日本財団 図書館


[10月19日(土):13時30分〜16時50分]
 
テーマ:
「秋と山の動植物」木の葉・きのこ・からす・うさぎ・いのしし・みみずく
配布物:
日程表
 
折り紙セット(15cm紙10枚、きのこ用紙1枚)
教室内配布物:
うさぎ(造形折り紙、25cm紙)
 
みみずく(25cm紙、目用三角折り紙2枚)
 
いのしし(35cm紙)
 開始30分前から子どもが来館。休日ということもあり、3世代参加が多かった。親子参加が多いが、園児から小学生までの子どもとその親世代、祖父母世代という広い年齢層が一緒になって行うので、終始和やかな雰囲気が会場を包んでいた。
<木の葉><きのこ> 秋の風物詩として2種類ずつ折った。木の葉両面どちらから見ても紙の裏面が出ないように折った。木の葉の裏側は折り紙の端がまるで葉脈のように見える形になっている。きのこはおとぎ話に出てくるような‘かさ’の大きなきのこと、背の高いきのこを折った。「紙の重なり部分は、着物の合わせと同じように、自分から見て左側が上になるように折った方が、人の感覚に合っている」と吉澤先生が説明した。
<うさぎ> 夏にも折ったが、今回からの参加者もいたので、改めて習った。いきなり造形用折り紙で折ったが、子ども達はかわいいうさぎに大喜び。また、夏に参加した人は、前回は前のめりに転んでいたうさぎが、バランスよく立つことが出来るようになっていた。回を重ねるごとに上達していることが、目に見えて判った。
<からす> 小さい上に2本足で立たせなくてはいけなく、しっぽがどうしても着いてしまう人が多かった。2本足のものは何を折っても同じだが、最初に足の付け根を折るところでほぼ出来あがりのバランスが決まってしまう。修正が難しいので、スタッフに質問、手助けを求める子ども達が多かった。
<いのしし> 基本の形が夏に折った恐竜と同じであったので、比較的判りやすかったようだ。ただし、鼻の先を折るとき、言葉の説明と先生の実技だけでは理解できず、ほとんどの人が、スタッフに質問をしていた。子ども達も判らなければ積極的にスタッフヘ問い掛けたり、周りの大人と一緒に考えている姿が見られ、家族に限らず一緒に学ぶ者同士のつながりが少し垣間見えた。
<みみずく> パンダと似た折り方が部分的にあったが、目の色を変えるために途中で、眼の部分に違う紙を貼るという作業をした。頭と体のバランスが難しく、頭でっかちな‘みみずく’が大量に出来ていた。耳の部分が一番難しく、吉澤先生による最終チェックでも、直される人が多く出た。直線的に幅広く繋がっている耳部分を小さく、細く、立体的に折るには、慎重さが要求された。作品を壁に吊るすことが出来るように頭の後ろに紐をつけるようにした。
 前日同様、最後に全員が「吉澤章印」のシールをいただいた。
 
[10月20日(日):9時30分〜12時00分]
 
テーマ:
「大型動物」風車(かざくるま)・グライダー・ゾウ・恐竜(イグアノドン)
配布物:
日程表
 
折り紙セット(15cm紙、10枚)
教室内配布物:
ゾウ(25cm紙)
 
恐竜(35cm紙)
 最終日、一番の目標である恐竜(イグアノドン)を折るということで、多くの人が参加してくれた。特に3世代参加が多く、また1人参加の子どももいたが美術館で出会った大人達と一緒に折っていた。
<風車> 基本折りの一つをそのまま利用した遊べる折り紙。手のひらと指で押さえて吹くと、くるくると回った。他に鉛筆に指して回したり、糸をつけて走る遊び方を紹介。
<グライダー> 一般的に折る飛行機とは違い、飛距離が長い折り方を教わった。折った作品を飛ばしあって、数分遊んだが、跳びすぎて自分の作品が判らなくなってしまったりした。しかし、そうした事柄も知り合ったばかりの人間同士のコミュニケーションに一役かっていた。
<ゾウ> 折るとき、吉澤先生が子ども達に「ゾウを見たことありますか?ゾウは人を乗せたり、座ったりするんですよ」と身振りを交えて説明をした。先生がゾウを折るために動物園へ毎日通って一生懸命に観察して、輪郭だけでなく、動きや生態なども考えながら折ったことを、子ども達に熱心に語った。折り方としては今まで2〜4日間学んできている参加者にとっては比較的簡単だったようで、40分ほどで完成。出来あがったゾウを持って、子ども達が互いに「パォー、パォー」と鳴きまねをしながら、楽しんでいた。
<恐竜> 先生方も「普通はこのような折り紙教室では教えません。特別に折りますので、皆さん頑張って最後まで折って下さい。」と難しいことを強調していた。実際、折りが複雑で細かいので完成まで1時間あまりかかった。腕・体から足にかけての折が、「折る」という作業と「立体的にする」作業が一緒になっているために複雑化し、一折進めるごとにスタッフの先生方が参加者の間を飛びまわって教えていた。子どもよりも大人の方が飲み込みが悪く、苦戦していた。腕の部分は余りにも折りが重なっているために、細く立体的に折るには子どもの力では無理があり、大人の手助けが必要だった。吉澤先生も、イグアノドンの生態や研究結果について、細かく説明をしてくださり、より実物に近い形を追求していることを熱心に語った。例えば、イグアノドンのしっぽは昔の研究では「地面に着いてないと立てない」といわれていたが、その後研究が進み実は「しっぽは地面にはついていなかった」と発表されると、吉澤先生は既に完成させた作品を事実と同じように、しっぽが地面につかず、2本足で立つイグアノドンヘと変更した。つまり、自分のイメージだけ出なく、一つの作品を作り上げるまでに、徹底的に対象を観察・研究しているのである。
 出来あがった作品は昨日と同様に「吉澤章印」のシールをいただいた。他の作品より時間をかけて一折一折確認しながら折った作品なので、どの作品も素晴らしい出来映えで、先生からの直しもほとんど無かった。子ども達の達成感に満ちた表情が非常に誇らしげであった。
 
■作品展示「Paper ZOO」
 創作折り紙教室(全5回)終了後、10月24日(木)〜11月30日(土)の約1ヶ月間、当館多目的ホールに「Paper ZOO」を作成・展示。子ども達の承諾を得て作品を約230点を借用・展示した。海・草原・森・恐竜の世界を展開。
 海に魚で「スイミー」を作ったら、子どもは勿論、大人にも喜ばれた。また、カモメはモビールの形にして、天井から吊るしゆらゆらと飛んでいるイメージを作った。みみずくを空に飛ばしたり、猿を樹に登らせたりした。
 展示期間中、当館を訪れた入館者にも非常に好評で、特に子ども達には大変喜ばれ、「恐竜がいる。折ってみたい」「今度はいつ折り紙教室があるの」など、折り紙の魅力に惹きつけられた人達が大勢いた。恐竜など一枚で折ってあり、切ることもなく、「折る」ことのみで出来ていることを説明すると、ほとんどの人が驚き、興味を持ったようである。大人からも「子どもや孫に教えたいから、もっとこのようなワークショップを開いて欲しい」といった声が多く寄せられ、作品展示の効果を肌で感じた。
 参加者は特別割引きで、「Paper ZOO」を含む全館を見学できるように設定し、また土曜日は小・中学生が無料なので、土曜日を中心に作品展示を見に来て、自分の作品を見つけると、とても嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
 
■成果と今後の課題
 計5日間の短い時間でも集中して学んだために、回を重ねるごとに折り方がスムーズになり、上達していた。紙の扱い方も、はじめの頃は先生から「紙は生きています。皆さんが命を与えるのです。一枚一枚大切に扱ってください」など、注意される場面が少なくなかったが、それもなくなり、紙の大切さを理解し、丁寧に扱えるようになった。
 教わる一つ一つの作品は、全て吉澤先生の創作作品であり、子ども達は一つ折るごとに喜びを感じ、難しい折り方にも果敢に挑戦し、最後まで自分の力でやり遂げていた。また、家族や友人、始めてあった人と協力する姿が見え、世代を超えたコミュニケーションの取り方を身につけていた。
 吉澤先生の創作折り紙は、私達が気軽に考えている折り紙とは違い、精密な考察の上に作り上げられている。そのことを、先生自身の言葉で伝えられることによって、子ども達は遊びだけでは終わらない「折り紙」の深さの一端に触れることが出来た。今回は基本を学ぶこと、折り紙の楽しさ、不思議さを伝えることを目的の一つとし、達成できた。開きかけた興味への扉を閉ざすことなく、基礎からどう自分の折り紙を生み出して行くことが出来るのか、自ら考え挑戦する機会を美術館から提供していく必要がある。







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