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序文
健全な海洋環境を維持することの重要性が強調されてから相当の期間が過ぎています。海洋の健全性を守ることは、即ち、海洋の物質循環システムの復元力の範囲を超えない状況を維持することに他ありません。
しかしながら、我が国周辺の海域、特に海水の流出入が十分行われない閉鎖水域で、この物質循環の復元力を大幅に超過する利用が行われてきました。現在は、たとえ、この閉鎖水域への負荷物の流入が物質循環の可能な範囲内にあったとしても、これまで長年の堆積やそれからの湧出、浮遊懸濁物などによりこの物質循環の機能が阻害されている所が多数あります。
これを取り除く方法として物理的に取り除く方法がありますが、膨大なコストがかかることが予想されます。本来海洋が持つ循環機能を活性化することにより時間は多少要しても着実な環境回復方法が期待されるところであります。
社団法人日本海洋開発産業協会は、沿岸域の閉鎖水域の水中懸濁物による汚濁を短期間にフィルターで取り除き、太陽光が海底に届く環境を取り戻す浄化装置を提案しているものであります。海洋微生物、海底生物の活動を活性化させるとともに、海草類の発育を促すことによって、本来海の持つ循環システムの機能を加速することが目標です。本年は、この装置を製作し、尼崎の運河に設置します。
更にこの装置は、船舶のバラスト水に存在する微生物の除去や赤潮のプランクトンなどの除去にも応用することも考えられます。
社団法人日本海洋開発産業協会は、日本財団からの支援を得ながら、本システムの効果を実証することにしております。
今後とも皆様方からのご指導、ご叱正を賜りたく存じます。
平成15年3月
社団法人 日本海洋開発産業協会
会長 大庭 浩
水質改善のための超高速海水浄化システムの実用化
「超高速海水浄化委員会」委員名簿
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氏 名 |
所 属 |
役 職 |
| 委員長 |
關 文威 |
筑波大学 |
名誉教授 |
| 委 員 |
石丸 隆 |
東京水産大学 海洋環境学科 |
教授 |
| 委 員 |
安藤 哲士 |
東京都 港湾局 港湾整備部 |
参事 |
| 委 員 |
木村 満男 |
千葉県 環境生活部 |
水質保全課 副課長 |
| 委 員 |
嵐 一夫 |
兵庫県 県民生活部 環境局 |
水質課 課長 |
| 委 員 |
石田 和憲 |
(株)関西総合環境センター 環境化学部 |
副部長 |
| 委 員 |
茅野 秀則 |
(株)竹中工務店 技術研究所 |
主任研究員 |
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1. はじめに
内湾、港湾、運河等の閉鎖性海域は、外部との海水交換が行われにくく、汚染物質が蓄積しやすいため、汚濁の進んだ海域が多くみられる。このことは漁業への影響を始めとし、様々な水域利用において障害となり、我が国にとって大きな社会問題となっている。例えば、漁業組合に対する平成8年度の調査によると、約44%の海域において浄化が求められているという結果が得られている。
閉鎖性海域の水質改善は、その海域に流入する汚濁負荷量の削減が重要であり、最近、法的規制がなされ改善が進められているが、閉鎖性海域ではすでに大量の有機物がヘドロとして堆積しているために、規制による効果には大きな期待が持てず、大規模な海水浄化を必要とする海域が増加している。
これらを解消するためには、長期的な視点に立って、海域の特性に適する自然浄化能力を活用する浄化システムや浄化の物質循環に対する効果を総合的に評価する技術の研究開発などを地道に実施することが必要であるが、一方極端に汚濁の進んだ運河などの閉鎖海域においては短期間に、しかも直接的に浄化する技術の開発も望まれている。
本事業の目的は、汚濁の進んだ運河などの海域を対象として、該当海域における生態系に対する影響にも配慮しつつ、汚濁海水を短期間に直接浄化して太陽光が海底に届く環境を取り戻し藻類や生物を活性化するシステムの実用化を図るものである。なお、対象海域の底泥汚濁状況あるいは流入する汚濁負荷量などによっては、本システムによる直接浄化を何回か繰り返すことにより、徐々に底泥の改善を図れる可能性も考えられる。
本システムを実用化することにより、閉鎖性海域の環境問題を解決するだけではなく、海域周辺地域の環境ポテンシャルも高めることができ、ひいては地域経済の発展にも寄与するものである。また、本浄化システムは、同様な環境問題に苦しむ海外各国においても活用することができるものであり、従って国際的な協力にも寄与することができる。
本年度の事業は、昨年度選定した実施海域である尼崎市の北堀運河を対象として実証システムの設計及び製作、設置を行うものである。
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