乾燥した種子をもやしてみる。
21. トチュウ
(1)杜仲茶・・・ポイント(21)
(2)ゴム質を含む。→葉をちぎってみる→ミズキ[(5)]と比較。
22. タイサンボク・・・ポイント(22)
(1)古い果穂を拾う。→原始的な花の特徴
(2)ホウノキ[(22)]コブシ[(21)]ユリノキ[(20)→(21)]の果種を拾う
23. ユーカリ類・・・ポイント(23)
(1)硬葉樹
(2)等面葉
(3)精油を含む→においをかぐ。枯葉を燃やす。
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