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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年門審第108号
件名

プレジャーボートシーティ乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年11月18日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(上野延之)

理事官
中井 勤
副理事官
小俣幸伸

受審人
A 職名:シーティ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
バラストキールの取付け部に亀裂

原因
風圧流に対する配慮不十分

裁決主文

 本件乗揚は、風圧流に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年8月19日13時05分
 福岡市西区小田東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートシーティ
全長 7.01メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 5キロワット

3 事実の経過
 シーティは、船外機を装備し、バラストキールを有するクルーザー型のFRP製プレジャーヨットで、A受審人が1人で乗り組み、友人2人を乗せ、魚釣りの目的で、バラストキールのある船体中央1.55メートルの喫水をもって、平成14年8月19日08時00分福岡市西区小戸の福岡市立ヨットハーバーを発し、09時30分同区唐泊漁港沖合に至って魚釣りを始め、12時50分釣果が思わしくなかったことから同区小田の松風橋付近の海岸から50メートル沖合の釣場に向かった。
 ところで、松風橋付近の海岸は、福岡市西区宮浦の津上埼から同区木原の海釣公園までCの字形に湾曲した海岸線のほぼ中央に位置し、その海岸線に遠浅な砂浜が海岸に沿って東方の海側に約20メートル拡延していた。また、しばしばA受審人は、松風橋付近の海岸から50メートル沖合に錨泊して釣りをしていたので同海岸付近が遠浅な砂浜であることを良く知っていた。
 12時59分わずか前A受審人は、唐泊港第1防波堤灯台(以下「唐泊灯台」という。)から216度(真方位、以下同じ。)925メートルの地点で、針路を251度に定め、展帆せずに機走により機関を微速力前進に掛け、2.0ノットの対地速力で、自ら右舷船尾座席に座り、左手に船外機のアクセル及び右手に舵柄を握って操舵操船をしながら進行した。
 13時00分A受審人は、唐泊灯台から218度975メートルの地点に達したとき、白波の立つ北東の向岸風が吹いており、右舷船尾から風を受けたまま、投錨のために機関を中立にすると風下の海岸の遠浅な砂浜に圧流されるおそれがあったが、この程度の風なら大きく圧流されることはないものと思い、機関を活用し、船首を風に立てて投錨するなど風圧流に対する配慮を十分に行うことなく、遠浅な砂浜に圧流されるおそれに気付かないで、同乗者2人を船首で投錨用意させ、機関を中立にしたところ、直ぐに風下に圧流され始めたので、慌てて投錨させることも忘れ、機関を後進に掛けて沖出ししようとしたが効なく、13時05分唐泊灯台から220度1,050メートルの地点において、シーティは、圧流されながら船首が329度に向いたとき、バラストキールが海岸に沿った遠浅な砂浜へ乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力4の北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、シーティは、バラストキールの取付け部に亀裂を生じ、船体は救助船により引き下ろされて福岡市立ヨットハーバーに引き付けられ、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、福岡市西区小田東方沖合において、白波の立つ北東の向岸風が吹く状況下、魚釣りをしようとして遠浅な砂浜の沖合で投錨する際、風圧流に対する配慮が不十分で、投錨作業中に遠浅な砂浜に圧流されたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、福岡市西区小田東方沖合において、白波の立つ北東の向岸風が吹く状況下、魚釣りをしようとして遠浅な砂浜の沖合で投錨する場合、遠浅な砂浜に圧流されないよう、機関を活用し、船首を風に立てて投錨するなど風圧流に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、この程度の風なら大きく圧流されることはないものと思い、風圧流に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、機関を中立にして直ぐに風下に圧流され、同砂浜への乗揚を招き、バラストキール取付け部に亀裂を生じさせるに至った。





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