日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2002年度(平成14年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成14年横審第68号
件名

貨物船小松島丸作業船ネクスト2衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年12月4日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(谷川峯清)

理事官
松浦数雄

受審人
A 職名:小松島丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
B 職名:ネクスト2船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
小松島丸・・・船首外板に塗装剥離
ネクスト2・・・左舷船尾外板に破口を伴う凹損等
調査員3人が打撲傷等

原因
ネクスト2・・・見張り不十分、港則法の航法(避航動作)不遵守(主因)
小松島丸・・・警告信号不履行、港則法の航法(協力動作)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、京浜港東京区において、港則法に規定された雑種船であるネクスト2が、見張り不十分で、雑種船以外の船舶である小松島丸を避けなかったことによって発生したが、小松島丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Bを戒告する。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年1月31日13時40分
 京浜港東京区第2区
2 船舶の要目
船種船名 貨物船小松島丸 作業船ネクスト2
総トン数 499トン 14.32トン
全長 73.70メートル 13.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 735キロワット 143キロワット

3 事実の経過
 小松島丸は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか3人が乗り組み、鋼材508.8トンを積み、船首3.1メートル船尾3.9メートルの喫水をもって、平成14年1月31日12時05分千葉港葛南区を発し、京浜港東京区に向かった。
 A受審人は、発航から単独の船橋当直に就いて操船に当たり、13時04分東京灯標の西方に至って東京西航路に入航し、機関毎分回転数を適宜変更しながら、同航路に沿って北上した。
 13時36分A受審人は、晴海信号所から226度(真方位、以下同じ。)1,270メートルの地点で、針路を着岸予定の豊洲ふ頭東京鉄鋼ふ頭に向く062度に定め、機関を半速力前進にかけ、7.9ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、自動操舵によって進行した。
 定針時にA受審人は、右舷船首36.5度1,380メートルのところに、船首を北西方に向けて航行中のネクスト2を初めて認め、その後同船と針路が交差していたので、その動静を監視しながら続航した。
 13時39分A受審人は、晴海信号所から207度590メートルの地点に達したとき、ネクスト2が右舷船首36度350メートルのところに、明確な方位の変化がなく、衝突のおそれがある態勢で接近していることを認め、同船に避航の気配が認められなかったが、これまで同船のような小型の船舶は、いつも自船の進路を避けてくれていたので、そのうちネクスト2が避航動作をとるものと思い、警告信号を行うことなく、同じ針路、速力で進行するうち、同船が避航動作をとらないまま更に接近するのを認めて機関を中立としたものの、直ちに機関を後進にかけるなど衝突を避けるための協力動作をとることもなく、惰力で続航した。
 13時40分わずか前A受審人は、ネクスト2が間近に接近したとき、同船の煙突から黒煙が立ち上がって右舷側に傾斜するのを認め、同船が増速しながら右転して避航動作をとったように見えたので、依然、惰力のまま進行中、13時40分晴海信号所から187度410メートルの地点において、小松島丸は、船首が060度を向き、5.0ノットの残存速力になったとき、その船首が、ネクスト2の左舷後部に後方から60度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力4の北風が吹き、潮候は上げ潮の初期にあたり、視界は良好であった。
 また、ネクスト2は、東京都環境局が水質測定調査等のため周年借り上げたFRP製作業船で、B受審人ほか1人が乗り組み、ダイオキシン測定用海水の採水調査(以下「調査」という。)の目的で、船首尾とも1.0メートルの等喫水をもって、同日08時00分江東区新木場1丁目の通称新木場桟橋を発し、同時40分朝潮運河の中央区晴海3丁目にある通称東京都環境局晴海ふ頭に寄り、同局職員1人及び財団法人日本食品分析センター職員3人の調査員を乗せ、09時30分同桟橋を発進し、東京湾北部に設定された4箇所の調査地点に向かった。
 B受審人は、10時20分羽田沖灯浮標東南東方約800メートルの地点に到着して調査を開始し、その後東京湾アクアライン風の塔の北北東方約1.7海里、京葉シーバースの北西方約2.5海里及び浦安沖灯標の南西方約1.1海里の地点にそれぞれ設定された調査地点を順に回って調査を行い、12時50分全ての調査を終え、東京灯標から052度3.2海里の地点を発進し、東京東航路を経て京浜港東京区第2区に入り、有明ふ頭東側の水路を北上したのち、豊洲ふ頭及び晴海ふ頭の各西側の水域を経て朝潮運河に向かう予定で帰途に就いた。
 ところで、B受審人は、ネクスト2が作業の都合で港外に出ることがあるものの、同船が港則法第3条第1項に定める雑種船であるという認識を持ち、港内においては雑種船以外の船舶の進路を避けなければならないことを知っていた。
 B受審人は、予定どおり航行し、13時36分晴海信号所から157度1,170メートルの地点に達し、有明ふ頭東側の水路を航過したとき、針路を323度に定め、機関を半速力前進にかけ、6.9ノットの速力で、前方の竹芝桟橋付近の建物を針路目標とし、手動操舵によって進行した。
 定針時にB受審人は、左舷船首44.5度1,380メートルのところに、船首を北東方に向けて航行中の小松島丸を認めることができ、その後同船と針路が交差していることを認めることができる状況であったが、前方の針路目標とした建物や、右舷側の豊洲ふ頭方向からの出航船の有無を確認することに気をとられ、左舷方を含む周囲の見張りを十分に行うことなく、小松島丸に気づかずに続航した。
 13時39分B受審人は、晴海信号所から172度590メートルの地点に達したとき、小松島丸が左舷船首45度350メートルのところに、明確な方位の変化がなく、衝突のおそれがある態勢で接近していたが、依然、周囲の見張りが不十分で、このことに気づかず、同船の進路を避けないまま、同じ針路、速力で進行した。
 13時40分わずか前B受審人は、左舷側間近に小松島丸の右舷側外板を初めて認め、慌てて右舵一杯として機関を全速力前進にかけたが、間に合わず、ネクスト2は、船首が000度を向いたとき、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、小松島丸は、船首外板に塗装剥離を生じただけであったが、ネクスト2は、左舷船尾外板に破口を伴う凹損、舵及びプロペラシャフトに曲損をそれぞれ生じたが、のち修理された。また、ネクスト2に乗船していた調査員3人が、1週間ないし2週間の加療を要する打撲傷等を負った。

(原因)
 本件衝突は、京浜港東京区第2区において、両船が互いに針路が交差して衝突のおそれがある態勢で接近中、港則法に規定された雑種船である北上中のネクスト2が、見張り不十分で、雑種船以外の船舶である東行中の小松島丸の進路を避けなかったことによって発生したが、小松島丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、京浜港東京区第2区において、有明ふ頭東側の水路から朝潮運河に向けて北上する場合、ネクスト2が港則法に規定された雑種船であることを認識していたのであるから、同法に規定された雑種船以外の船舶である小松島丸を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同受審人は、前方の針路目標とした建物や、右舷側の豊洲ふ頭方向からの出航船の有無を確認することに気をとられ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、左舷前方から接近する小松島丸に気づかず、同船の進路を避けないまま進行して衝突を招き、小松島丸の船首外板に塗装剥離並びにネクスト2の左舷船尾外板に破口を伴う凹損、舵及びプロペラシャフトに曲損をそれぞれ生じさせ、ネクスト2に乗船していた調査員3人に、1週間ないし2週間の加療を要する打撲傷等を負わせるに至った。
 A受審人は、京浜港東京区第2区において、豊洲ふ頭東京鉄鋼ふ頭に向けて東行中、右舷前方から衝突のおそれがある態勢で接近する雑種船であるネクスト2を認め、同船に避航の気配が認められない場合、警告信号を行うべき注意義務があった。ところが、同受審人は、これまでネクスト2のような小型の船舶は、いつも自船の進路を避けてくれていたので、そのうちネクスト2が避航動作をとるものと思い、警告信号を行わなかった職務上の過失により、同船が避航動作をとらないまま更に接近するのを認めて機関を中立としたものの、直ちに機関を後進にかけるなど衝突を避けるための協力動作をとらずに惰力で進行してネクスト2との衝突を招き、前示の事態を生じさせるに至った。


参考図





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION