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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年横審第101号
件名

引船第五十八明神丸引船列乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年12月3日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(原 清澄)

理事官
相田尚武

受審人
A 職名:第五十八明神丸船長 海技免状:四級海技士(航海)

損害
明神丸・・・前部船底に擦過傷
海洋35号・・・損傷ない

原因
明神丸・・・船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年12月7日17時18分
 銚子港

2 船舶の要目
船種船名 引船第五十八明神丸 台船海洋35号
総トン数 99トン  
全長 29.02メートル 30メートル
  10メートル
深さ   2メートル
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 661キロワット  

3 事実の経過
 第五十八明神丸(以下「明神丸」という。)は、船体中央部より前方に船橋を有する鋼製引船で、A受審人ほか2人が乗り組み、船体構造物を積載して船首尾とも0.7メートルの等喫水となった海洋35号を船尾から引き、船首1.7メートル船尾3.5メートルの喫水をもって、平成12年12月7日17時10分銚子港第2漁船だまり河堤灯台(以下「河堤灯台」という。)から277.5度(真方位、以下同じ。)200メートルの地点を発し、舵を左右交互に転舵しながら曳航(えいこう)索の張り具合を調整したのち、千葉県富津漁港に向かった。
 ところで、A受審人は、銚子港への入港が初めてであったことから、入港前に手持ちのプレジャーボート・小型船用港湾案内で同港の概略を把握し、入港後同港の海図を求め、一応港内の事情の確認を行っていた。また、出港時の針路についても、水深の深い利根川のほぼ中央部を航行することとし、前もって海図に針路線を引き、安全航行の目安となるよう、予定の針路線上を航行した際の導流堤からの離岸距離などを確認していたものの、荷主から直ちに富津漁港に向けて航行するように要請され、初めてで不慣れな港を、夜間、出港することに不安を感じて躊躇(ちゅうちょ)していたところ、荷主から銚子港の事情に詳しい地元の誘導船(以下「誘導船」という。)を手配する旨を伝えられ、気が進まないまま出港することとした。
 こうして、A受審人は、誘導船の響導(きょうどう)に従って河口に向かい、17時15分河堤灯台から043度170メートルの地点で、針路を誘導船の航行模様を勘案して076度に定め、機関を極微速力前進にかけ、折からの下げ潮流に乗じて4.3ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 17時16分半A受審人は、河堤灯台から059度330メートルの地点に達したとき、0.25マイルレンジとしたレーダーを一瞥(いちべつ)したところ、予定の針路線より船位が大幅に右偏していることを認め、不安を感じたが、誘導船に追随して行けば大丈夫と思い、レーダーを使用するなどして速やかに船位を確認することなく続航した。
 A受審人は、予定の針路線より船位が大幅に右偏したまま進行し、前路に水深1.9メートルの浅所が存在することに気付かないで続航中、17時18分明神丸は、河堤灯台から066度530メートルの地点において、原針路、原速力のまま、同浅所に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期にあたり、日没時刻は16時23分で、乗揚地点付近には約1ノットの下げ潮流があった。
 乗揚の結果、明神丸は、前部船底に擦過傷を生じ、海洋35号は、損傷がなかった。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、初めての不慣れな銚子港を出港中、予定の針路線より船位が大幅に右偏していることを認めた際、船位の確認が不十分で、予定の針路線より船位が大幅に右偏したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、初めての不慣れな銚子港を出港中、予定の針路線より船位が大幅に右偏していることを認めた場合、レーダーを使用するなどして速やかに船位の確認を行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、銚子港の事情に詳しい誘導船に追随して行けば大丈夫と思い、速やかに船位の確認を行わなかった職務上の過失により、予定の針路線より船位が大幅に右偏したまま進行し、浅所への乗揚を招き、前部船底に擦過傷を生じさせるに至った。





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