日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年神審第47号
件名

引船第二十八照丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年10月16日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(小金沢重充、阿部能正、上原 直)

理事官
西山烝一

受審人
A 職名:第二十八照丸船長 海技免状:四級海技士(航海)

損害
左舷側プロペラに曲損及び中央部船底外板に凹損

原因
水路調査不十分

主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年1月15日09時40分
 徳島県北泊ノ瀬戸

2 船舶の要目
船種船名 引船第二十八照丸
総トン数 190.66トン
全長 29.65メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,912キロワット

3 事実の経過
 第二十八照丸(以下「照丸」という。)は、2基2軸を有する鋼製引船で、A受審人ほか2人が乗り組み、同乗者3人を乗せ、徳島県瀬戸漁港工事現場下見の目的で、船首2.58メートル船尾3.51メートルの喫水をもって、平成14年1月15日08時30分兵庫県福良港を発し、徳島県北泊ノ瀬戸南部に向かった。
 ところで、北泊ノ瀬戸は、島田島と四国本土との間にあり、ほぼ南北に切り開かれて弓状に湾曲した長さ約3,000メートル可航幅約100メートルの水路で、瀬戸港堂ノ浦西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から022度(真方位、以下同じ。)850メートルのところに島田根と称する暗岩が存在していた。
 A受審人は、北泊ノ瀬戸の通航が初めてであったが、同瀬戸の中央部付近を航行すれば大丈夫と思い、発航に先立ち、備え付けの海図第112号を精査して暗岩の所在など、水路調査を十分に行うことなく、離岸したものであった。
 こうして、A受審人は、離岸操船に引き続いて操舵操船に当たり、鳴門海峡を北上したのち、09時15分北泊ノ瀬戸北口から同瀬戸に進入して南下し、同時37分半西防波堤灯台から012度920メートルの地点に達したとき、針路を133度に定め、機関を極微速力前進にかけ、2.4ノットの対地速力とし、島田根に向首していることに気付かず、手動操舵により進行した。
 09時40分少し前A受審人は、左舷船首至近の海面に黒い藻を認めたので暗岩だと思い右舵をとったが、09時40分西防波堤灯台から022度850メートルの地点において、照丸は、船首を160度に向けて、原速力のまま、左舷船底後部が島田根に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、左舷側プロペラに曲損及び中央部船底外板に凹損を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、徳島県北泊ノ瀬戸を通航する際、水路調査が不十分で、同瀬戸の島田根に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、徳島県北泊ノ瀬戸を初めて通航する場合、同瀬戸の島田根に乗り揚げないよう、発航に先立ち、海図第112号を精査して暗岩の所在など、水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同瀬戸の中央部付近を航行すれば大丈夫と思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、島田根に向首進行して乗揚を招き、左舷側プロペラに曲損及び中央部船底外板に凹損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION