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平成14年神審第89号
件名

プレジャーボートスーパーウィザードII被引ウェイクボーダー負傷事件(簡易)

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成14年12月2日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(大本直宏)

副理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:スーパーウィザードII船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
ボーダーが腰椎横突起骨折等

原因
見張り不十分

裁決主文

 本件ウェイクボーダー負傷は、転倒落水したウェイクボーダーに向け反転して進行する際、更なる低速力としたうえでの前方の見張り不十分で、同ボーダーのウェイクボードに接触し、同ボードがウェイクボーダーの背中を直撃したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年8月14日13時30分
 兵庫県東播磨港
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートスーパーウィザードII
全長 6.43メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 51キロワット

3 事実の経過
 スーパーウィザードII(以下「ウィザード」という。)は、船体ほぼ中央部の右舷側に操縦席、同左舷側に助手席を有し、両席付近の舷側から上方に、やぐら状のウェイクゲートを備えたFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、ウェイクボーディングを行う目的で、D(以下「Dボーダー」という。)ほか2人を同乗させ、船首0.2メートル船尾0.6メートルの喫水をもって、平成14年8月14日10時45分兵庫県高砂市曽根町所在のマリーナを発し、東播磨港の高砂西公共ふ頭に面した水域(以下「高砂水域」という。)へ至り、ウェイクボーディングを続けた。
 高砂水域は、いずれも水路幅約200メートルで、南東方の長さ約500メートルの水路南東部に、南西方の長さ約500メートルの水路が接して、逆L字形状をしていた。
 ウェイクボーディングは、トーイングラインとして、長さ18メートル径20ミリメートルの化学繊維索を用い、同ラインをウェイクゲートに係止し、同ラインエンドのハンドルをウェイクボーダーが握り、ウィザードがほぼ全速力前進で航走して、同ボーダーを滑走させるものであった。
 A受審人は、高砂水域のほぼ全域を使い、ウェイクボーダーが順次交替し転倒と滑走を繰り返しながら、時計回りにウェイクボーディング中、13時28分少し過ぎ東播磨港高砂西港西防波堤灯台(以下「西灯台」という。)から021度(真方位、以下同じ。)650メートルの地点で、Dボーダーにトーイングラインのハンドルを握らせ、発進すると同時に針路を148度とし、機関をほぼ全速力前進にかけ、45キロメートル毎時の速力(対地速力、以下同じ。)で、手動操舵により同ボーダーの滑走を開始した。
 A受審人は、13時28分半西灯台から044度545メートルの地点に達し、後方を確かめたとき、船尾方50メートルに転倒落水状態のDボーダーを認め、同人にトーイングラインのハンドルを渡す目的で、速力を16キロメートル毎時に減じて右舵をとり、緩やかな右旋回による反転を開始した。
 13時29分半A受審人は、反転を終え西灯台から044度400メートルの地点で、Dボーダーに向首し針路を029度に定めて進行したが、これまで転倒落水を繰り返してきたので大丈夫と思い、更なる低速力としたうえでの前方の見張りを十分に行わず、そのころ助手席の足元に置いていたラジカセの音が不明瞭となり、斜め下方を向く姿勢をとり、チューニングに気を取られ、Dボーダーから目を離したまま続航した。
 こうして、ウィザードは、13時30分わずか前A受審人がチューニングを終え、顔を上げて前方を見たとき、船首至近にDボーダーの頭を認め、右舵一杯に次いで左舵一杯として、プロペラ接触を避ける操船を試みた直後、13時30分西灯台から039度560メートルの地点において、原針路原速力のまま、船首部がウェイクボードに接触し、同ボードがDボーダーの背中を直撃した。
 当時、天候は晴で風力3の南風が吹き、平穏な海面で潮候はほぼ低潮期であった。
 その結果、Dボーダーが腰椎横突起骨折等の負傷をした。

(原因)
 本件ウェイクボーダー負傷は、兵庫県東播磨港において、転倒落水したウェイクボーダーに向け反転して進行する際、更なる低速力としたうえでの前方の見張り不十分で、同ボーダーのウェイクボードに接触し、同ボードがウェイクボーダーの背中を直撃したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、兵庫県東播磨港において、1人で操舵操船に当たり、転倒落水したウェイクボーダーに向け反転して進行する場合、同人を見失わないよう、更なる低速力としたうえでの前方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、これまで転倒落水を繰り返してきたので大丈夫と思い、更なる低速力としたうえでの前方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、ラジカセのチューニングに気を取られ、同ボーダーから目を離したまま進行してウェイクボードに接触し、同ボードが同ボーダーの背中を直撃する事態を招き、同人を負傷させるに至った。





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