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平成14年神審第64号
件名

貨物船第十六山菱丸貨物船第七金栄丸衝突事件
二審請求者〔理事官清重隆彦〕

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成14年11月20日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(村松雅史、大本直宏、前久保勝己)

理事官
清重隆彦

受審人
A 職名:第十六山菱丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:第七金栄丸機関長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)

損害
山菱丸・・・右舷船尾外板等凹損
金栄丸・・・船首部外板に凹損

原因
金栄丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守

主文

 本件衝突は、第七金栄丸が、見張り不十分で、錨泊中の第十六山菱丸を避けなかったことによって発生したものである。
 受審人Bを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年3月23日04時35分
 大阪港西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第十六山菱丸 貨物船第七金栄丸
総トン数 566トン 199トン
全長 67.375メートル 58.21メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 1,176キロワット 588キロワット

3 事実の経過
 第十六山菱丸(以下「山菱丸」という。)は、船尾船橋型鋼製貨物船で、A受審人ほか5人が乗り組み、空倉のまま、船首2.0メートル船尾3.8メートルの喫水をもって、平成13年3月22日15時20分山口県岩国港を発し、大阪港堺泉北区に向かった。
 A受審人は、瀬戸内海を東行して大阪湾に至り、着岸時刻調整のため、翌23日04時25分大阪港大和川南防波堤北灯台から283度(真方位、以下同じ。)3.2海里の地点で、水深約18メートルの海底に右舷錨を投じて錨鎖を3節延出し、船首マスト及び船尾部に錨泊灯を表示したほか、船首マスト及び船橋前壁から作業灯で甲板上を照射し、船橋周りの照明灯を点灯した。
 04時28分A受審人は、投錨作業を終え、船首が150度に向いていたとき、右舷船尾62度1.2海里のところに第七金栄丸(以下「金栄丸」という。)の白、白、紅、緑4灯を初めて視認し、機関用意のまま、その後同船の動静を監視していたところ、金栄丸が衝突のおそれがある態勢で接近していることを知ったので、同時33分汽笛による警告信号を開始するとともに、金栄丸に向けて探照灯を照射した。
 A受審人は、金栄丸が自船を避けないまま接近することに危険を感じ、04時35分少し前機関を前進にかけ、船体が少し前方に移動したとき、04時35分前示錨泊地点において、山菱丸は、船首を150度に向けたまま、その右舷船尾部に、金栄丸の船首が後方から62度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風力2の北風が吹き、潮候は上げ潮の中央期にあたり、視界良好であった。
 また、金栄丸は、船尾船橋型鋼製貨物船で、B受審人ほか2人が乗り組み、巻取紙500トンを積載し、船首2.6メートル船尾3.8メートルの喫水をもって、同月22日19時20分愛媛県三島川之江港を発し、大阪港堺泉北区に向かった。
 B受審人は、翌23日01時30分ごろ明石海峡西方で単独の船橋当直に就き、04時11分神戸港第1南防波堤灯台から146度2.6海里の地点で、針路を088度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、11.0ノットの対地速力で、所定の灯火を表示して進行した。
 04時28分B受審人は、神戸港第1南防波堤灯台から114度5.1海里の地点に達したとき、正船首1.2海里のところに、山菱丸の錨泊灯及び作業灯などを視認できる状況であったが、左舷前方を南下中のバージなどに気をとられ、前路の見張りを十分に行わなかったので、山菱丸の存在に気付かなかった。
 こうして、B受審人は、山菱丸に衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、同船を避けないまま続航中、04時34分半汽笛を聞いて前方を見たとき、至近に迫った山菱丸の探照灯照射に気付き、機関を全速力後進にかけ、右舵一杯としたが効なく、金栄丸は、原針路のまま、6.0ノットの対地速力で、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、山菱丸は、右舷船尾部外板等に、金栄丸は、船首部外板にそれぞれ凹損を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、夜間、大阪港西方沖合において、金栄丸が、見張り不十分で、錨泊中の山菱丸を避けなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、夜間、大阪港西方沖合を航行する場合、錨泊中の山菱丸を見落とさないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、左舷前方を南下中のバージなどに気をとられ、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、山菱丸の存在に気付かず、同船を避けないまま進行して衝突を招き、山菱丸の右舷船尾部外板等に凹損を、金栄丸の船首部外板に凹損を、それぞれ生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図





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