(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年3月25日09時56分
鳴門海峡
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船シン ヘイン |
総トン数 |
2,548トン |
全長 |
84.31メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
1,691キロワット |
3 事実の経過
シン ヘイン(以下「シ号」という。)は、船尾船橋型貨物船で、船長K(大韓民国国籍)ほか12人(大韓民国国籍6人、ミャンマー連邦国籍6人)が乗り組み、スチールワイヤー3,818トンを載せ、船首5.40メートル船尾6.85メートルの喫水をもって、平成14年3月22日19時35分宮城県仙台塩釜港を発し、鳴門海峡経由で大韓民国ポハン港に向かった。
K船長は、本州南岸沿いを西行して紀伊水道に至り、越えて25日07時30分昇橋し、当直航海士を補助に、同甲板手を手動操舵にそれぞれ就け、08時10分大磯埼灯台から099度(真方位、以下同じ。)2.8海里の地点で、針路を329度に定め、機関を全速力前進にかけ、折からの南流に抗し、9.9ノットの対地速力で、鳴門海峡に向けて進行した。
定針したときK船長は、予定より1時間ばかり遅れて定針地点に到達したため、自船が鳴門海峡最狭部に差し掛かる08時40分ごろは、南流最強時の1時間半ばかり前にあたることを知ったが、同海峡の通峡に慣れていたことから、東方の広い水域で錨泊して潮待ちするなど、同海峡最狭部通峡を中止することなく続航した。
こうして、K船長は、鳴門海峡通峡時機の選定が不適切で、折からの向かい風の下、次第に増勢する南流に抗しながら進行するうち、飛島に並航したころ逆潮が急激に強まり、08時40分大鳴門橋下に達したころ、ほとんど前進しなくなった。
K船長は、機関回転数を上げて増速に努めたものの、前進の気配が認められなかったので、ようやく通峡をあきらめることとし、09時52分鳴門飛島灯台から357度900メートルの地点で、左舵一杯としたところ、急に船首が左方に振れ回り、操船の自由を失い、200度に向首したまま孫埼付近の浅所に向けて潮流に圧流され、09時56分鳴門飛鳥灯台から337度520メートルの地点に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、潮候は下げ潮の末期にあたり、鳴門海峡の最強時は10時07分で、付近には約7ノットの南流があった。
乗揚の結果、船底外板前部に亀裂を生じたが、自然離礁し、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、鳴門海峡通峡時機の選定が不適切で、強い逆潮時に同海峡最狭部への進入を中止することなく進行し、操船の自由を失い、孫埼付近の浅所に向けて潮流に圧流されたことによって発生したものである。
よって主文のとおり裁決する。