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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年神審第58号
件名

漁船第二冨美丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年11月19日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(大本直宏、上原 直、前久保勝己)

理事官
小寺俊秋

受審人
A 職名:第二冨美丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船首部に破口を伴う損傷

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年12月13日10時40分
 兵庫県矢城ケ鼻西岸沖

2 船舶の要目
船種船名 漁船第二冨美丸
総トン数 19トン
全長 26.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 603キロワット

3 事実の経過
 第二冨美丸(以下「冨美丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、鳥取県境港での水揚げを終え、電気系統修理の目的で、船首0.5メートル船尾2.8メートルの喫水をもって、平成13年12月13日07時30分同港を発し、兵庫県浜坂港に向かった。
 ところで、操業は、発航から水揚げまで2ないし3日間の規模で、漁を行う当日の14時ないし15時ごろから準備作業に入り、当日夕刻から翌日日出ごろまで夜間操業を行い、その後昼過ぎまで休息をとるのが通常形態で、このところ出漁が続いていた。
 また、A受審人は、浜坂港への発航前日、通常形態の操業を終えて夕刻に水揚げを行った後、船内で休息と睡眠をとって発航したもので、特に睡眠不足の状態ではなかった。
 A受審人は、発航後1人で航海当直に当たり、09時49分網代埼灯台から273度(真方位、以下同じ。)3.7海里の地点に達したとき、矢城ケ鼻へ近づいてから針路調整を行う予定で、ひとまず同鼻の北端部に向首し、針路を077度に定め、機関を対地速力13.0ノットの全速力前進にかけ、自動操舵により進行した。
 間もなく、A受審人は、出漁が続いていたための蓄積疲労によるものか、眠気を感じたが、あと1時間ぐらいなので大丈夫と思い、休息中の乗組員を操舵室に呼び2人当直体制にするなど、居眠り運航の防止措置を十分にとることなく、立直姿勢で足に疲れを感じ、操舵室後部のじゅうたん敷きの床に座っているうち、いつしか居眠りに陥った。
 こうして、冨美丸は、矢城ケ鼻の北端部に向首進行中、10時40分浜坂港矢城ケ鼻灯台から254度200メートルの浅所に、原針路原速力のまま、乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力2の北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、船首部に破口を伴う損傷を生じた。

(原因)
 本件乗揚は、兵庫県浜坂港西側の矢城ケ鼻に向け航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同鼻西方沖の浅所に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、兵庫県浜坂港西側の矢城ケ鼻に向け航行中、眠気を感じた場合、休息中の乗組員を操舵室に呼び2人当直体制にするなど、居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、あと1時間ぐらいなので大丈夫と思い、居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により、立直姿勢で足に疲れを感じ、操舵室後部のじゅうたん敷きの床に座っているうち、いつしか居眠りに陥り、同鼻西方沖の浅所に向首進行して乗揚を招き、船首部に破口を伴う損傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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