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平成14年門審第119号
件名

プレジャーボートレオン号護岸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年12月2日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(長浜義昭)

副理事官
小俣幸伸

受審人
A 職名:レオン号船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
艇首部及び左舷側外板に亀裂等
船長及び同乗者が頭皮挫創、頸椎捻挫等

原因
操船(スロットルレバー操作)不適切

裁決主文

 本件護岸衝突は、スロットルレバー操作が不適切で、護岸に向け急発進したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年8月15日13時32分
 福岡県汐入川河口

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートレオン号
登録長 2.45メートル
全長 2.86メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 62キロワット

3 事実の経過
 レオン号は、ヤマハ発動機株式会社製のMJ-760GPと称する2人乗りのFRP製水上オートバイで、遊走の目的で、A受審人が1人で乗り組み、艇首尾0.2メートルの等喫水をもって、平成14年8月15日10時30分福岡県遠賀川支流の西川を発し、同県汐入川河口に向かった。
 ところで、汐入川河口は、北方の響灘に開口し、河口幅約60メートルで、約250メートル上流に築かれた河口堰(せき)に向かって緩く南西方に屈曲し、両岸には護岸が築かれていて、響灘で遊走する水上オートバイの仮泊地として利用されており、A受審人の数回ある水上オートバイの操縦経験のほとんどが同河口を利用してのものであった。
 レオン号は、前部にステアリングハンドル(以下「ハンドル」という。)が備えられ、続いて鞍(くら)型の操縦者用の前部座席及び同乗者用の後部座席が設けられていて、前部座席に跨った(またがった)操縦者がハンドルを進みたい方向に左または右にきると、艇尾にあるジェットポンプ推進装置のジェットノズルがこれに連動し、ジェット噴流の向きが変わることにより旋回し、また、ハンドルの右グリップ根元部にスロットルレバーが備えられ、同レバーを握る強さにより速力が増減し、放すと自動的にアイドリング位置に戻るものの、逆噴射装置は備えられておらず、左グリップ根元部にエンジン始動ボタン及びカールコードで操縦者と繋ぐ(つなぐ)緊急エンジン停止スイッチが、前部座席の左舷側足元にチョークノブがそれぞれ備えられていた。
 10時45分A受審人は、波津港第1防波堤灯台から112度(真方位、以下同じ。)3,220メートルにあたる汐入川の河口堰の中央部(以下「河口堰の中央部」という。)から049度85メートルの、同川左岸から約15メートル離れた地点に至って係留ブイを仮設し、その後、一度響灘に出て遊走したのち、同ブイに係留し、友人3人と合流して河畔で昼食をとるなどして過ごしていたところ、無資格の女性の友人1人に乞われ、午後に同人を乗せて響灘を遊走することとした。
 A受審人は、沖に出たら友人に操縦させることとし、前部座席に跨らせて両手をハンドルグリップより内側の部分を握らせた状態で同乗させ、両人が救命衣を着用し、自らは後部座席に跨り、両手を伸ばしてハンドルグリップを握り、左手首につけたカールコードを緊急エンジン停止スイッチに繋いで操縦にあたり、13時30分係留索を放ち、艇首を沖に向けて機関の始動を試みたところ、すぐに自停し、その後2回ほど始動に失敗し、そのたびに徐々に右転しながら河口の中央へと移動した。
 13時32分わずか前A受審人は、河口堰の中央部から049度110メートルの地点において、4回目の機関の始動を試みるにあたり、艇首が074度に向き、40メートル先の右岸に向首していることを認めたが、それまで自停を繰り返していたことから始動することに気を取られ、護岸に向けて急発進しないよう、スロットルレバーを軽く握って始動し、始動後直ちに同レバーを放して左舷側に体重移動し、ハンドルを左にきって再び同レバーを握り、増速して左旋回するなど、スロットルレバー操作を適切に行うことなく、同レバーを強く握った状態で始動ボタンを押したうえ、始動後直ちに同レバーを放さなかったので、護岸に向けて急発進し、慌ててハンドルを左にきろうとしたものの、急発進に驚いた同乗者がハンドルを強く握り締めていたこともあって、わずかに左転しただけで、13時32分河口堰の中央部から055度150メートルの地点において、069度に向いたレオン号の艇首が、16.2ノットの対地速力で、汐入川右岸の護岸に45度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力1の北西風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、衝突地点付近の水面は平穏であった。
 衝突の結果、レオン号は艇首部及び左舷側外板に亀裂等を生じ、A受審人は頭皮挫創等を、同乗者が頚椎捻挫(けいついねんざ)等をそれぞれ負った。

(原因)
 本件護岸衝突は、福岡県汐入川河口において、発進する際、スロットルレバー操作が不適切で、護岸に向けて急発進したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、福岡県汐入川河口において、発進する場合、至近の護岸に向首していることを認めていたのであるから、急発進しないよう、スロットルレバーを軽く握って機関を始動し、始動後直ちに同レバーを放すなど、スロットルレバー操作を適切に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、それまで始動しようとしても自停を繰り返していたことから、始動することに気を取られ、スロットルレバー操作を適切に行わなかった職務上の過失により、同レバーを強く握って始動し、始動後直ちに同レバーを放さず、護岸に向けて急発進し、護岸との衝突を招き、艇首部及び左舷側外板に亀裂等を生じさせ、同人が頭皮挫創等を負い、同乗者に頚椎捻挫等を負わせるに至った。





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