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平成14年那審第38号
件名

漁船第三秀吉丸漁船秀福丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年12月18日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支、坂爪 靖、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:第三秀吉丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:第三秀吉丸甲板員 海技免状:四級小型船舶操縦士
C 職名:秀福丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
秀吉丸・・・左舷船首部に亀裂
秀福丸・・・左舷船首外板から船尾にかけて破口と亀裂等

原因
秀吉丸・・・居眠り運航防止措置不十分、船員の常務(避航動作)不遵守

主文

 本件衝突は、第三秀吉丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、錨泊中の秀福丸を避けなかったことによって発生したものである。
 受審人Bの四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年4月25日03時00分
 沖縄県宮古島北東方沖

2 船舶の要目
船種船名 漁船第三秀吉丸 漁船秀福丸
総トン数 7.3トン 4.9トン
登録長 11.68メートル 9.98メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 62キロワット 183キロワット

3 事実の経過
 第三秀吉丸(以下「秀吉丸」という。)は、潜水器漁業に従事するFRP製漁船で、A、B両受審人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首0.75メートル船尾1.60メートルの喫水をもって、平成14年4月24日15時00分沖縄県牧港漁港を発し、同県多良間島北方の漁場に向かった。
 17時48分A受審人は、ルカン礁灯台から270度(真方位、以下同じ。)7.5海里の地点で、針路を243度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 翌25日01時00分B受審人は、北緯25度34分東経126度13分の地点において、単独の船橋当直に就き、操舵室内の船横方向に渡した板に腰掛け、背中を操舵室内左舷側の壁にもたれた姿勢で見張りに当たり、同じ針路、速力で進行した。
 ところで、A受審人は、船橋当直者に対し、見張りはしっかり行うこと、眠気を覚えたときは次直者を起こして早めに当直を交代するよう指示していた。
 B受審人は、秀吉丸が同月20日に牧港漁港に入港後、停泊中の昼間だけ整備作業に従事し、発航までの間十分に休養をとっていた。24日は11時ごろから積込作業に従事し、同港発航後は休息したものの時化のため船酔い気味で、船橋当直のため昇橋したとき睡眠不足の状態であった。
 B受審人は、腰掛けたまま見張りを行っているうち、25日02時30分ごろから眠気を覚えるようになったが、まさか居眠りすることはないと思い、直ちに次直者を起こして当直を交代することなく、そのまま当直を続けているうち居眠りに陥った。
 02時57分B受審人は、正船首930メートルに秀福丸が掲げた黄色回転灯を視認でき、その後、同船と衝突のおそれのある態勢で接近したが、居眠りに陥っていて、そのことに気付かず、同船を避けないで進行した。
 02時59分B受審人は、秀福丸が錨泊灯を表示していなかったものの、漂泊中か錨泊中かが分かる状況で、正船首300メートルに接近したが、依然居眠りに陥っていて、これに気付かず、直ちに転舵するなど同船を避けることなく続航中、03時00分北緯25度24.4分東経125度52.9分の地点において、秀吉丸は原速力、原針路のまま、その左舷船首が秀福丸の左舷船首に前方から30度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力4の北東風が吹き、視界は良好であった。
 B受審人は、衝突の衝撃で目覚め、後方を見たところ秀福丸が掲げた黄色回転灯を認めたが、衝撃が軽かったと感じたことから、通常漁船が揚錨時に錨を浮かすために使用する、錨索に取り付けた浮玉にあたったと思い、そのまま航行を続けた。A受審人は、翌26日漁場に至って操業準備中、巡視艇の指摘により衝突したことを知った。
 また、秀福丸は、底はえ縄漁業に従事するFRP製漁船で、C受審人ほか甲板員1人が乗り組み、操業の目的で、船首0.75メートル船尾1.50メートルの喫水をもって、平成14年4月24日09時00分糸満漁港を発し、宮古島北東方の漁場に向かった。
 翌25日00時00分C受審人は、水深100メートルの前示衝突地点に至って、船首から錨を投入し、直径16ミリメートルの錨索を約200メートル延出したうえ、錨泊灯の代わりとして前部マスト頂部に黄色回転灯を点灯し、機関を止めて錨泊を開始した。
 C受審人は、04時20分から操業を始めることとし、01時ごろ甲板員とともに就寝した。
 秀福丸は、093度に向いて錨泊中、前示のとおり衝突した。
 C受審人は、衝突の衝撃で目覚め、衝突したことを知って事後の措置にあたった。
 衝突の結果、秀吉丸は左舷船首部に亀裂を生じ、秀福丸は左舷船首外板から船尾にかけて破口と亀裂を生じ、操舵室を破損し同室後部屋根が脱落した。

(原因)
 本件衝突は、夜間、宮古島北東方沖において、秀吉丸が、漁場へ向けて航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路に錨泊中の秀福丸を避けなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、夜間、宮古島北東方沖において、単独で船橋当直にあたり漁場へ向けて航行中、眠気を覚えた場合、時化のため船酔い気味で、睡眠不足の状態であったのであるから、居眠り運航とならないよう、直ちに次直者を起こして当直を交代すべき注意義務があった。しかるに、同人は、まさか居眠りすることはないと思い、次直者を起こして当直を交代しなかった職務上の過失により、居眠りに陥って正船首方で錨泊中の秀福丸に気付かず、転舵するなど同船を避けることなく進行して衝突を招き、秀吉丸の左舷船首部に亀裂を、秀福丸の左舷船首外板から船尾にかけて破口と亀裂を生じさせ、操舵室を破損させ同室後部屋根を脱落させるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。
 C受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図





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