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 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年仙審第36号
件名

漁船明神丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成14年10月4日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(上中拓治)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:明神丸船長 海技免状:六級海技士(航海)(履歴限定)
指定海難関係人
B 職名:明神丸機関長

損害
船底外板の広範囲に凹損等

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年12月11日20時40分
 福島県いわき市江名港

2 船舶の要目
船種船名 漁船明神丸
総トン数 39トン
全長 27.55メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 566キロワット

3 事実の経過
 明神丸は、沖合底引き網漁業に従事する軽合金製漁船で、A受審人及びB指定海難関係人ほか3人が乗り組み、操業の目的で、船首1.2メートル船尾2.7メートルの喫水をもって、平成13年12月9日21時00分福島県松川浦漁港を発し、茨城県鹿島港東方沖合で操業してめひかりなど約3トンを漁獲したのち、翌々11日15時30分福島県江名港に向けて帰途に就いた。
 A受審人は、単独で船橋当直に当たり、15時40分鹿嶋灯台から079度20.2海里の地点で、針路を江名港に向首する355度(真方位、以下同じ。)に定め、機関を11.0ノットの全速力前進にかけ、自動操舵により進行した。
 ところで、A受審人は、前回及び今回の操業中、トロールウインチの網捌き用チェーン及びギヤを破損し、乗組員に交替で手動ハンドルを操作させて網捌き(さばき)を行いながら操業を続けたことから、中心となって同作業に当たっていたB指定海難関係人が、帰航開始時にはかなり疲労しており、かつ風邪気味であることに気付いたが、同人に船橋当直を行わせるに当たり、眠気を感じたときは自分に報せるよう指示してあるのでその様なときは報告があるものと思い、当直補助者を付けるなどの居眠り運航の防止措置を講じないまま、16時40分次直の甲板長と当直を交代した。
 B指定海難関係人は、18時40分大津岬灯台から145度16.6海里の地点で昇橋し、甲板長から引き継いで単独で船橋当直に当たり、同じ針路及び速力で続航し、椅子に腰掛けて見張りに当たっていたところ、疲労と服用した風邪薬の作用で次第に眠気を感じるようになったが、船長に報せることなく当直を続けているうち、19時10分ごろ居眠りに陥った。
 明神丸は、当直者が居眠りに陥ったまま、江名港西防波堤の南側に拡がる浅所に向首する針路で進行し、20時40分江名港西防波堤灯台から196度550メートルの地点において、原針路、原速力のまま同浅所に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力1の北々東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、明神丸は引下ろし及び救助に約16日を要したほか、船底外板の広範囲に凹損を生じ、推進器翼及び舵軸を損傷した。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、福島県江名港に帰航する際、居眠り運航の防止措置が不十分で、単独当直者が居眠りに陥り、浅所に向首する針路で進行したことによって発生したものである。

(受審人等の所為)
 A受審人は、夜間、福島県江名港に向けて帰航中、乗組員に交替で船橋当直を行わせる場合、B指定海難関係人がかなり疲労しているうえに風邪気味であることに気付いていたのであるから、同人の当直時間帯に当直補助者を付けるなどの居眠り運航の防止措置を講じるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、B指定海難関係人が当直中に眠気を感じたとき自分に報告するものと思い、同指定海難関係人の当直時間帯に当直補助者を付けるなどの居眠り運航の防止措置を講じなかった職務上の過失により、当直者が居眠りに陥ったまま進行して明神丸を浅所に乗り揚げ、救助に約16日を要したほか、船底外板の広範囲に凹損を生じ、推進器翼及び舵軸を損傷するに至った。
 B指定海難関係人は、夜間、単独で船橋当直に従事して福島県江名港に向けて帰航中、疲労と服用した風邪薬の作用で次第に眠気を感じるようになったとき、その旨を船長に報告しなかったことは、本件発生の原因となる。





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