(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年1月17日23時50分
沖縄県尖閣諸島魚釣島南岸
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第18隆祥丸 |
総トン数 |
4.3トン |
登録長 |
9.95メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
漁船法馬力数 |
90 |
3 事実の経過
第18隆祥丸は、かつお引き縄漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首0.8メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、平成14年1月16日18時30分沖縄県佐良浜漁港を発し、同県尖閣諸島に向かった。
翌17日07時30分A受審人は、南小島南方に至り、魚釣島の南方沖にかけて移動しながら操業を行い、日没後操業を止めて夜釣りを行った後、20時40分魚釣島362メートル頂から199度(真方位、以下同じ。)2,000メートルの地点において、機関を停止回転として漂泊を開始し、まもなく全員休息した。
第18隆祥丸は、いつしか海潮流により、魚釣島南岸に向けて圧流され始めた。
23時46分A受審人は、魚釣島362メートル頂から197度800メートルの地点で、たまたま目覚めてGPSを見た甲板員から魚釣島に近い旨の報告を受け、GPSを見て魚釣島南岸に接近していることを知り、沖出しすることとし、操舵室を出て周囲を見たところ、左舷船尾方に白波を視認し、この白波は魚釣島南西方沖の浅礁で発生していたが、魚釣島南岸に打ち寄せる砕波と思い、作動中のレーダーを活用して船位の確認を十分に行わなかったので、自船が魚釣島南岸に向いていることに気付かなかった。
23時47分A受審人は、機関を微速力前進にかけ、2.0ノットの対地速力で進行したところ、針路が045度となって魚釣島南岸に向首する状況であったが、このことに気付かないまま続航中、第18隆祥丸は、23時50分魚釣島362メートル頂から170度500メートルの地点において、同島南岸に乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力4の北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、船体は大破し、のち廃船処理された。
(原因)
本件乗揚は、夜間、魚釣島南方沖において漂泊中、海潮流により同島南岸に圧流されていることを知って沖出しする際、船位の確認が不十分で、同島南岸に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、魚釣島南方沖において漂泊中、海潮流により同島南岸に圧流されていることを知って沖出しする場合、作動中のレーダーを活用して船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、左舷船尾方に白波を視認し、この白波は魚釣島南西方沖の浅礁で発生していたが、魚釣島南岸に打ち寄せる砕波と思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、同島南岸に向首していることに気付かないまま進行して乗揚を招き、船体を大破させ、のち廃船に至らしめた。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。