(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年5月6日00時20分
香川県小豆島地蔵埼
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船伸幸丸 |
総トン数 |
199トン |
全長 |
55.78メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
404キロワット |
3 事実の経過
伸幸丸は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A、B両受審人ほか1人が乗り組み、鋼材676トンを載せ、船首2.78メートル船尾3.87メートルの喫水をもって、平成14年5月5日23時05分香川県三本松港を発し、関門港に向かった。
A受審人は、船橋当直を自らが06時から10時及び18時から22時に、B受審人が10時から14時及び22時から02時に、機関長が14時から18時及び02時から06時にそれぞれ単独で就く4時間3直体制に定め、船橋当直者に対して、睡眠時間が少ないなどで眠くなったときにはいつでも報告するように指示をしていた。
A受審人は、出港操船に当たった後、23時14分三本松港一文字防波堤灯台から010度(真方位、以下同じ。)1.3海里の地点で、備讃瀬戸東航路の東口へ向かうために針路を326度に定め、機関を全速力前進にかけ、9.0ノットの対地速力で進行し、同時33分少し前馬ケ鼻灯台から121度3.9海里の地点に達したとき、昇橋してきたB受審人に船橋当直を引き継ぐことにした。
B受審人は、これより先、三本松港入港前甲板上の錆打ち作業のときに異物が目に入り、それを取り出せずに熟睡できない日が3日間続いており、また、5日02時ごろ船橋当直を終えて約4時間休息したのち、鳴門海峡の潮待ちや入港準備で作業に当たり、12時40分三本松港に入港したもので、その後自宅に帰ったが、親戚の人を祭りへ連れていくことなどで睡眠時間を十分にとれず、夕食時飲んだ清酒2合の酒気がやや残っていた状態で昇橋したものであった。
船橋当直の交替時、B受審人は、2時間余りで当直時間が終わるので、居眠りすることはないと思い、睡眠不足であることなどをA受審人に申し出て船橋当直を交替してもらうなど、居眠り運航の防止措置をとらなかった。
一方、A受審人は、B受審人から体調について何も聞いておらず、疲れている様子もわからなかったので、同人に船橋当直を任せ、降橋して自室で休息した。
こうして、B受審人は、船橋当直に就き、前示の326度の針路及び9.0ノットの対地速力で自動操舵により進行中、舵輪の前に置いた背もたれ付きのいすに座っていたところ、23時50分ごろ居眠りに陥った。
伸幸丸は、同じ針路速力で続航し、翌06日00時20分地蔵埼灯台から105度150メートルの地点において、その船首が、地蔵埼の南岸に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力2の西風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
A受審人は、衝撃を感じて直ちに昇橋し、事後の措置に当たった。
乗揚の結果、船首船底外板に亀裂を伴う損傷を生じたが、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、夜間、香川県三本松港から備讃瀬戸東航路の東口へ向け北上中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同県小豆島地蔵埼に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
B受審人は、夜間、香川県三本松港を出航後、睡眠時間を十分に取れない状態で船橋当直を行うために昇橋した場合、熟睡できない日が3日間続いていたうえに酒気がやや残っていたのであるから、居眠り運航とならないよう、睡眠不足であることなどをA受審人に申し出て船橋当直を交替してもらうなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、B受審人は、2時間余りで当直時間が終わるので、居眠りすることはないと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、備讃瀬戸東航路の東口へ向かう単独の船橋当直中に居眠りに陥り、小豆島地蔵埼に向首進行して乗揚を招き、船首船底外板に亀裂を伴う損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。
よって主文のとおり裁決する。