(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年8月26日16時30分
千葉県保田漁港北西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
プレジャーボートイースト ウインド |
全長 |
9.48メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
323キロワット |
3 事実の経過
イースト ウインド(以下「イースト」という。)は、2基2軸のFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人8人を乗せ、トローリングと海水浴の目的で、船首0.50メートル船尾1.00メートルの喫水をもって、平成13年8月26日08時00分横浜市中区新山下の横浜クルージングクラブの係留地を発し、同市神奈川区で燃料を補給したのち、千葉県館山湾に向かった。
A受審人は、10時ごろ同県富山湾沖合に達し、その後同沖合から館山湾沖合にかけて南北に往復しながらトローリングを行い、昼食のため12時30分に同県保田漁港に入港したが、午後は、同漁港北側の海水浴場となっている砂浜沖合で錨泊し、海水浴を楽しむつもりであった。
ところで、前示海水浴場からその西方沖合600メートルに存在する平島にかけての水域は、洗岩、岩礁及び干出岩等が存在する険礁域であった。A受審人は、保田漁港北西方沖合の岩礁等の存在についてかつて聞いたことがあったものの、灯浮標等の標識を認めなかったことから、海水浴場沖合170メートルばかりに見える水上岩付近以外は十分な水深があるものと思い、海図を調べるとか、保田漁港関係者に周辺の水路事情を聞くなどして水路調査を十分に行っていなかったので、このことに気付いていなかった。
13時30分保田漁港を発進したA受審人は、海水浴場沖合に直行しようとしたところ、海水浴場から平島にかけての水域に釣り人の乗った多数の手漕ぎボートを認めたため、険礁域を通過せずに平島西方沖合を迂回(うかい)して同域北側に回り込み、保田港防波堤灯台から342度(真方位、以下同じ。)450メートルの水深4メートルの地点に投錨し、その後、全員で海水浴に興じた。
16時27分ごろA受審人は、帰途に就くこととして揚錨を開始し、同時28分半船首が090度を向首して錨を揚げ終わったとき、右舷船首46度160メートル付近に水上岩を認めたが、水路調査を十分に行っていなかったので、自船の南側の水域一帯が険礁域であることに気付かず、同時29分少し前機関を微速力前進にかけて発進し、右回頭を開始するとともに、徐々に増速しながら進行中、16時30分イーストは、保田港防波堤灯台から347度360メートルの干出岩に、約7ノットの対地速力で170度を向首して乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力2の東風が吹き、潮候は上げ潮の初期で、潮高は90センチメートルであった。
乗揚の結果、イーストは推進器翼、同軸、舵板及び船底外板等を損傷したが、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、千葉県保田漁港北西方沖合を航行する際、水路調査が不十分で、同漁港沖合に拡延する険礁域に向け進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、千葉県保田漁港北西方沖合を航行する場合、同漁港北西方沖合の岩礁等の存在についてかつて聞いたことがあったから、海図を調べるとか、保田漁港関係者に周辺の水路事情を聞くなどして水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同漁港北西方沖合に灯浮標等の標識を認めなかったことから、海水浴場沖合170メートルばかりに見える水上岩付近以外は十分な水深があるものと思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、同漁港北西方沖合に拡延する険礁域の存在に気付かず、険礁域に向け進行して乗揚を招き、イーストの推進器翼、同軸、舵板及び船底外板等を損傷させるに至った。