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4.1.4 考察
 
4.1.4.1 測定結果の検討(測定記録例:添付資料13〜15参照)
(1)3物質ともに500μsでは取り込み速度が速すぎてdp/dtのデータの安定性に欠け、高値であるが不安定なデータとなった。ただし、Pmaxへの影響は少ない。
(2)反応の早いBPOにおいてはサンプリング間隔が短いほどPmaxが大きくなる傾向を示し、最大ピークに追随していることがわかる。
(3)dp/dt はサンプリング間隔が短い水準ほど大きくなった。最大変化率の部分をとりこんでいるといえるが、データの安定性は悪い。
(4)結果として、サンプリング間隔はPmaxには影響小。dp/dtには影響大となった。従って、早い反応性を保持する物質に対してはサンプリング間隔を500μs程度にし、予備試験を行い、dp/dt測定に対応すべきと結論した。
 但し、膨大なデータ量となるため、使用するデータ処理機器の能力の保持が条件となる。
(5)反応速度の速い物質に対するmsレベルでのスムージングはデータを低値へ平均化させる作用があるので基礎データを把握した後に使用すべきである。
(6)2ms を超えるサンプリング間隔の測定は不必要と判断する。
 
4.1.4.2 最終測定条件の検討
 既報MCPVT関連報告書、発表論文等を参考に、各種条件の検討を行ってきたが、国際的整合性を考慮した最終的測定条件の決定が必要となった。データを集積しても測定条件が異なるデータであれば、その価値は半減する。
 当部会発表データが国際的に認められるためにも、15年度に向けて測定標準条件の固定が不可欠となり、危険性評価部会において下記の条件が合意された。
(1)新標準測定条件
(1)容器サイズ・・・6ml
(2)試料量・・・1g
(3)昇温速度・・・2.5K/分
(4)サンプリング速度・・・0.5又は1.0m sec
(5)スムージングポイント数・・・ 0〜3
(2)新標準測定条件の問題点
(1)容器サイズ及び試料量は従来要件と整合性あり
(2)昇温速度は10K/分が従来からの日本提案値であり、この数値は既存の国連勧告例示試験方法と比較しても遅い位である。さらに、この数値の変更は本年までの数多くのデータの棄却を意味する。また、測定時間が4倍になり作業性も悪化する。
 しかし、OECDにおける標準条件が2.5Kに固定された現在、これから出される報告は、この条件にて測定したものでないと評価されないことが予想され、やむをえない変更と判断した。
(3)サンプリング速度は、日本においては5msが標準であったが、当部会データを見ても、早い反応には対応できず不都合であり2ms以下への変更を考えていたところである。OECDにおいても0.5または1.0と表記しており、反応の早い物質に対応した2水準を用意すればと考えた。
(4)スムージングポイントについてはOECDのコメントは特にないが、5ポイント以上のスムージングは低値を与え危険である。スムージングなしで異常値ピークの検証除外をおこなうか、2〜3点のスムージングに留めるべきである。個々の物質の反応特性とサンプリング速度とのクロス評価で決まる案件である。
4.1.5 結 言
 
4.1.5.1 成果の概要
(1)平成14年度事業において、圧力容器の改良・圧力容器密閉手順の数値化・圧力容器各種パッキンの準備・圧力変換機の統一等、測定機器、装置関係の課題及び計測機器の配置等、操作手順についての課題はほぼ解消された。
(2)データの取り込み及びソフト処理についての計測、解析部門では不整合が表面化した。標準測定条件によるデータの検討が課題であったが、機器測定において測定条件の変更及び処理ソフトの相違はデータの整合性を失わせるため、データ取り込み条件の標準化・解析ソフト内容の検討等を行い各試験室間のデータサンプリング間隔及び処理ソフト機能の標準化を行った。
(3)第4回部会にて、昇温速度標準試験値の変更が合意された。従来の日本提案内容とは異なりデータの継続性も失われるが、今後の国際整合性を考慮して「昇温速度を2.5K/分」とした。
 最終年度である15年度事業においては、当初目的を達成する成果を上げることができるものと確信している。
 
4.1.5.2 今後の課題
 15年度は、調査研究の過程で明らかと成った下記問題点を検討し、その解決を図ってゆく。特に基本測定条件である昇温速度の変更が行われたのでデータの再収集も必要となった。
(1)合意された新標準試験手順及び改良型試験装置によるデータの検証。
(2)国連指定物質に対する新標準試験条件による共同試験の実施。
(3)国連勧告例示試験方法結果とMCPVT試験結果との整合性の検証。
以上
 
参考:国連指定物質の紹介
MINI CLOSED PRESSURE VESSEL TEST:OECD-IGUS EOS WORKING GROUP(1999 MARCH)
 
(1) TEST MATERIALS
 
rate substances source
(1)High 1-Bromo-2-nitro-1,3-propandiol(Bronopol) Aldrich 98%
(2)Medium Azobis(isobutyronitrile)(AZDN) ACROS 98%
(3)Low Malononitrile Aldrich 99%
 
(2) DATE COLLECTION
(1)maximum pressure P(max),(kPa)
(2)maximum rate of pressure rise, P-rate(max) (kPa/s)
(3)temperature of the reference at peak sample temperature T(max)







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