(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年10月14日05時40分
石川県七尾西湾
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船松宝丸 |
プレジャーボートみつ丸 |
総トン数 |
3.2トン |
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登録長 |
9.85メートル |
6.18メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
出力 |
47キロワット |
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漁船法馬力数 |
70 |
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3 事実の経過
松宝丸は、小型底びき網漁に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、同人の次男等4人を同乗させ、魚釣りの目的で、船首0.40メートル船尾1.10メートルの喫水をもって、平成13年10月14日05時00分石川県石崎漁港を発し、同港北方の釣り場に向かった。
これより先、A受審人は、眼科医の診断により、両裸眼の視力が0.02ないし0.03で、両眼の矯正視力も0.04まで低下しており、視野の中心部が欠け視力がほとんど無い状況下、魚釣りを企画したが、なんとかなると思い、発航を中止するなど、安全運航に対する配慮を十分に行わず、発航に踏み切った。
05時10分ごろA受審人は、能登島大橋北西方沖合に至って釣りを行った後、釣り場を移動することにし、航行中の動力船が掲げる灯火を表示しないまま、同時38分半能登島大橋橋梁灯(C4灯)から007度(真方位、以下同じ。)400メートルの地点を発進した。
発進と同時に、A受審人は、針路を311度に定めたとき、正船首方400メートルに、漂泊中のみつ丸の船影を認め得る状況であったが、視力の関係で同船を認めることができず、9.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
こうして、松宝丸は、みつ丸を避けずに続航中、05時40分わずか前A受審人が、船首部にいた同乗者からの叫び声を聞き、機関を中立としたが間に合わず、05時40分能登島大橋橋梁灯(C4灯)から339度720メートルの地点において、原針路原速力のまま、船首端部の曳網用ビームが、みつ丸の右舷中央部に、前方から35度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で、風はほとんどなく視界良好、日出時刻は05時58分で、潮候はほぼ低潮期であった。
また、みつ丸は、FRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、友人1人を同乗させ、魚釣りの目的で、船首0.37メートル船尾0.81メートルの喫水をもって、同日05時23分七尾南湾東部の比ノ木の船溜りを発し、能登島大橋北西方沖合の釣り場に向かった。
B受審人は、釣り場に近づいたとき、目的海域付近に10隻ばかりの釣り船が密集していて、その付近での釣りを断念し、少々北上して機関を中立とし、所定の灯火を表示しないまま、05時37分半衝突地点付近で漂泊して釣りを開始した。
B受審人は、操舵室後方の機関室ハッチカバーの上に、右舷側を向いて腰を掛け、釣りの仕掛けを作り始め、05時38分半096度に向首していたとき、右舷船首35度400メートルに、自船へ向首進行中の松宝丸の船影を認め得る状況であったが、自船は漂泊しているので大丈夫と思い、釣りの仕掛け作成に気を取られ、松宝丸を見落とさないよう、見張りを十分に行っていなかったので、同船の存在に気付かなかった。
こうして、B受審人は、松宝丸が衝突のおそれのある態勢のまま接近中であることに気付かず、機関を使用するなどして、衝突を避けるための措置をとらずに漂泊中、05時40分少し前、松宝丸同乗者の発した叫び声を聞き、ようやく至近に迫った松宝丸を初認したが、どうするいとまもなく、みつ丸は、同一の船首方向のまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、松宝丸は、損傷がなく、みつ丸は、右舷外板及び操舵室に亀裂を生じたが、のち修理され、また、みつ丸の同乗者が左膝挫創の軽傷を負った。
(原因)
本件衝突は、石川県七尾西湾において、松宝丸が、操船者の視力がほとんど無い状況下、発航を中止するなど、安全運航に対する配慮が不十分で、日出前の薄明時に航行中、漂泊中のみつ丸を避けなかったことによって発生したが、みつ丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
A受審人は、石川県七尾西湾において、魚釣りを企画する場合、自らの視力がほとんど無く見張りのできない状況であったから、発航を中止するなど、安全運航に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、なんとかなると思い、安全運航に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、発航に踏み切り、日出前の薄明時、船首方で漂泊中のみつ丸に気付かないまま、同船を避けずに進行して衝突を招き、みつ丸の右舷外板及び操舵室に亀裂を生じさせ、同船の同乗者に左膝挫創の軽傷を負わせるに至った。
B受審人は、日出前の薄明時、石川県七尾西湾において、魚釣りの目的で漂泊する場合、松宝丸を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、自船は漂泊しているので大丈夫と思い、釣りの仕掛け作成に気を取られ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、松宝丸が衝突のおそれのある態勢のまま接近中であることに気付かず、機関を使用するなどして、衝突を避けるための措置をとらずに漂泊を続けて衝突を招き、前示の損傷等を生じさせるに至った。