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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年広審第95号
件名

プレジャーボートシートピアII乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年11月29日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(高橋昭雄)

理事官
黒田敏幸

受審人
A 職名:シートピアII船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
推進器等に損傷、機関室に浸水

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年8月8日16時27分
 備讃瀬戸東部豊島北東端

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートシートピアII
全長 7.77メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 110キロワット

3 事実の経過
 シートピアIIは、船内外機を備えたFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、同僚1人を同乗させて釣りの目的で、船首0.20メートル船尾1.35メートルの喫水をもって、平成14年8月8日09時30分岡山県宇野港を発し、香川県豊島と小豆島の間を経て同島坂手港沖に至って釣りを行い、その後同島三都港沖さらに小豊島西岸沖で釣りを続けたのち、16時ころ帰途に就いた。
 ところで、A受審人は、代表取締役として仕事上での接待や従業員の福利厚生のために本船を所有して、平素から自らも同船を職務上及び福利厚生のほか休日にレジャーとして同僚を連れて釣りに利用し、しばしば小豆島周辺水域に出かけていたので、その間の水路状況についても地元漁師からの情報など見聞きしたりして慣れており、通航路となる豊島北東端付近沖に浅礁域なども存在していることを知っており、しかも時には同水域内で釣りを行い、その際同漁師に同水域が危険なところで近づかないように注意を受けたこともあった。しかし、それまで何度も豊島北東端から目視で100メートルほど離すようにして支障なく通航していたことから、同端付近の水路状況に精通しているという過信の余り、あえて所持していた海図で同浅礁域の範囲や位置そしてこれをつけ回すにあたって豊島北東端からの航過距離などの水路調査を十分に行わなかったので、同端から浅礁域が幅約130メートルで北東方に約200メートル延出していることまでは知らなかった。
 こうして、A受審人は、最後の釣り場であった小豊島西岸沖で収錨して帰途に就き、16時20分同島133メートル頂から279度(真方位、以下同じ。)1,000メートルの地点で、豊島北東端から延出した前示浅礁域をつけ回すために針路を豊島北東端から目測で約100メートル離したつもりで352度に定めたところ、同浅礁域北東端付近に向首する状況であった。しかし、これに気付かず、機関を微速力前進にかけて8.0ノットの速力で進行し、魚群探知器を作動させながら続航中、同時27分少し前水深が浅くなる状況を認めて間もなく、16時27分唐櫃港2号防波堤西灯台から078度850メートルの地点において、シートピアIIは、豊島北東端から延出した浅礁に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力5の東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、シートピアIIは、推進器等に損傷を生じ機関室に浸水した。

(原因)
 本件乗揚は、香川県小豆島南岸沖での釣りを終えたのち豊島と小豊島との間を経て帰航する際、水路調査不十分で、豊島北東端から延出した浅礁域に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、小豆島南岸沖での釣りの帰路の際、豊島と小豊島との間を経て豊島北東端をつけ回す場合、度々の通航から同端沖には浅礁域が存在していることを知っていたのであったから、これに接近し過ぎないよう、事前に所持していた海図でその範囲や位置などの水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、それまでの豊島北東端つけ回しの経験から水路状況に精通しているという過信の余り、豊島北東端沖の浅礁域に関する水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、同端に接近し過ぎて同浅礁域に向かって進行し、同域北東端付近への乗揚を招き、推進器等に損傷及び機関室への浸水を生じさせるに至った。





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