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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年横審第84号
件名

油送船第五十七博晴丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年11月28日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(森田秀彦)

副理事官
河野 守

受審人
A 職名:第五十七博晴丸船長 海技免状:四級海技士(航海)(旧就業範囲)

損害
船首部船底に亀裂を伴う破口、船首部バラストタンク内に浸水

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年12月1日02時30分
 静岡県清水港

2 船舶の要目
船種船名 油送船第五十七博晴丸
総トン数 698.86トン
登録長 56.39メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,323キロワット

3 事実の経過
 第五十七博晴丸(以下「博晴丸」という。)は、船尾船橋型の鋼製危険物タンク船で、A受審人ほか6人が乗り組み、ブタン120トン、プロパン250トンを積載し、船首2.30メートル船尾4.20メートルの喫水をもって、平成12年11月30日16時05分千葉県千葉港を発し、静岡県清水港に向かった。
 A受審人は、船橋当直体制を単独の4時間3直制とし、00時から04時まで及び12時から16時までを二等航海士に、04時から08時まで及び16時から20時までを一等航海士に受け持たせ、自らが08時から12時まで及び20時から24時までの船橋当直に当たるほか、出入港時における操舵操船に従事していた。
 A受審人は、駿河湾を北上し、翌12月1日02時00分清水灯台から147度(真方位、以下同じ。)3.7海里の地点において、入港操船のため昇橋して前直の二等航海士と交替し、同人を投錨準備のため降橋させて自ら船橋当直に就き、一等機関士を船橋内の機関操作に当たらせ、針路を335度に定め、機関を全速力前進にかけて、11.4ノットの対地速力(以下「速力」という。)で自動操舵により進行した。
 02時20分A受審人は、清水灯台から045度720メートルの地点に達したとき、針路を328度に転じ、機関を半速力前進として速力を8.0ノットに減じ、手動操舵に切り替えて続航した。
 ところで、清水港の入口は、三保埼の北端部陸岸付近から北北東方に延びる長さ約300メートルの三保防波堤と、同防波堤北端の清水港三保防波堤北灯台(以下「三保防波堤北灯台」という。)から北西方約660メートルの清水港外防波堤南灯台(以下「外防波堤南灯台」という。)を南端として北北東方に延びる長さ約1,300メートルの外港防波堤とで形成されており、A受審人は、これまでに昼夜間を問わず、清水港に出入港の経験が豊富にあり、これらのことについては十分に承知していた。
 02時25分A受審人は、三保防波堤北灯台から069度380メートルの地点に至り、機関を微速力前進として6.0ノットの速力で進行し、同時26分同灯台から041度390メートルの地点に達したとき、袖師第一ふ頭南側の第3区の予定錨泊地点に向けて小舵角の左舵をとって徐々に左転を開始した。
 A受審人は、左転を始めたころ、自船の予定錨泊地点付近にすでに数隻の錨泊船が存在しているのをレーダー画面上に認めたことから、折からの降雨と外港防波堤背後のコンテナターミナルの強い照明に紛れて、外防波堤南灯台の灯火の視認が困難な状況の下、他の錨泊地点を探すことに気をとられ、レーダーを活用するなどして船位の確認を十分に行っていなかったので、ゆっくりと左転しながら外港防波堤に向首する態勢となっていたが、このことに気付かずに進行した。
 02時28分A受審人は、外港防波堤と約380メートルに接近したとき、一等機関士から船首方に黒いものが見える旨の報告を受けたが、これを視認できなかったので、外防波堤南灯台を航過したものと判断し、舵を中央に戻して続航中、02時30分博晴丸は270度に向首したとき、外防波堤南灯台から353度110メートルの地点の外港防波堤東側に設置された消波ブロックに原速力のまま、乗り揚げた。
 当時、天候は雨で風はほとんどなく、視程は約2海里で、潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、博晴丸の船首部船底に亀裂を伴う破口を生じ、船首部バラストタンク内に浸水を生じたが、自力離礁し、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、静岡県清水港において、左転して港外から港内の錨泊地点に向かう際、船位の確認が不十分で、外港防波堤東側に設置された消波ブロックに向け進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、静岡県清水港において、左転して港外から港内の錨泊地点に向かう場合、外港防波堤に接近することのないよう、レーダーを活用するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、予定錨泊地点付近にすでに錨泊船が存在していたことから、他の錨泊地点を探すことに気をとられ、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、外港防波堤東側の消波ブロックへの乗揚を招き、博晴丸の船首部船底に亀裂を伴う破口を生じさせ、バラストタンク内に浸水を生じさせるに至った。





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