(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年6月5日06時35分
播磨灘西部 大角鼻東方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船眉山丸 |
貨物船ローズリバー |
総トン数 |
199トン |
1,573トン |
全長 |
57.00メートル |
76.87メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
出力 |
588キロワット |
1,176キロワット |
3 事実の経過
眉山丸は、船尾船橋型の貨物船で、船長Kほか2人が乗り組み、亜鉛精鉱500トンを積載し、船首2.20メートル船尾3.20メートルの喫水をもって、平成14年6月4日11時40分関門港下関区を発し、兵庫県東播磨港に向かった。
K船長は、船橋当直を一等航海士と6時間交替で行い、17時30分から23時30分まで自ら船橋当直に就いたあと休息し、翌5日早朝備讃瀬戸東部の高松港沖合を航行中、自室から船外を見たところ視界が悪いことを知って自ら操船にあたることとし、04時50分男木島北方で昇橋して一等航海士と船橋当直を交替し、その後霧のため視程100メートル以下となった備讃瀬戸東航路を東行した。そして、05時43分同航路から出たあと次第に視界が回復して視程が1.5海里ばかりとなり、海図記載の推薦航路線の南側をこれに沿って東行した。
06時20分半K船長は、大角鼻灯台から165度(真方位、以下同じ。)2.1海里の地点で、播磨灘航路第1号灯浮標を左舷側200メートルに航過したとき、針路を東播磨港の航路入口に直航する054度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.2ノットの対地速力(以下「速力」という。)で進行した。
06時31分K船長は、大角鼻灯台から118度2.2海里の地点に達したとき、右舷船首7度1.4海里にローズ リバー(以下「ロ号」という。)を視認することができるようになり、その後同船が前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近したが、その進路を避けることなく続航した。そして、06時34分半同船が400メートルに近づいたとき、左舵一杯をとるとともに機関を後進にかけたが及ばず、06時35分眉山丸は、大角鼻灯台から103度2.6海里の地点において、船首が005度を向首したとき、同船の右舷中央部にロ号の船首が前方から85度の角度で衝突した。
当時、天候は曇で風はほとんどなく、潮候はほぼ高潮時にあたり、付近には弱い東流があった。
また、ロ号は、船尾船橋型貨物船で、船長Cほか7人が乗り組み、鋼材1,492トンを積み、船首4.1メートル船尾4.7メートルの喫水をもって、同月3日16時30分京浜港川崎区を発し、大韓民国平澤港に向かった。
C船長は、船橋当直を4時間交替の単独当直制とし、毎8時から12時まで自らが当直に就き、そのほかの時間は毎0時から4時まで二等航海士、毎4時から8時まで一等航海士がそれぞれ当直に従事した。
越えて5日04時00分一等航海士Wは、明石海峡航路西方灯浮標の北東方1,000メートルのところで二等航海士から船橋当直を引き継ぎ、その後海図記載の推薦航路線の0.5海里北側をこれに沿って西行し、06時00分大角鼻灯台から079度8.4海里の地点に達したとき、船位を確認して針路を249度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.5ノットの速力で自動操舵により進行した。
そのころW一等航海士は、霧模様で視界が1.5ないし2海里に狭められていたことから、自船の位置を画面の中心から約2海里後方に表示させた3海里レンジのレーダーを見ながら周囲の見張りにあたっていたところ、06時29分少し過ぎ左舷船首8度2.0海里に眉山丸の映像を探知し、同時31分大角鼻灯台から096度3.2海里の地点に達したとき、同方位1.4海里に同船を初めて視認し、その後同船が前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近したが、一べつしただけで、同船が推薦航路線の南側を東行し、同航路線の北側を西行している自船と衝突のおそれはないものと思い、同船に対する動静監視を十分に行わなかった。
W一等航海士は、眉山丸が自船の進路を避けないまま間近に接近しても、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらないで続航し、06時35分少し前至近に迫った同船を見て危険を感じ、手動操舵に切り替えて右舵一杯とするとともに機関を停止したが及ばず、ロ号は、270度に向首したとき、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、眉山丸は、右舷側中央部外板に破口を生じて貨物倉に浸水し、約2時間後に沈没して全損となり、ロ号は、船首部外板に亀裂が生じるとともに右舷錨が曲損した。また、眉山丸乗組員は、全員ロ号に救助されたが、K船長(昭和38年7月6日生、四級海技士(航海)免状受有)及び機関長I(昭和15年1月15日生、三級海技士(機関)免状受有)の2人がいずれも溺水により死亡した。
(原因)
本件衝突は、播磨灘西部の大角鼻東方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、眉山丸が、前路を左方に横切るロ号の進路を避けなかったことによって発生したが、ロ号が、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
よって主文のとおり裁決する。