概要紹介
「公的土地評価の個別的要因を中心とした比較」及び「個別的要因を固定資産税評価に反映させる場合の考え方・手法等」
地価公示の評価、相続税の評価、固定資産税の評価について、根拠規程や目的、求めるべき価格等の項目についての整理及びこれらの公的土地評価に適用される価格形成要因の比較、並びに、固定資産税評価の市街化宅地評価法における「主要な街路」「その他の街路」について、調査対象とした3市内の価格形成要因のうち個別的要因の格差が生じない整形な宅地、格差が生じる宅地について、それぞれ鑑定評価を行い、当該宅地の固定資産税評価及び相続税評価により算定される価額について調査比較を行った。これらの整理・比較・調査を基礎として、固定資産税評価に反映すべき個別的要因のあり方について議論を行い、委員の意見を次の論点に整理した。各論点毎の主な意見は下記の通りである。
○課税標準である「適正な時価」の内容
固定資産税の「適正な時価」とは、不動産鑑定基準でいう「適正な価格」、相続税でいう「時価」と同義とも考えられるが、固定資産税評価が約1億8000万筆もの土地の評価を短期間にまとめて評価をしなければならない大量一括評価であること等の理由から、不動産鑑定基準や相続税の評価対象とは異なりうるものであること。
○固定資産税評価に反映すべき個別的要因
個別的要因の把握が実務上容易か否かという点に関しては、個別・具体の個別的要因に係る検討を踏まえ、より詳細にしていく必要があること。
○固定資産評価基準にとりこむべき個別的要因
固定資産評価基準の性格を踏まえると、個別的要因が価格に及ぼす影響はある程度普遍的であることが必要であり、また、評価基準に取り込むべき個別的要因は合理的な根拠に裏付けられた一定の数値を示す事が必要であること。
○所要の補正のあり方
多くの市町村で補正されているものの、地域によって補正率が異なると考えられるものについては、評価基準にそのまま取り込む事ができないため、県単位など広域的に市町村が情報交換を行うような仕組みをつくり、所用の補正について地域で均衡化・適正化を図ることを検討すべきであること。
○評価に必要な情報に係る申告制度
個別的要因が緻密化されると、必要な情報を把握することが実務上困難なものが今後増えていく可能性がある。現行法では、償却資産、住宅用地特例等に係る申告制度があり、これは、賦課課税方式を前提としつつも、市町村による情報収集の一環として制度化されたものである。
このような申告制度を参考として、土地評価に必要な情報についても、申告制度を活用する事が考えられること。
○評価割合のあり方
負担調整措置の適用により、商業地等の課税標準は上限が固定資産税評価額の70%であり、その固定資産税評価額は地価公示価格の7割を目途として評定されているため、これを掛け合わせると地価公示価格に対する課税標準の割合は5割程度となることなどから、地価公示に対する評価額の割合をさらに落とすべきとの見解もあること。
固定資産税に反映すべき個別的要因の考え方・手法等について検討を行ったが、十分な整理ができなかった事項については、固定資産税制度のあり方を含め今後とも議論を深めていく必要があるとした。
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